第二七話 宮殿騎士と繰り返される悪夢
「で、結局何人雇うことになったんだ?」
夕食の時間になり、ハスキーとシェスカ以外は食卓に着いた。
「まず、使用人を一〇人程ですね。このお屋敷は無駄に広いですから、メイドを四人。門番を二人。残り四人は王宮の周りの警護に当たらせます」
「成程。人材はどうするんです?」
内容を理解した所で、リンナが聞いてくる。
「メイドの方は、シェスカに任しています。何でも、使用人が勉学する所があるらしく、そこから連れて来るそうです」
「学校みたいな所か。残りの六人は?」
「ドルメサ王国騎士団から宮殿騎士に何名か来てもらいます」
「宮殿騎士?」
タイガは初めて聞いた言葉に、思わずカリンに聞き返す。
「宮殿騎士は宮殿を守衛する、騎士の中でも最高ランクの役職です。ですが、宮殿騎士になるには騎士団に入らなければいけません。それか、王直々の指名のどちらかです」
「そいつら、普段何やってんだよ」
「普段は街や村の方で活動しているんですが、私が他の国に行く留守の間、彼らに任せているんです。そして何名かは私の護衛ですね」
「いるなら最初から雇えよ……」
タイガは頭を掻きながら呆れたように言う。カリンは後で騎士団団長に連絡すると言って、話は終わった。
話し合いが終わると、黙々と食事に手を付ける。タイガは一人食べ終わると、ジャージ姿のまま庭に出ていた。
「夜空が綺麗だ……」
ふと空を美太タイガの目に映ったのは、無数の星たちが綺麗に輝いている景色だった。もっとよく見たいと、タイガは庭に寝っ転がる。
「タイガ、どうしたの?」
頭上の方から声がした。タイガは上半身を起こして声のする方を見ると、寝間着姿のミルミアがいた。上下共にオレンジ色の七分袖、七分丈で、ズボンの裾にはフリルが付いている。これだけ見ると、とても見習い騎士には見えない程細くて美しかった。タイガはそんなミルミアの姿を見惚れていた。
「タイガ?」
「あ、あぁ。星を眺めていたんだ」
ミルミアの声で我に戻ったタイガは、ミルミアの質問に答えて再び横になった。
「そう言えばミルミアって見習い騎士って言ってたけど、依頼をこなしていくと昇格とかあるの?」
初めてあった時、自己紹介でミルミアが自分はまだ見習い騎士といっていたのを思い出した。
「あるわよ」
カリンはポケットからギルドカードを取り出す。
「話は聞いていると思うけど、ギルドにはそれぞれランクがあって、ギルドカードの色によって受けられる依頼が決まってくるの。私は紫だから、一番下のDランクしか受けられない。そこまでは良い?」
タイガは頷く。そしてミルミアは話を続ける。
「ギルドに登録する前に適性検査があって、その適正で出た結果の役職に就くことが出来るの」
「俺、やってないけど」
タイガは登録時、検査も何もせずに魔剣士になった。初めて、適性検査がある事を知ったタイガは恐る恐る聞く。
「適性検査は、まだ自分がどのガリルを持っているか分からない人用なの。タイガは既に分かってたんじゃない?」
「言われてみれば……」
ギルドに登録する前、確かにカリンの部屋で調べていたのを思い出す。だが、タイガは「やってみたかった……」と呟いていた。
「で、ウチはどの属性か知らなかったから検査したの。ウチは弓士になりたかった。そしたら一つも属性無くてね。パパが騎士だったからか、適職に騎士って出たの。でも、騎士になるにはまだ経験値が無さすぎるから見習い騎士になったの。経験値を積み上げて、ランクもどんどん上がれば騎士に昇格出来るわ」
「じゃあ、俺の魔剣士の上は?」
「知らない」
返事がそっけなかったミルミアに、タイガは思わず「はぁ!?」と言ってしまった。
「だってホントなんだもん。実際、魔剣士を見たのはタイガが初めてだし、それまで滅多に表れない役職って言われていたんだから。それ故、身体能力まで高いなんて。チートよ、チート」
チートという言葉にタイガは苦笑いをしてしまう。
時間を確認すると、既に二一時を回っていた。二人は中に戻り、「おやすみ」と言って別れた。タイガも部屋に戻ると、ベッドに飛び込みそのまま寝てしまった。
「私がドルメサ王国騎士団、団長のモナローゼだ」
「同じく騎士団、副団長のウジュール・メインです。ウールとお呼びください」
次の日、王室ではなく、応接室にシェスカとハスキー以外が集まっていた。
「初めまして。ウチはミルミア・ガーネです。職業は見習い騎士をしています」
「私はリンナです。魔女をやっています」
次々と挨拶していく中、タイガだけ顔色が悪かった。
――また見てしまった……
そう。今朝もタイガは予知夢でカリンが死ぬ所を見てしまった。
――しかもカリンだけじゃなく、ミルミアやリンナまで……。どうなってやがる!
いつもはカリンの死に様だけだったのだが、今回は更にミルミア、リンナ、オトランシス兄弟も死んでいった。
「――が?」
――これじゃあ祟りみたいなもんだぞ。どうしてだ……どうしてそうなる!
「タイガ!!」
「――っ!」
突然のミルミアの声にタイガは驚いた。周りからは心配の顔が見られる。
「タイガさん、どうしました?」
「え……?」
「タイガ、物凄い汗よ」
リンナとミルミアの言葉に少しずつ呼吸が落ち着いて来たタイガは、首元が汗でビショビショな事に気付いた。
「タイガ、気分でも悪いのですか? でしたら、お部屋でお休みになられた方が……」
「悪い、心配かけた。もう大丈夫だ」
タイガは着替えてくるとだけ言い、応接室を出た。全員、その弱弱しい背中を見送って。




