表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第四章 厄災の神殿
61/77

第六〇話 石像と狙い

 タイガ達は遂に、神殿の中へと足を踏み入れる。入り口のすぐ近くは下に続く階段になっていて、入った瞬間、何かが吸い取られた感覚が、四人を襲う。


 ――これがジュピターの言っていた、情報を抜き取るって奴か……。三人は大丈夫か?


 タイガはチラッとミルミア、リンナ、レーラを見る。三人も、何かを抜かれる感覚があるようだ。

 そして後ろを見ると、入って来たばかりで見える筈の入り口から入ってくる光が見えなかった。


「そういう事ね……」

「入った者は出られない。まるで闇の中みたいですね……」


 ミルミアとリンナも冷静に分析する。


「取り敢えず、先に進もう。村長の安否が先だ」


 中は薄暗く見え辛い為、リンナの光魔法フラッシュで光を作ってもらい、階段を下りていく。

 階段を下りて暫くすると、大広間らしき所に出た。そこには沢山の石像が置かれており、その部屋の奥に、再び奥に繋がる出口を見つけた。

 タイガはふと、大広間の天井を見る。そこには何かの模様が大広間全体に描かれていた。


 ――あれ? この模様どっかで……


 タイガはその模様に見覚えがあった。だが思い出せず、再び大広間の探索をする。


「何かしら、この石像。気味が悪いわね」

「人の姿をしています。まるで、石化されたみたいに……」


 リンナの言葉に、タイガは歩く足を止める。そしてリンナ達の傍に行き、石像を見る。そこには確かに、人の姿をした石像が建てられていた。人の姿をした石像が三〇体。だが、その石像は無造作に置かれ、所々に石像が置かれる台座だけしか置いていない所があった。


「確かに、ただの石像には見えねぇよなぁ」


 レーラがそう言って、触ろうとした時だった。


「触るな!」


 タイガの言葉にレーラは驚き、触ろうとした手を止めた。


「ど、どうしたんだよタイガ。そんな大きな声出して」

「この石像……いや、これだけじゃない。ここにある全ての石像に黒いオーラが見える」


 タイガは全ての石像を見ながら言う。その時、近くにいたミルミアとリンナは見てしまった。


「ミルちゃん……あれって……」

「えぇ、ジュピターの言っていた……」


 タイガの右目だけ、黒目がダークオレンジ色に光っており、瞳孔のみ黒く、丸く分かりやすくなっていた。するとレーラもそれに気づいたらしく、ボソッと言った。


「魔眼……」


 三人は、今朝のジュピターとの話を思い出す。


『マスターには他の能力があるの。三人は分かる?』

「他の能力……ですか?」


 ジュピターの言葉に、全員が首を傾げる。そしてミルミアが何かを思いだしたかの様に反応した。


「もしかして、オーラが見えるって言ってた……」


 それは魔獣討伐での出来事。タイガは激戦を乗り超え、気を失った。目を覚まし、タイガは全ての出来事を話した時に、ふと言った言葉があったのを、ミルミアは思い出したのだ。


「確かに、タイガさんは言ってました。私達には白いオーラを、当時乗っ取られていたルーさんには黒いオーラが見えたって。それが関係しているんですか?」


 リンナの言葉に、ジュピターは頷く。


『それは『魔眼』による力。マスターの中に眠っている魂が少しずつ目を覚ましかけているの』

「じゃあ、その魔眼ってのは、タイガの中にいる奴の力って事か?」

『そう。その特徴が、これ』


 ジュピターは空間に魔眼の特徴を映した。それが現在、タイガの右目に宿っていっるのだ。

 三人は暫く、タイガの様子を窺っていた。すると、次第に魔眼が消えていき、いつものタイガの目に戻っていった。


「ん? どうしたんだ? 三人共」


 不自然に離れている三人に気付いたタイガは声を掛ける。それに焦りあたふたするも、何事も無かったかのように、ミルミアはタイガに話しかける。


「どうタイガ。この石像」


 その質問に、タイガは眉を顰めた。


「まず第一に、こんな無造作に置かれた石像に違和感がある。神殿なのだから、綺麗に並んでてもおかしくない筈だ。まぁ、こんな建物は神殿と言うより遺跡に近いが。そして石像にオーラが見えるなんておかしい。石像は人の手によって造られるものだからな。となると、ここにある石像は――」


