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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第三三話 新たな手下と大切なもの

 暫くして、ルーがゆっくりと立ち上がった。


「そこのカラス、よくもやってくれたな。折角見つけた器を汚しやがって」


 ルーは身体を叩き、汚れを落とした。二、三回足踏みすると、その足元から魔法陣が出てくる。


「一応名乗っておこう。俺の名はドリナエ・スフィア。魔王軍のNo.3であり、魔獣の使い手だ」


 そう言うと魔法陣から、沢山のダークウルフが出てきた。


「つまり、全ての元凶はお前って事か」

「ご名答。本当は早めに殺りたかったが、貴様らが邪魔したお蔭で計画が崩れた」


 ドリナエはアイルとルーに催眠を掛け、王宮を襲わせた。だが運悪くタイガが帰ってきてしまい、尚且つ催眠まで解かれた。そこでドリナエはオルドラン村付近の森でダークウルフを召喚し、村を襲った。そこでダークウルフに村長を噛ませ、村長自体をダークウルフの支配下に置いた。そしてギルドに依頼した。

 本当なら依頼で来た人をどんどん襲ってダークウルフに伝染させようとしたが、その依頼をタイガ達が受けてしまい、逆に減ってしまった。それを利用して、ダークウルフに支配されている村長が『全滅した』と嘘をつかせ、村を滅ぼした後王宮に向かうつもりだった。そこでルーが一人でいるのを見つけ、憑依した。


「つまり、俺達は始めからお前に誘導されていたのか」

「あぁ。お前が一人で走って行ったときは傑作だったよ。お前が居なきゃこいつらは烏合の衆同然。でも意外にやるもんだな。俺以外の三人で全滅させちゃったよ。まぁ、俺はそこを狙ったんだけどね」


 ドリナエは高笑いしながらタイガ達を見る。剣を握るタイガの手が力強くなっていく。


「もう話は終わりかい? なら、行け」


 ドリナエが合図を出した瞬間、ダークウルフ達は一斉にタイガ向かって走り出した。


「ソード・ルカ!」

「ソイドレス!」


 タイガは数匹風波で斬り、ペルは吹き飛ばす。そしてタイガはその場にとどまり、両手の指で銃の形を取り、近付いて来た二匹に向かって撃った。


「――ミストレアス!」


 水玉は二匹を貫通し、その場に倒れた。


「頼むぞ、ペル!」

「任せてよ。アトラスト」


 ペルは素早くルーに憑依しているドリナエの所に飛び、ペルにしか使えない魔法を唱えた。


「効かんよ。憑依は催眠と違い、精神そのものを俺が支配しているんだからな」


 ドリナエはニヒル口で笑い、ペルの上に魔獣を召喚した。

 踏み潰されそうな所を間一髪で避けたペルは、タイガの下に戻る。


「さぁ、今度はこいつを相手にしてもらおう」


 先程、ペルの上から召喚された魔獣。高さが四メートルくらいある巨大なゴリラだった。


「……いくら何でもデカすぎないか?」

「気を付けてタイガ。こいつの攻撃力は半端ないから」

「……え?」


 タイガはよそ見をしてしまった。その時を狙って、巨大ゴリラはアッパーカットでタイガを真正面から殴った。下から来た攻撃の為、タイガは上に飛ばされた。だが、タイガは直ぐに体勢を立て直し、下に落ちながら魔法を撃った。


「く――っ! クリアミスト!!」


クリアミストは水魔法であるミストレアスに光魔法を雷に性質変化させたクリアガービルを混ぜたもので、水玉に雷を纏わせるものだ。

クリアミストはゴリラの眉間に撃ち抜かれ、そこから体内に電撃が襲う。ゴリラは動かなくなり、倒れた。


「ソイドレス」


 ペルはタイガに向かってソイドレスをしてゆっくりと下ろした。


「貴様……」


 ゴリラが直ぐにやられたことにより、怒りを露わにするドリナエ。それと同時に、タイガも苦痛な表情をする。


 ――クッソ! あのゴリラの攻撃力半端ねぇ……。あばらを何本か折られた。とりあえずエントレスをかけよう……


 タイガは、状態異常を回復させるエントレスを自分自身にかけ、折れたあばらを修復する。まだ痛みはあるが、先程よりはましになった。

 ドリナエは自分の親指を噛み、血を地面に垂らした。


「血塗られし眷属よ。我が血の契約に従い、その姿を現せ」


 ドリナエがそう唱えると、血が落ちた所から魔法陣が出てきて、一瞬にして大きくなった。その魔法陣の中から、頭に響く程の雄叫びが聞こえた。


「これはまずいな……」


 それを見て、ペルはそう呟きながらタイガにこの場から離れるように言った。これから召喚される魔獣は、今までとは比べ物にならない。だが、タイガはピクリとも動かなかった。それは、恐怖で身体が動かないのではない。完全に戦う姿勢で待っているのだ。魔獣が来るのを。


 ――ミルミア達はまだ目が覚めそうにないな。ここに置いておくと巻き込まれる可能性がある。モナローゼさん達騎士団も呼びたいが、ここまで時間が掛かるに違いない。なら何処かに隔離させるしかない!


