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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第三章 コナッチ王国
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第四五話 念願のマグナラと共有

「いやぁタイガ君。息子の目を覚ましてくれてありがとう!」


 一悶着を終え、再び応接室に戻って来たタイガ達。あの後、ラモーネはイグニルにも謝り、許してもらった。カリンが座ると、そこにミンティークが走って行ってカリンの膝の上に座る。その景色はとても微笑ましかった。


「いやぁ、カリンの事と言いラモーネの事と言い、何かお礼させてくれないか」

「ホントですか!? じゃあマグ――っ!」


 お礼という言葉を聞いた時、一目散にミルミアが喋るが、隣に座っていたリンナに口を塞がれる。


「ミルちゃん! タイガさんが何とかしてくれるんだから、邪魔しないの!」


 リンナがミルミアの口を抑えたまま、ミルミアの耳元でボソッと喋る。


「どうかしたのかい?」

「あ、いえ。何でも」


 それを見たイグニルが聞いてくるが、タイガは何でもないとスルーさせた。


 ――さて、こっからは俺次第だな……。ミルミアからのプレッシャーが凄い。


 タイガはチラッと隣を見ると、『何としてもゲットしろ!』とでも言ってそうな雰囲気を纏っていた。タイガはため息をつき、もう一つの本題に入った。


「実はこの間、ドルメサのルージュという時刻盤専門店で、これを譲り受けたんですよ」


 タイガは首にぶら提げているマグナラをイグニルに見せる。


「それはマグナラか! で、それがどうしたんだい?」

「今、このマグナラを持っているのは俺だけで、俺を通さないと念話が出来ない状態なんです。そこで、一番安いマグナラを売っているお店を紹介してほしくて」


 それを聞いたミルミアが暴れ出す。だが、これはタイガの作戦であった。

 相手に軽い褒美だけを求める。だが、それでは気が召さない相手は、それよりも豪華なものを渡したくなる。それが義理堅い人であれば尚更である。


「そんなお店紹介しなくとも、私が用意するよ」


 まんまとタイガの罠に嵌ってしまった。


 ――こんな簡単にいって良いのかよ。だが、念には念を。もう一息だ。


 隣で暴れているミルミアを、一度頭に手刀をして黙らせる。


「いえ! 国王様のお手を煩わせるには……」

「気にするな! 私がしたくてしているのだから。ギル! マグナラを持って来なさい!」


 ――チェックメイトだけど……。案外簡単に行くもんだな……


 タイガの作戦通りに話が進んでしまい、あっけらかんとしていた。


「では、お言葉に甘えます」


 暫くして、執事のギルがアタッシュケースらしき物を持ってきて、イグニルに渡す。


「では、この中から好きなの選んで良いよ」


 その中には沢山のマグナラが入っており、種類も色も豊富だった。ミルミアが食い入るように眺め、リンナも目を輝かせて見ていた。

 二人が見ている間、タイガ達は雑談していた。


「そういえば、このマグナラに搭載されるイグナートってどこに行けば手に入るんですか?」

「え? タイガ君は知らないでそれを使ってたのかい?!」

「まぁ、ちょっと特別でして……」


 タイガは言葉を濁らせ、何とか切り抜けた。


「ギル! 王都の地図を出してくれ!」

「あ、良いですよ。俺が出します」


 タイガはいつもと同じ感覚で地図を映す。その時、コナッチ家の人々は目を丸くさせた。


「タイガ。今の何だい!?」

「何って、地図だけど」

「それは分かるんだけど、どうしてマグナラから出てきたんだ!?」

「どうしてって、それは――」


 ふと、タイガは言葉を止めた。そして、マグナラを手に入れた時の事を思い出す。


 ――確か、マグナラは個人の情報が搭載されるイグナートによって、初めて動くんだよな。俺のイグナートはスマホだった。俺のマグナラは地図も出せるし、この間マグナラのカタログ見るのに久々にネットを使ったな。っていう事は……


「完全にスマホじゃねぇか……」


 そう。普通のマグナラは念話と時間の確認しかできない。だがタイガの場合、個人情報の塊であるスマートフォンがイグナートとなっているため、スマートフォンの機能が殆ど使えるのだ。

 そこで、タイガは一つ思いついた。


「マグナラ。マグナラ同士での共有ってできる?」

「ハイ。共有シタイモノヲ上映シテ、共有シタイ相手ノマグナラニ触レテガリルヲ流ス方法ト、相手ノマグナラニ自分ノイグナートヲ搭載サセ、共有シタイ人物ト、ソノ相手ヲ想像スレバ、遠距離デ共有デキマス」

