第二五話 討伐任務と同居提案
次の日、ギルドに九時に集合したタイガ、ミルミア、リンナで依頼ボードを眺めている。ミルミア達もギルドに登録して日は浅く、ギルドカードは紫色のDランクだった。
パーティーを組んで初めての依頼の為、三人共ワクワクしていたが――
「タイガさん、大丈夫ですか?」
「あぁ……何とかね。ふぁ~」
昨日、ミルミア達が帰った後、タイガはシェスカに文字の練習をお願いして見て貰っていた。
気が付いたら日付が変わっていたらしく、寝不足の様だ。
――まさか、こんな規則正しい生活を送ることになるとは……
そう思いながら、眠そうな顔で依頼ボードを見ていた。その隣でミルミアは、依頼ボードを睨んでいる。
「どうせやるなら、討伐系が良いわよね」
「あ、ならこれはどうですか?」
リンナは一枚の紙を取り、二人に見せる。
「何々? オルドラン村付近の森に発生するマスターウルフの一〇匹討伐。報酬は六〇パス、か。三人で分けると銀貨二枚ね。それで良いんじゃない?」
「俺も良いよ」
タイガが紙を受付に持っていき、討伐任務が始まった。
竜車を借り、リンナが操作する。この中で、竜車を扱えるのはリンナだけだった。
「そう言えば、タイガのその剣、どんな名前なの?」
一緒に荷台に乗っているミルミアが、タイガに話しかける。
「これ? 申鎮の剣」
「「さ、申鎮の剣ぃ!?」」
ミルミアと、竜車を運転するリンナが驚愕した。
「あ、あんた、もしかして騎士族?」
「いや、ただの一般市民」
一般市民と聞いて、ミルミアは固まってしまった。リンナは竜車を運転しているからタイガから分からないが、口を大きく開けていた。
「お金持ちでもなく?」
「これは不良に絡まれた時、その不良の一人が持っていてさ。そのまま俺の物にした」
そんな話をしながら、時には休憩をしてオルドラン村へと向かった。
「そういえば、マスターウルフってどんなの?」
「マスターウルフは、魔獣の中で地位の高い動物と言われています。マスターウルフが他の魔獣に指示しているらしく、危険な魔獣とも言われています」
「だから何でDランクに置くんだよ……」
タイガの質問にリンナは丁寧に答え、それにツッコむ。
「確かに地位は高いですけど、マスターウルフ自身の能力は低いみたいです。なのでDランクかと……」
「成程。人にやらせるだけやらせて、自分は高みの見物って訳か」
竜車を下りた三人は森の奥に進んでいく。
「マスターウルフの特徴は?」
「普通のウルフと違い、尾の数が多いんです」
「分かりやすくて助かるわね」
その瞬間、三匹のマスターウルフが飛び込んできた。タイガがすかさずルカを決め、三匹とも飛ばす。その瞬間にミルミアが駆け寄り、三匹斬っていく。
「ナイス! タイガ」
「おま――っ!」
ミルミアが振り向いた時、奥から来たマスターウルフに気付かず噛まれそうになる。
「サンダーボム!」
リンナがそのマスターウルフに狙いを定め、バチバチと雷を発生させている球体を飛ばす。球体に当たったマスターウルフは痺れたのと同時に爆発した。
「いいアシストだ! リンナ」
「はい!」
すると奥からぞろぞろとマスターウルフが来る。現在ミルミアが三匹、リンナが一匹倒した為、依頼達成まであと六匹となった。
「何か、一〇匹以上いない?」
タイガが呟くと、二人はコクリと頷く。じりじりと攻め寄って来たマスターウルフは一斉にタイガ達に向かって走り出した。
「行くぜ! 新魔法――ゴート」
するとタイガ達の目の前の地面が盛り上がり、土の壁が出来た。マスターウルフ達はそれを飛び越える。だが、飛び越えた先には、既に準備が整っていたタイガとミルミア。リンナは少し下がって距離を取る。
「ソード・ルカ!」
タイガが飛び越えてきたマスターウルフをソード・ルカで斬る。仕留め損ねたマスターウルフはミルミアが仕留める。
それを見た後方のマスターウルフ達は土の壁を蹴って、タイガ達を超えていく。だが、それも作戦の内だった。
「アイスニードル!」
リンナによって空中に出来た無数の氷柱がマスターウルフ達を襲う。一〇体以上もいたマスターウルフの姿はあっという間にいなくなった。
「やっと終わったか」
「依頼成功ね」
タイガとミルミアは剣を鞘に納める。タイガはマスターウルフの死体を集め、ペトラ・ビーストで燃やす。
依頼を終えた三人は王都に戻ると、ギルドに依頼達成を伝えた。
「なかなか良いパーティーじゃない。連携もバッチシだし」
「タイガさんの魔法でスムーズに事が運びました。ありがとうございます」
「いや、俺も二人がいてくれて助かった。ミルミアの剣さばきは凄くカッコよかったし、リンナの後方支援も助かった」
三人は食事をしながら、この後どうするのかを決めていた。するとタイガが何かを思い出したかのように「あっ」と呟く。
「あのさ、カリンが言ってたんだけど」
「カリンが?」
タイガの言葉に反応するミルミア。
「二人が良かったら、一緒に暮らさないかって……」
「「――え?」」
その時、二人の時間だけ止まったかのようだった。




