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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第二六話 共同生活と再び……

「カリンが一緒に暮らさないかって……」


 タイガの言葉に、ミルミアとリンナは固まる。

 話は昨日に遡る。


「タイガ、今日はお疲れ様でした」

「おう、カリン。ありがと」


 風呂上がりのタイガは部屋に戻ると、カリンがベッドに座って待っていた。タイガはそのままベッドに飛び込んだ。


「タイガ。何で私が、友達がいないと分かったんですか?」


 ミルミア達を見送るとき、タイガは確かに「初めて」と言った。


「簡単な話だ。まず一つ目、お前と俺が初めて会った時」


 タイガが起き上がり、カリンの横に座る。


「お前が連れ去られているのに、誰も助けようとしなかった。あんなに人が多いなら、普通知り合いの一人ぐらいは遭遇するだろう。でも、結果誰もお前を助けようとしなかった」


 カリンはタイガの方を、目を逸らさず話を聞いていた。


「二つ目、お前が俺を安易にベッドに寝させようとした事。あの時は確かに『男』という生物を知らなさすぎだと言った。だけど、あまりにも知らなさすぎる。いくら知らなくても、ある程度の知識ぐらいはある筈だ」


 そしてタイガは立ち上がり、カリンの前に立った。


「そして三つ目。お前は世間を知らない。知らなさすぎる。この事から俺は、一つの仮説を立てた」

「仮説?」


 タイガの言葉に、初めて口を開いたカリン。


「カリン。お前、あまり外に出なかっただろ」


 それを聞いて、カリンは目を見開いた。


「出なかった、もしくは出られなかった。カリンは魔法の知識は豊富だ。だけどそれに反比例して世間の事を全然知らない。違うか?」


 タイガの言葉に、カリンは静かに頷く。


「王家関係だったら友達はいるかもしれないが、一般の人と友達になるのは初めてだなって分かったんだよ。俺を除いて、同性のな」

「やっぱり凄いですね、タイガは」


 カリンは優しく微笑み、タイガを見つめる。だがタイガから見てその笑みは、悲しみを紛らわす物にも見えた。


「今は何も聞かない。まずは、友達が出来たことを喜べ」

「はい!」


 先程の笑みとは違い、心から笑っているように見えた。タイガはカリンの頭を優しく撫でる。

 すると突然、カリンが立ち上がった。


「タイガ、あの二人もこの王宮に住ませましょう!」

「はぁ!?」

「そうすれば寂しい思いはしないと思いますし、何より楽しい毎日が送れそうです!」

「ま、待て待て!」


 興奮状態のカリンを一度落ち着かせる。


「確かに、あいつらはペガックに泊っているけど、二人の返答を待たないと。迷惑かかるだろ」

「そ、それもそうですね」


 カリンは落ち着きを取り戻し、座り直す。


「俺が明日聞いてくるから、少し待っててくれ」


 そう言ってカリンは納得し、部屋に戻っていった。


「そんなことが……」

「初めての友達……か」

「勿論、無理にとは言わない。どうかな?」


 タイガが恐る恐る聞くと、すぐに返事が返って来た。


「全然良いわよ!」

「私も大丈夫です」


 笑顔で了承してくれた。タイガは二人に感謝し、二人は荷物を持ってくると言って一度『ペガック』に戻って行った。

 二人の姿が見えなくなると、タイガは深いため息をついてベンチに座る。


 ――良かった。これで何とかなるだろう。まさか、また()()を見るとはな……


 実は、タイガが二人を誘ったのにはもう一つ理由があった。


 ――ウリドラの件で解決した筈だ。なのに、なんでまたカリンが死ぬんだよ……


 タイガはまた予知夢を見てしまった。あの一件から予知夢を見なくなって安心していたタイガ。しかも今回は違う死に方だった。


 ――あれだけ沢山の魔獣が現れれば、いくら身体能力が上がった俺でも無理だ。しかも王宮に来るなんて……。カリン、お前は一体何者なんだ……


 カリンの正体が気になったタイガ。正直今すぐにでも聞きたいが、まだ確証はない。今回もたまたまカリンの夢を見ただけかもしれないと、そう思ってタイガは聞かなかった。


「とりあえず、今の生活を楽しもう。あ、カリンに連絡しなきゃ」


 タイガはマグナラでカリンに、ミルミアとリンナが住むことを伝える。カリンはもの凄く喜んでいた。シェスカにも伝えるようお願いすると、丁度良いタイミングで二人が戻って来た。


