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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第一章 異世界転移
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第四話 救出と謎の魔法

 変なヤンキーに絡まれ、余計な時間を取ってしまったタイガは再び走り出す。脳内に流れてきた道筋を辿って。

 入り組んだ道を進み続け、辿り着いた先には壁しかなかった。


 ――行き止まり!? まさか道を間違えたか? でもここで戻ればまた変な所に行ってしまう。でも目の前は行き止まり……どうすればいい、考えろ、考えるんだ!!


 その時、タイガは先程の出来事を思いだした。タイガが初めてワープした時だ。


 ――確か、あの時も行き止まりだったから俺は来た道を戻った。でも別の場所に出てしまった。もし、あの二人も来た道に戻ったとしたら、あの更地にいたはずだ。でも、二人の姿はなかった……もしかして、違う所にワープしたのか?


 タイガは考え続け、来た道に戻ろうとしたが、足を止めた。


 ――待て。もしここが行き止まりじゃなかったら……


 そう思い、タイガは覚悟を決め壁に向かって進み続けた。このまま進むと壁にぶつかる。そして目の前まで来た時、タイガは壁に――


「……ビンゴ」


 ぶつからなかった。

 壁を抜けた場所は薄暗い部屋で、目を凝らさないとよく見えない状態だった。


「二人はこの場所を通ったのか」


 タイガは記憶を探りながら先に進んでいく。

 一歩、また一歩と進んでいくと、一つの大きな扉が見えてきた。


「まさに、ボスが居そうな扉だな」


 タイガは恐る恐る、その扉に手をかけ、ゆっくりと開ける。すると、奥には先程の少女とその少女を連れ去った男がいた。しかも、少女の手は縄で縛られており、口にガムテープを貼られていて抵抗が出来ない状態だった。


「ん? お、お前! どうやってここに来た!」


 男はタイガに気付いたのか、こちらを見る。その手には短刀があり、今にも少女を殺しそうな雰囲気だった。


「お前達の後を追ったら、ここに辿り着いてな。それより、その短刀で彼女をどうするつもりだ」


 タイガは先程と、いや、先程よりも強い殺気を放つ。


「決まってんだろ。こいつを殺す!」


 男は何を言っているのか、男は何が目的でこんな事をしているのか、タイガには解らなかった。


 ――今ここで突っ込めば、男は真っ先に彼女を殺しかねない……慎重にいかないとな……


 タイガはこんな場面でも、落ち着いて判断している。

 まずは相手の出方を窺う。タイガは先程の大刀を鞘から抜き、握りしめ、構えた。


「お前は何者か知らんが、俺の計画の邪魔をするなら早急にこの世から消えてもらうぜ」


 男は腰のポーチから手裏剣を沢山出し、タイガ目掛けて投げてきた。タイガはそれを大刀で弾き、防ぐ。

 安心するのも束の間。いつの間にか男がタイガの目の前に来ていた。男は短刀でタイガの腹部を斬ろうと素早い動きでナイフを横に振った。タイガは腰を引かせ、ギリギリで躱す。それでも、男の攻撃は止まらない。先程からタイガが防ぐ一方だ。


 ――くそ! さっきとは比べ物にならない! スピードが速すぎる!


 タイガは内心焦っていた。


 ――攻撃する隙がない……どうすれば……


 すると男はまたも手裏剣を出し、タイガとは違う方向に投げた。その先は――


「なっ――! まずい!」


 少女がいる場所だった。


 タイガは大刀を投げるが、弾くことが出来たのはほんの数枚。残りは真っ直ぐ、少女に向かって行った。

 もう間に合わない……タイガがそう思った時だった。


「ルカ!」


 タイガは右手を出し、突然言い出した。するとタイガの右手から風が吹き、手裏剣が全て別の方へ飛んで行った。


「貴様! 魔法を――」


 タイガも正直分からなかった。いきなり『ルカ』という単語が出てきて、それを言ったら自分の右手から風が出たのだから。

 相手も同じく動揺している。そして、この隙をタイガは見逃さなかった。

 すぐさま大刀を拾い、相手に向かって走り出した。


 ――また単語が……だが、迷っている暇はない。


 タイガは大刀を構えながら叫んだ。


「クリアガービル!」


 すると大刀に電流が走った。

 タイガは勢いに任せ、剣を横に振り抜き、男を斬る。すると男は悲鳴を上げ、膝をつきながら――


「今のは……雷の……まほ……う」


 ドサッと倒れた。


「やっと終わった。手強かったぜ――っと、彼女を助けないと」


 タイガは大刀を鞘に戻し、少女の下へと向かう。


「大丈夫か?」


 タイガは優しくガムテープを剥がし、少女に聞く。


「あ、ありがとうございます……」


 少女は少しおどおどしながらお礼を言う。相当怖かったらしいのか、手縄を外したらタイガに抱き着き、泣き始めた。

 タイガはびっくりして少女を引き離そうと考えたが、少女の気持ちを考えたらと思うと、引き離そうに引き離せない。だから暫くの間そのままにした。


「すみません。お恥ずかしい所をお見せして……」


 少女は落ち着くと、先程までの行動が恥ずかしかったのか、顔を赤くしている。


「いや、別に大した事はしていない。俺はたまたま君が連れ去られているのを見たから――」


 その時、タイガは言葉を失った。助けている時は、相手に夢中で気が付かなかったが、よく顔を見ると――


「水色の髪に、青い瞳……」


 夢に出てきた――自分の目の前で殺された少女だった。


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