「会話も出来るのか……」


 タイガとマグナラの行動に、コナッチ家は茫然としていた。


「因ミニ、タイガ様ノイグナートハ複製出来マセン。ナノデ、相手ノマグナラト、私ニガリルヲ流シテ頂ケレバ、タイガ様ハ相手ノマグナラモ使ウ事ガ出来マス」

「そうなの? ラモーネ、マグナラ持ってる?」

「も、持ってるけど……」

「ちょっと貸してくれ」


 タイガはラモーネから球型のネックレスのマグナラを借り、先程書かれていたように自分のマグナラとラモーネのマグナラにガリルを流す。一瞬の出来事だった。タイガのマグナラから光を放ち、その光はラモーネのマグナラを包み込む。そしてタイガのマグナラから『登録完了』の文字が映し出された。


「これで、ラモーネのマグナラは俺の声にも反応するのか?」

「ハイ。実際ニヤッテミテハ?」


 ラモーネにマグナラを返し、ガリルを流してもらう。


「今、何時だ?」


 すると、タイガの声に反応してラモーネのマグナラから『一二時五九分』という文字が映し出された。

 成功したのを喜ぶカリン達だが、タイガは時間を見て固まっていた。


「カリン」

「はい?」

「もう、一三時」

「そうですね」

「――昼飯、どうすんの?」

「「「「「あ……」」」」」


 全員、マグナラに集中してしまい、昼食の事など忘れていた。

 するとタイミングよくギルが入ってきて、昼食を持ってきてくれた。


 ――この人、何でタイミング良いんだろう……


 タイガが思った、率直な感想だった。

 ミルミアとカリンのマグナラ選びを中断させ、昼食を取り始めた。ミルミアのマグナラ選びは、タイガが脳天に手刀を決めて強制終了させた。

 そして楽しく昼食を終え、ミルミアは真っ先へとマグナラ選びへと戻った。


「じゃあ、イグナートのお店を教えよう」


 タイガはイグニルのマグナラにも登録して、タイガの地図をイグニルに送る。要領としては、携帯のアドレス交換するときにやる赤外線みたいな感じだ。

 タイガのマグナラとイグニルのマグナラに地図が表示され、片方が動かすと同じ様に動く。

 イグニルの説明で、イグナートが手に入る店を知ったタイガ。それと同時に、、ミルミア達のマグナラ選びも終わった。

 ミルミアは雫の形をした薄紅の片耳イヤリングで、リンナはシルバーのブレスレットだった。


「ネックレスだけじゃないんだな」

「そう。人によって向き不向きがあるかね。タイガ君が見たマグナラは、基本形だよ」


 ――そういえば、あまりの値段に途中で見るの止めたんだ……


 タイガがこの間見たカタログは、かなりの衝撃で全部見ることは出来なかった。


「形が変われば変わるほど、値段は上がる。ミルミア君達は運が良い!」


 嫌味にも聞こえるが、素直にお礼を言って、オトランシス兄弟の帰りを待つ。今日は王宮に泊まる予定の為、自由行動となった。


「タイガ、これからどうしますか?」


 応接室を出たタイガ一行。タイガは欠伸をしながら身体を伸ばすと、カリンが聞いて来た。

 だが、タイガはカリンの目を見て何も話さない。


「た、タイガ?」

「……後ろの二人を見てくれ」


 低い声でタイガは言い、カリンの後ろにいるミルミアとリンナを見る。


「……分かったか?」

「……はい。では私も――」

「いや、カリンは休んどけよ。久々にラモーネ達と会ったんだろ? 積もる話もあるだろうからさ」


 タイガには悪気はないが、カリンにとっては少し複雑だった。


「……分かりました。気を付けてくださいね」

「お前は俺のオカンか。じゃあ、行ってくる」


 タイガ達が離れていく中、カリンは少し寂しそうな顔をしていた。


「どうしたの? カリンお姉ちゃん」


 不意にドアが開き、顔を覗かせるミンティーク。


「いえ、何でもありません。さて、ミンティークのお部屋に行きましょうか」

「うん!」


 カリンとミンティークは手を繋ぎ、部屋に戻って行った。そしてタイガは早く使いたがっている二人を連れ、イグナートを取り扱っているお店に向かった。


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