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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第三章 コナッチ王国
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第三五話 長旅と魔国

 あれから数日が経った。様々な依頼をこなしていき、ギルドカードの色が『紫』から『黄』に、つまりCランクに昇格出来た。

 そして現在、タイガ達は竜車ではなく貴族専用の馬車に乗っていた。理由は、コナッチ王国に行くため。


「まさか、宮殿騎士の一人がウールさんだとは思わなかった」

「ウールは腕のある騎士だからね。少し大変だろうが、副団長と兼任してもらっているのだよ」


 タイガの言葉に、団長のモナローゼが答える。

 先日、騎士団とシェスカにお願いした宮殿騎士、騎士、メイドが来たのだ。屋敷の方はシェスカ、ハスキー、ウールに任せている

 。

 馬車は二台用意しており、先頭にカリン、タイガ、モナローゼが乗っていて、後ろにミルミア、リンナ、アイル、ルーが乗っている。護衛の騎士団はその周りを囲むように歩いていた。

 この間、ルーが目を覚ました時、全員に謝りに行った。特にタイガには感謝していた。


「コナッチ王国にはどの位で着くんだ?」

「大体二日程です。なので初めての長旅ですね!」


 カリンが陽だまりの様な笑顔で言った。それにタイガは見惚れてしまい、頬を紅色に染めてカリンから目を逸らす。


「そ、それで、どのルートでコナッチまで行くんだ?」

「そうですね。タイガ、マグナラで地図を出して下さい」


 カリンに言われ、マグナラに世界地図を出させる。

挿絵(By みてみん)

 ――ヨーロッパに似ている様な似ていないような……。まるで世界地図を裏返したみたいだ。


「ここにドルメサ王国があります。ここにコナッチ王国があるのですが、この海に掛かっている場所があります。ここはドルメサとコナッチを結ぶ道で、ここを通ってコナッチに行くんです。勿論、検問所はありますし、小さいですが村もあります」

「待て、コナッチは西にあるんじゃないのか? これじゃあ東だぞ?」


 タイガは以前、カリンからコナッチ王国について聞いた時に、西の方に位置すると言っていたのを思い出す。だが、コナッチはドルメサの右側にあるため話が合わなかった。


「何を言っているんですか? タイガ。西はこちらですよ?」

「――え?」


 タイガは地図の上をよく見る。すると、方位が左右で反対になっていた。


「じゃ、じゃあ、太陽はどっから上る……?」

「もう、タイガったら。西に決まってるじゃないですか」


 ――マジかよ……。マジで表裏逆じゃん!


 タイガは唖然して固まっていた。

 だが、タイガは一つの国を見て、カリンに質問する。


「なぁカリン。この異様にデカい国は何処なんだ? ほら、ドルメサの真上の位置にある……」


 タイガの質問に、カリンと、同乗していたモナローゼの顔が暗くなり、俯き始めた。


「本当は、その国に触れるのは禁忌なのですが……。モナローゼさん、タイガになら良いですよね?」


 カリンの言葉に、モナローゼは静かに頷く。


「タイガ、今から言う事は他言無用でお願いします。勿論、ミルミアさんとリンナさんにも」


 タイガは言われたことに頷くしかなかった。


「タイガと出会って次の日、私は誰にさらわれましたか?」

「誰って、ウリドラだろ? 魔王軍の」

「そして先日、魔獣騒動の元凶は?」

「魔王軍のドリナエだ。その質問に何が――」


 と言いかけた時、タイガは一つの仮説が浮かんだ。


 ――そう言えば、何で簡単に王都に入って来られる? 怪しい人物なら、それこそ検問所で止められるし、それが王都の入り口なら尚更だろう。それ以前に、ドルメサにいること自体が問題だ。もしかして……


「そう。ここは彼らの長、魔王がいる『魔国』です」

「魔国……」


 カリンはタイガ経緯を説明した。最初はただの国しか存在しない、平和な場所だった。だが突然、そこに魔王が現れて一つ一つの国を滅ぼしては自分の領地にしていったらしい。そして、今地図に載っている状態になったらしい。


「っていう事は……」

「我がドルメサも、いつ滅びるか分からない」


 モナローゼが悔しそうに、寂しそうに言う。


「なので、北の国境にもの凄く高い壁を立てているのですが……。どうやって入ってきているのでしょう」


 タイガはじっくりと地図を見る。すると、一つ気になる場所を見つけたが、これはタイガ自身の目で確認したいと思い、何も言わなかった。


 九時に出発して、現在一二時半。タイガ達はハル村という村で昼食を取ることになった。因みに、崩壊したオルドラン村の人々の殆どがハル村に移住したらしい。

 昼食時、カリンと一旦別れ、ミルミア達の所に行った。


「早くコナッチに着かないかな~。ウチ、もう我慢できない!」

「お前、どうせマグナラ目的だろ」


 タイガの言葉にギクッとするミルミア。


「そそそ、そんなことないよ! 本当よ!」

「ミルちゃん、楽しみで昨晩寝れなかったもんね」

「り、リンナ!」


 リンナの言葉に顔を真っ赤にさせるミルミア。図星だったらしい。


「勿論、選ぶのに付き合うからもう少し我慢しろ。先にアイル達の要件を済ませないとな」

「わ、分かってるわよ……」


 分かってはいたが、あからさまに落ち込むミルミア。タイガはマグナラに、マグナラのカタログを検索させる。すると、タイガの八面体の他に正四面体型、正八面体型、正一二面体型など色々な形があり、色も豊富だった。

 出てきたカタログに、ミルミアとリンナは食い入るように見る。


「そういえば、カリンも持ってなかったな。マグナラがあれば連絡手段としても使えるし、カリン用にも買おうかな」


 そう言い、画面をスクロールしていく。一つのマグナラにタッチする。すると、そのマグナラの詳細が出て、見ていくと三人共口を開けて固まってしまった。


「ま、マグナラ一個……」

「六万一千パス……」

「白金貨三枚に、金貨五枚……」


 全員が全員思った。


 ――これは無理だ……

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