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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第三章 コナッチ王国
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第三九話 再会と銃士

 タイガ、ミルミア、リンナは顔を赤くしながら村を歩いていた。理由は、店内で騒いだ事とカリンの顔に泥を塗った事だ。

 店長はタイガ達のバッジを見てドルメサの王族関係だと知るとあたふたしたと同時に、何故かカリンもタイガ達と一緒に頭を下げて謝ったのだ。そして店を出て今に至る。


 ――今思えば、俺マグナラ持ってんのに。何で騒いだんだろう……


 タイガは自分のマグナラがあるのにも関わらず、ミルミア達と一緒に喜んでしまった。しかも柄にもなく喜んだため、恥ずかしくて顔を赤くしていた。他の二人は、ただ単に恥ずかしくて顔を赤くしていた。


「取り敢えず、馬車に戻りましょうか。マグナラの件は、コナッチ王国に着いてから話しましょう」

「そ、そうだな……」


 タイガは未だに意気消沈しながら歩いている。そして駐馬場に着いた時だった。


「お前! ちょっとこっち来い!!」

「止めろ! 放せよ!!」


 駐馬場の奥の影で、数名が争っている様な声が聞こえた。タイガはその場に止まり、声のする方を凝視する。すると三人の男がカウボーイハットを被っている少女の腕を掴んで強引に引っ張っていた。少女はそれを拒む。


「タイガさん、あれって……」


 リンナが恐る恐る聞く。タイガは溜め息付いて、頭を掻く。


「どう見ても、見過ごせる状況じゃねぇよな。それに、あの三人見たことあるし」


 男三人の正体。それはタイガが初めて戦ったチンピラ軍団のムキムキのデブ、忍者もどき、ピアスの三人だった。


「周りの人も見て見ぬふりか。どういう教育してんのかね? ちょっと挨拶してくるわ。みんなは先に戻ってて」


 そう言ってタイガはその現場に足を運ぶ。


「早く来いって言ってんだよ!」

「兄貴の言う通りにした方が良いっすよ。痛い目見たくないなら」

「嫌だって言ってるの! 放してよ!」

「兄者、もうこやつ斬った方が早くないですかぃ?」


 今にも連れ去られそうな少女をみんなは見るも、素通り。その態度にタイガは少しイラっとしていた。


 ――まぁ、結局は自分だからな。自分に被害が来ない為には関わらないようにする。そいつらもこのチンピラの『加害者』にすぎない。まぁ、別に良いけどね。


 タイガはその四人に近付き、声を掛けた。


「よう。久しぶりだな、チンピラ共」

「ああ!? 誰だてめぇ――っ!」


 ピアスはタイガを見ると、顔を真っ青にした。


「どうしたんですか兄貴? お、お前は!!」

「あ、あの時の……」


 三人が三人、驚愕して震え始めた。


「な、何でここに……」

「いや、野暮用でな。それで? まだこんな事やってんの」


 タイガが呆れてリーダーのピアスに聞く。


「違うんだ! こいつが俺達に――」

「ぶつかったから金を巻き上げようと? 俺の時となんも変わんねぇじゃねえか」


 タイガは溜め息をつき、頭を押さえる。

 その時、忍者もどきがタイガに指さした。


「貴様! 拙者の刀はどうした!」

「刀? あぁ、これの事か」


 そう言えば、と思い出してタイガは申鎮の剣ことジュピターを出す。


「お前の剣、愛用させて貰ってるぜ」

「それを使っても、何もないのか……?」


 冷や汗を垂らしながら、忍者もどきは聞いてくる。


「別に何も。逆に気に入られたしな。そんな事より――」


 タイガは鞘を抜き、刃をチンピラに向ける。


「次にそんな事をしたら、斬るぞ」

「「「す、すみませんでしたぁああああ!!」」」


 こうして三人仲良く走って逃げて行った。


「ふぅ。さて……」


 タイガは少女の方に振り向き、目線を合わせる。


「大丈夫か?」

「う、うん。助けてくれてありがとう」


 金髪をポニーテールにして茶色のカウボーイハットを被っている。首には赤色のネッカチーフを巻いており、服装はクリーム色のカウボーイシャツに茶色の革のチョッキを着ている。下は股下ぎりぎりまで短い藍色のジーンズで、黒色の革のガンベルトを装着していた。


「あたいの名はレーラ。あたいはこう見えて一五なんだぜ!」


 ――俺の一個下かよ。それにしても……


 タイガはレーラの身体を見る。


「色々残念だな」

「今胸が小さいとか言ったな!!」

「言ってねぇよ」


 口にはしてないが、タイガはそう思っていた。


「それに、あたいは見ての通り銃士(ガンナー)なんだ。宜しくな!」


 歯を出してニッと笑う。


「俺はヤマト・タイガ。魔剣士だ。宜しく」

「魔剣士!? あたい凄い奴に会っちまったよ!」


 レーラは興奮してピョンピョン飛び跳ねた。


 ――俺の近くには精神年齢が幼い奴ばっかじゃねぇか……


 それを見たタイガは項垂れていた。


「それで? こんな所でどうしたんだ?」

「実はさ、これから帰ろうとしたんだけど……」


 レーラが言い辛そうに頬を掻く。


「帰るためのお金、無くしちゃってさ……」


 レーラの話によると、ギルドの依頼でここまで来たは良いが、その任務中にお金を落としてしまったらしく、立ち往生してたらしい。そこで運悪くあのチンピラに絡まれたとか。


「それで? 何処まで帰るの?」

「コナッチ王国なんだけど」

「丁度良い。俺もコナッチに行く予定だったんだ。そこまで送ってやるよ」

「ホントか!? まじサンキュー!」


 タイガの言葉で元気を取り戻したレーラ。タイガはレーラを連れて駐馬場に戻って行った。


「おっそい!」


 駐馬場に着いた早々、ミルミアが腕を胸の前で組んで待っていた。怒っていたが。


「それでタイガさん。その子はさっきの?」


 近くにいたリンナがレーラに気付き、声を掛けてきた。


「あぁ。こいつはレーラ。何でも、コナッチに帰る途中に金を落としたらしく、立ち往生していたらあのチンピラ共に会ったらしい。で、方面一緒だから送って行こうかなって」


 その時、隣のレーラが震え始めた。


「どうした? トイレか?」

「な、なぁタイガ。お前、貴族か何かか……?」


 声も震わせて、タイガの方を見ずに聞いてくる。


「いや? ただの冒険者」

「じゃあ聞くけど、何でお前の襟元にドルメサの紋章があるんだ……?」


 先程は死角で見えなかったのか、今頃気付いたらしく震えているようだ。


「まぁ、中で話すから取り敢えず乗ろう。モナローゼさん、お待たせしました」


 タイガはレーラの手を引っ張り、中に乗せる。カリンとモナローゼも次々と入っていく。


「なぁ、ルー」

「何? 兄さん」


 先程のやり取りを遠くから見たオトランシス兄弟。


「タイガって、ロリなのか?」

「ボクに聞かれても……」


 その時、何処からか木の枝が飛んできて、アイルのおでこにヒットした。犯人は勿論、タイガだった。

 そして、コナッチ王国に向けて、馬車を走らせて行った。


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