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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第二五話 討伐任務と同居提案

 次の日、ギルドに九時に集合したタイガ、ミルミア、リンナで依頼ボードを眺めている。ミルミア達もギルドに登録して日は浅く、ギルドカードは紫色のDランクだった。

 パーティーを組んで初めての依頼の為、三人共ワクワクしていたが――


「タイガさん、大丈夫ですか?」

「あぁ……何とかね。ふぁ~」


 昨日、ミルミア達が帰った後、タイガはシェスカに文字の練習をお願いして見て貰っていた。

 気が付いたら日付が変わっていたらしく、寝不足の様だ。


 ――まさか、こんな規則正しい生活を送ることになるとは……


 そう思いながら、眠そうな顔で依頼ボードを見ていた。その隣でミルミアは、依頼ボードを睨んでいる。


「どうせやるなら、討伐系が良いわよね」

「あ、ならこれはどうですか?」


 リンナは一枚の紙を取り、二人に見せる。


「何々? オルドラン村付近の森に発生するマスターウルフの一〇匹討伐。報酬は六〇パス、か。三人で分けると銀貨二枚ね。それで良いんじゃない?」

「俺も良いよ」


 タイガが紙を受付に持っていき、討伐任務が始まった。

 竜車を借り、リンナが操作する。この中で、竜車を扱えるのはリンナだけだった。


「そう言えば、タイガのその剣、どんな名前なの?」


 一緒に荷台に乗っているミルミアが、タイガに話しかける。


「これ? 申鎮(さるしげ)(つるぎ)

「「さ、申鎮の剣ぃ!?」」


 ミルミアと、竜車を運転するリンナが驚愕した。


「あ、あんた、もしかして騎士族?」

「いや、ただの一般市民」


 一般市民と聞いて、ミルミアは固まってしまった。リンナは竜車を運転しているからタイガから分からないが、口を大きく開けていた。


「お金持ちでもなく?」

「これは不良に絡まれた時、その不良の一人が持っていてさ。そのまま俺の物にした」


 そんな話をしながら、時には休憩をしてオルドラン村へと向かった。


「そういえば、マスターウルフってどんなの?」

「マスターウルフは、魔獣の中で地位の高い動物と言われています。マスターウルフが他の魔獣に指示しているらしく、危険な魔獣とも言われています」

「だから何でDランクに置くんだよ……」


 タイガの質問にリンナは丁寧に答え、それにツッコむ。


「確かに地位は高いですけど、マスターウルフ自身の能力は低いみたいです。なのでDランクかと……」

「成程。人にやらせるだけやらせて、自分は高みの見物って訳か」


 竜車を下りた三人は森の奥に進んでいく。


「マスターウルフの特徴は?」

「普通のウルフと違い、尾の数が多いんです」

「分かりやすくて助かるわね」


 その瞬間、三匹のマスターウルフが飛び込んできた。タイガがすかさずルカを決め、三匹とも飛ばす。その瞬間にミルミアが駆け寄り、三匹斬っていく。


「ナイス! タイガ」

「おま――っ!」


 ミルミアが振り向いた時、奥から来たマスターウルフに気付かず噛まれそうになる。


「サンダーボム!」


 リンナがそのマスターウルフに狙いを定め、バチバチと雷を発生させている球体を飛ばす。球体に当たったマスターウルフは痺れたのと同時に爆発した。


「いいアシストだ! リンナ」

「はい!」


 すると奥からぞろぞろとマスターウルフが来る。現在ミルミアが三匹、リンナが一匹倒した為、依頼達成まであと六匹となった。


「何か、一〇匹以上いない?」


 タイガが呟くと、二人はコクリと頷く。じりじりと攻め寄って来たマスターウルフは一斉にタイガ達に向かって走り出した。


「行くぜ! 新魔法――ゴート」


 するとタイガ達の目の前の地面が盛り上がり、土の壁が出来た。マスターウルフ達はそれを飛び越える。だが、飛び越えた先には、既に準備が整っていたタイガとミルミア。リンナは少し下がって距離を取る。


「ソード・ルカ!」


 タイガが飛び越えてきたマスターウルフをソード・ルカで斬る。仕留め損ねたマスターウルフはミルミアが仕留める。

 それを見た後方のマスターウルフ達は土の壁を蹴って、タイガ達を超えていく。だが、それも作戦の内だった。


「アイスニードル!」


 リンナによって空中に出来た無数の氷柱(つらら)がマスターウルフ達を襲う。一〇体以上もいたマスターウルフの姿はあっという間にいなくなった。


「やっと終わったか」

「依頼成功ね」


 タイガとミルミアは剣を鞘に納める。タイガはマスターウルフの死体を集め、ペトラ・ビーストで燃やす。

 依頼を終えた三人は王都に戻ると、ギルドに依頼達成を伝えた。


「なかなか良いパーティーじゃない。連携もバッチシだし」

「タイガさんの魔法でスムーズに事が運びました。ありがとうございます」

「いや、俺も二人がいてくれて助かった。ミルミアの剣さばきは凄くカッコよかったし、リンナの後方支援も助かった」


 三人は食事をしながら、この後どうするのかを決めていた。するとタイガが何かを思い出したかのように「あっ」と呟く。


「あのさ、カリンが言ってたんだけど」

「カリンが?」


 タイガの言葉に反応するミルミア。


「二人が良かったら、一緒に暮らさないかって……」

「「――え?」」


 その時、二人の時間だけ止まったかのようだった。

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