 タイガはミルミア、リンナ、アイルを一気に担いでその場を離れた。かなり離れた所で、三人を一ヶ所にまとめ、ゴートで壁を作った。


「ペル! みんなを見ていてくれ!」

「タイガ! 君は――」


 タイガはペルに背を向け、小さく言った。


「俺はルーを取り戻したい。そして、みんなで笑って明日を、明後日を、その先を過ごしていきたいんだ。厳しい戦いなのは分かっている。でも、もうあんな夢は見たくないんだ!!」


 そしてタイガはドリナエがいる所に戻っていく。


「ほう。逃げたと思ったんだが、何故戻って来た。勝てもしない戦に挑むとは」

「みんなに危害を加えない様に離れに寝かせておいたんだよ。それに勝てるかどうかなんて、闘ってみないと分かんないだろ?」


 タイガは申鎮の剣を構え、ドリナエが召喚してくる魔獣を待ち構えていた。


「お前のそういう所、嫌いじゃないぜ。でもな、人間なら諦めも肝心だぞ。後悔したくなければな。出でよ、血黒龍(ダークブロードドラゴン)!」


 下の魔法陣から、今までと比べ物にならない大きさを持つ龍が召喚された。


「さぁ、こいつに喰われる前に早く逃げたらどうだ? どの道、明日には全て終わっている。あの女の命もな!」


 すると、ダークブロード・ドラゴンは口からもの凄い威力のある火炎放射をしてきた。タイガはそれをゴートで防ぐ。


「そんな物で防いでも意味は無い。それごと焼き払え!!」

「く――っ!」


 更に威力が強くなった火炎放射は、タイガの土の壁を簡単に壊してしまった。


「諦めろ。お前の負けだ」

「悪いな。俺は諦めの悪くなった男でね。一度決めたことは、最後までやり通す様になったんだよ」


 タイガはスゥと息を吸い、大声で叫んだ。


「ルー! お前はそんな簡単に諦めて良いのかよ! 仮にもお前はコナッチ王国の騎士団だろ!」

「何を言っている。お前の声はこいつに届かない」


 タイガのいきなりの行動に、ドリナエは(あざ)笑う。だが、タイガはそれを止めない。


「お前言ったよな! 自分には大切な人がいるって。今は会えないけど、立派な騎士になったら迎えに行くって言ったよな!」


 初めて出会い、親友となった日。男達だけで会話をしている時、ルーはタイガに言っていた。


『大切な人を、ボクは守りたい。そして迎えに行くんだ。約束を果たす為に』


「お前はそれで良いのか!? それで大切な人を守れるのか!?」

「くっ――! 血黒龍、殺れ!」


 タイガが喋っていくうちに、ドリナエに異変が起きる。それに危険を感じ、召喚した龍にタイガを殺すよう命令する。

 血黒龍は火炎放射を放つが、全然威力がない。契約者であるドリナエの様子がおかしいからだ。

 タイガは火炎放射を躱していき、ドリナエに向かって走る。


「守りたいもんがあるなら、意地でも守りやがれ!! 簡単に――乗っ取られてんじゃねぇよ!!」


 そしてタイガは拳を握り、ドリナエ、基ルーの右頬を思い切り殴った。殴られたルーの身体は勢いよく飛ばされ、近くの木にぶつかり、後頭部を打って気を失った。

 タイガは近付くと、ルーに纏っていた黒いオーラは消え去った。それと同時に血黒龍や召喚された魔獣が煙の様に消えていった。


「はぁ、はぁ……く――っ!」


 突然タイガのあばらに痛みが走った。いくら回復魔法で回復したと言っても、応急処置に過ぎない。簡単に言うと、痛み止めが切れたみたいなものだ。

 タイガは立つのが辛くなり、その場に倒れようとする。すると誰かがタイガを支えてくれたお陰で、タイガが倒れることは無かった。


「アイ……ル……」

「弟を救ってくれてありがとう。今はゆっくり休め」


 タイガの下に来たのは、巻き込まれない様に遠くで寝かせておいたミルミア、リンナ、アイルだった。

 タイガはみんなが無事だと知ると、それに安堵し、そっと目を閉じた。


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