 タイガが言いかけた瞬間、神殿が揺れ始め、石像が少しずつ動き始める。ミルミア達は焦って何も出来ない状況だったが、タイガが落ち着かせ、それと同時に戦闘準備に入る。

 そして石像は台座から降り、人間同様の動きが出来る様になった。


「過去にこの神殿に入ってしまい、出られなくなった人達が何かの力によって石化した。それも、何かに取り憑かれた状態でな」


 その言葉が合図になったのか、一斉にタイガ達に襲い掛かる。


「吹き飛べ! ルカ!」


 ミルミア達以外が吹き飛び、距離が出来た。


「俺としてはこの石化を解いて助けてあげたいが、恐らく遥か昔の人。既に死んでいるだろう。この石像は何かしらの力で動いている訳だが……」

「もしかしたら、この中に村長がいる可能性もあるという事ね」

「あぁ。だけどこの状況で、助けるなんて無理な話だな。だって――」


 先程飛ばされた石像達が一斉に襲ってきた。


「この石像達に自我は無い。となると……」

「壊すしか方法は無い、という事ね」


 その言葉を合図に、タイガとミルミアは剣を抜き、石像を斬る。だが、相手は石の為、簡単に斬れなかった。

 レーラは素早くリボルバーを出し、石像目掛けて撃った。すると、石像にヒビが入る。


「よっしゃ! あたいは何とか出来そうだ!」

「それでは私も……。サンダーニードル!」


 リンナもレーラに続き、サンダーニードルを複数の石像に向かって撃つ。攻撃を喰らった石像は刺さった場所を中心にヒビが入り、石像は壊れた。


「私の方も何とか戦えそうです!」

「分かった! そっちは任せたぞ!」


 タイガはそう言って、自分の戦いに戻る。中には剣を持っている石像もいて、激しい攻防が繰り広げられる。


「タイガ! これじゃきりがないわ!」


 ミルミアも同じだった。魔法が使えないミルミアにとって、石像の相手は不利。そう思ったタイガは、一度ここを撤退すると提案する。


「撤退って、どこに!」

「奥に繋がる出口が反対側にある。俺がこいつらの不意を突くから、その間にお前達は奥に向かって走れ!」


 石像は奥に行かせまいと、進路を邪魔する。そしてタイガは剣にガリルを流した。


「クリアガービル!」


 雷刀が石像を斬り、隙が出来た。その瞬間に、女子は走り出して奥に進む。


 ――ん?


 タイガは何かを不思議に思いつつ、残りの石像を撒いてミルミア達と合流する。

 先程の出口にゴートで壁を作り、暫くの間、石像を閉じ込めた。


「先に進もう。何があるか分からない。あそこで石像が動いたという事は、俺達侵入者を拒んで来たって事だ」

「と言う事は、今まで入って来た人はあの石像に何かしらやられたのね……。もしかしたら、あそこに村長がいたんじゃ――」

「それは無い」


 ミルミアの発言を、タイガが否定する。


「あそこに村長はいなかった。俺とレーラは村長の顔を見ているから、すぐにわかる筈なんだが、どっちも見ていないとなると、あの場に村長がいるとは思えないんだよ」


 そう言いながらタイガ達は足を進める。すると。Y字になっている場所に出た。


「分かれ道か。どっちに行けばいいか……」


 その時、後ろから何かを破壊した音が聞こえた。タイガのバリケードが石像によって壊されたのだ。


「まずいぞタイガ! どうするんだよ!」


 後ろから迫ってくる石像と、突然迫られた二択にタジタジになるレーラ。ミルミア、リンナの同じ状況だった。そんな中、タイガが一つ、答えを出した。


「ここは別れよう」

「え?」


 タイガは、二手に別れようと提案したのだ。左の道をタイガが、右の道をミルミア達が行くと言う話になった。だが、女性陣はそれを拒む。


「お前ら、本来の目的を忘れたか? 俺達は依頼の調査に来たんだ。ここは二手に別れた方が早い」

「ですが――!」

「それに」


 リンナは反論しようとするも、タイガは話を遮る。


「俺達にはマグナラ(コレ)があるだろ。いつでも連絡とれる。何かあったらすぐ連絡しろ」


 すると、後ろからタイガを襲う石像達が現れ、襲い掛かってきた。

 タイガはルカで彼らを遠くに吹き飛ばし、ミルミア達との距離を取らせた。


「ここは俺が時間を稼ぐ」


 背を向けたままタイガが言う。だが、ゆっくりとミルミア達の方を振り返って言った。


「心配すんな。ここで倒れるような、やわな男じゃねぇよ。だから早く行け!」


 その言葉に、三人は再び足を動かし始めた。タイガの気遣いを無駄にしないべく、走って。

 タイガはそれを見送り、再び石像達の方を見る。


「さぁて、本当の狙いは誰なのか、はっきりさせようじゃねぇか」


 タイガはこう考えていた。いきなり彼らが動いたのには必ず訳があると。


 ――見た所、今までこいつらが動いた形跡なんてどこにもなかった。あの石像にはヒビが入っていたが、それでも綺麗に建てられていた。だけど、俺達が入るとタイミングよくこいつ等は動き出した。そして窮め付けはさっきの大広間で、俺がミルミア達を先に行かせた時だった。誰一人、アイツらを()()()()()。そうなれば本当の狙いは……


 石像達はミルミア達に目も足も向けず、タイガに向かって攻撃を仕掛ける。


「やっぱり俺か!」


 タイガが蹴り飛ばそうとする。だが、相手は石。


「痛ってぇ!」


 その事を忘れていたのか、脚にもの凄く痛みを受けて蹲ってしまった。チャンスだと思った石像達が一斉にタイガに襲い掛かる。


「まんまと罠に引っ掛かりやがって……」


 するとタイガは雷刀で石像の脚を斬っていた。

 タイガが蹲るという事は、タイガの視線は脚元に来る。石像達の脚元は隙が出来る。そこを狙ってタイガは攻撃を仕掛けた。タイガは最初からこれを狙っていたのだ。

 脚を斬られた石像達は、腕だけでもタイガに近付こうとする。タイガは再びゴートで壁を作り、ミルミア達とは反対の道に歩いて行った。


 ――この神殿は俺を狙っている。今朝の夢といい、石像といい……。カリンは俺に行かせたくないと言った。それはここが終焉の地だと認識していたからだ。だけどここは終焉の地じゃないと判明した。もし他に理由があるとすれば? それに、さっきの大広間で見た模様と言うかなんというか……どこかで見覚えがあるんだよな……。


 この神殿に隠されている謎。何故自分だけ狙われるのか。大広間の模様は何だったのか。そして村長は何処にいるのか。謎が謎を呼び、再びタイガを襲って行くのだった――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