「お待たせしました、タイガさん」

「いや、大丈夫だよ。じゃあ行こうか」


 タイガは二人の荷物を持ち、カリンの待つ王宮へと向かった。

 王宮に着くと、カリンが玄関前で待っていた。


「皆さん! 私の我儘を聞いてくださり、ありがとうございます」


 笑顔でお礼するカリン。余程嬉しかったのだろう。


「顔を上げてカリン。私もカリンと住めて嬉しいわ」

「私もです!」


 それに応えるようにミルミアとリンナも笑顔で言う。

 玄関に入ると、既にシェスカが待っており、二人を案内した。


「こんな大人数で暮らすのは何年ぶりでしょうか。凄く楽しみです!」


 その言葉を隣で聞いていたタイガは、神妙な面持ちになった。


「カリン、大事な話がある。ペル、屋敷にいる人を全員王室に呼んできてくれ」


 タイガの言葉を聞いたペルは、カリンの肩から飛んでそれぞれの部屋に向かって行った。

 先に王室に着いたカリンとタイガ。タイガは先程と変わらない表情で、両手を口の前で組んでいた。暫くすると、メイドのシェスカ、執事のハスキー、パーティーメンバーのミルミアとリンナ、そして昨日から王宮にいる双子の兄弟、アイルとルーが来た。それを見て、タイガは確信した。


 ――やっぱり少なすぎる。兄弟を入れないにして、残りを入れて六人。俺が来る前だったらカリン、シェスカさん、ハスキーさんの三人だったって事だろ? いくら何でも無防備すぎる。


「タイガ、これで全員です」

「それでタイガ様、どうされたんです?」


 カリンとシェスカが順に口を開く。タイガは一呼吸して口を開いた。


「カリン。ここの使用人を増やそう」

「どういうことですか?」


 突然のタイガの発言に、カリンは質問する。


「いくら何でも、この人数は少なすぎる。俺もここに居候の身だから偉そうに言えないが、メイド一人、執事一人は流石にまずい」

「その根拠を聞いても?」


 渋い声で、執事のハスキーが聞いてくる。


「事の発端は昨日です。操られてこの王宮にやって来たオトランシス兄弟。何故、俺達が帰ってくる前に見つけられなかったのか。理由は至極簡単。人がいないからです。カリンは念話で、門番はいないと言った。その時点から怪しいとは思っていたんですよ。この屋敷の住人について。だから、それを確認したくて全員集めたんだ」


 全員タイガの方を見て、目を逸らさないで話を聞く。


「カリン。俺がここに初めて来たときの朝食で、俺の質問覚えているか?」

「えっと……。ごめんなさい。覚えていないです」

「別に謝る事じゃない。俺は朝食の前、こう聞いたんだ。『他の人は?』って。そしたらカリンは『既に食べた』と答えた。それはシェスカさんとハスキーさんだけだからだろ?」


 タイガは休むことなく話し続ける。


「俺の記憶が正しければ、普通王家が食事をとる際、メイドは王様の後ろに立っているもんだろ? でも今朝も含めて、その場にいるのはシェスカさんだけだった。だから俺は、この屋敷に住んでいる人は少ないんじゃないかと思って、提案したんだ」

「成程……。タイガ殿は頭が切れるだけでなく、観察眼も良いんですな」


 話し終えたタイガを褒めるように、ハスキーが口を開く。


「門番の件もそうだが、これからはミルミア達も住む。だから使用人を雇わないか?」


 カリンは顎に手を当て、考える。沈黙が続く中、カリンが漸く口を開いた。


「分かりました。使用人を雇いましょう」


 その言葉で、周りはホッと息をつく。後は当人たちに任せようと、タイガとミルミア、リンナ、オトランシス兄弟は席を外した。


 ――これで人数は確保できる。利用って言い方はしたくないが、最悪の事態に備えないとな。屋敷の事は、ハスキーさん達に任せれば良いだろう。


 タイガは部屋に戻り、ジャージに着替えて文字の練習を始めた。


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