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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第二二話 魔剣士と新機能

「ここがギルドです」


 カリンに連れられる事二五分。(ようや)くギルドに着いた二人は、中に入っていく。

 中には沢山の人がいて、魔法使いの恰好をしていたり、剣士のような人が居たりで賑わっていた。タイガはカリンにロビーで待ってて貰い、一人で受付に向かった。


「いらっしゃい! 今回はどういったご用件で?」


 とても元気が良く、はきはきと喋る女性が受付の対応をしており、タイガに話かけた。


「あの、ギルドに登録したいんですけど」

「新規入会か! ちょっと待ってて!」


 そう言って女性は受付の奥に行ってしまった。二分後、紙を何枚か持ってきて戻って来る。


「お待たせ、これが誓約書と登録申込書だよ。ちゃんと読んで、その上で記入してね」


 受付の女性――セリウドはタイガに紙を渡して、他の冒険者の対応をしていた。

 近くの机で誓約書を読む。個人情報は漏らさない、命は保証しない等々色々書かれてた。そしてペンを持った時、タイガは固まってしまった。


 ――やばい……。俺、字ぃ書けねぇじゃん……


 暫く悩んだタイガは、カリンの下に行く。


「どうしたんですか? タイガ」


 言いたくても、言葉が詰まって中々言い出せない。だが覚悟を決め、カリンに打ち明けた。


「俺、字が書けないから……代わりに書いて貰えませんか……?」

「はい! 大丈夫ですよ!」


 カリンは笑顔で対応してくれた。

 カリンに登録用紙を渡し、名前を書いて貰う。書いてある事は読めるのだが、書く事が出来ない為、字が綺麗なのかも分からない。名前を書いて貰ったカリンから用紙を受け取って受付に行こうとすると、カリンも付いて行くと言って付いて来た。

 受付のセリウドが用紙を受け取り、確認した。


「ヤマト・タイガ君ね。希望の職種ある?」

「職種? 職種なんてあるんすか?」

騎士(ナイト)魔法使い(ウィザード)、忍者と色々あるよ」


 タイガは職種の一覧を見て、「う~ん」と唸っていた。タイガに適しているのは、剣士か魔法使い。この世界に来て、突然上手くなった剣術に闇以外の属性を持つタイガ。正直どれがカッコいいか悩んでいた。カリンはそんなタイガを見て、セリウドに質問した。


「職種って一つしか選べないんですか?」

「基本そうだよ。タイガ君は剣も持っているし、騎士の方がピッタリだと思うけど……」


 元々、タイガの服は剣術を使う為に動きやすい服を選んで今の恰好になっている。周りから見ると、とても素人剣士には見えない。


「実は俺、魔法も使えるんですよ」

「え!? 魔剣士(ミスティックナイト)なの!?」


 セリウドは目を見開いて驚いていた。魔剣士とはその名の通り、魔法と剣士の使い手である。


「魔剣士って、そんなに珍しいの?」

「はい。タイガに言っていなかったのですが、魔剣士は限られた人にしか使えません。例えば、ご両親の片方が魔法使い、もう片方が騎士でしたり。貴族の生まれでしたり。後は、ガリルとは別に、何かを持ってる場合もあります……」


 その時のカリンの顔は、何か複雑そうだった。カリンの表情を見てタイガは、聞きたい話ではあるが今は聞かなくても良いだろうと思い、魔剣士を職種にした。


「これがギルドカード。無くしたら再発行で二〇パス頂くから気を付けてね」


 そう言われて、タイガは紫色のカードを渡される。色はギルドプレイヤーのランクを表している。紫はDランク、黄はCランク、青はBランク、赤はAランク、白はSランク、金はS⁺ランクだ。そして依頼だが、自分のランク以上のものは受けられないらしい。


「これからタイガ君は、この街の魔剣士になるの。様々な依頼をこなして頑張ってね。それから、くれぐれも無理しないように。命は大切にしろよな!」

「はい」

「それでは、素晴らしき魔剣士に祝福あらんことを」


 タイガ達はギルドを出て、時間を確認する。


「一五時四〇分か……。どうする? カリン」

「そうですね。屋敷の方に戻りますか。今夜の食材を序に買っておきたいですね」

「そうだな……。なぁマグナラ、お前って電話できるのか?」


 タイガはガリルを流して聞く。モニターが出てきて、意外な返答が帰って来た。


「ハイ。出来マスヨ」

「どうやって?」

「電話ヲカケタイ相手ノ名ト、ソノ方ヲ思イ浮カベテ頂ケタラ、念話デオ話ガ出来マス」


 そう書かれているのを二人は見て、そして顔を見合わせる。カリンが念話に入るには、マグナラにガリルを流せば出来るらしい。マグナラに話しかけることは出来ない為、念話限定となる。


「じゃあシェスカさんに念話するか」


 タイガはシェスカの名前と、シェスカの顔を頭の中で想像してマグナラにガリルを流す。すると、頭の中から声が聞こえた。


『な、なんですかこれは?!』

「あ、繋がった」

『た、タイガ様ですか?! どうして直接脳内に……』


 いきなりの出来事で、シェスカの声は慌ただしかった。


「今、念話で話しているんです。シェスカ、今大丈夫ですか?」

『カリン様もですか?! は、ハイ。大丈夫ですが……』


 漸く落ち着いた所で、タイガとカリンは何か必要な物がないか聞いた。『何故?』と聞かれた為、王宮に帰る途中に買って帰ると言うと、シェスカは全力で否定した。だが、タイガには諦めの悪いカリンがいるため、カリンとシェスカが話し合った結果、カリンが勝利した。


「エグルにジャギー、ニジリアとトラト、ニーマンですね。分かりました」


 カリンとシェスカの念話を聞いていたタイガの頭の中は混乱していた。


 ――ジャギーはじゃが芋だろ? エグルにニジリアってなんだ? それにトラトってまさか、赤い怪物の事じゃ……。ニーマンももしかして……


 考えていく度、タイガの顔が青くなってきた。念話を切り、目的地へと向かう。その場所を見て、タイガの予想は的中した。


「や、八百屋……」


 タイガの足の震えが尋常じゃない。


 ――やっぱり……。トラトはトマト。ニーマンはピーマンだったか……


 タイガはトマトとピーマンが大の苦手である。トマトの潰れる食感、ピーマンの苦みが苦手なのだ。カリンはそんなタイガを気にせず、どんどんカゴに入れていく。

 買い物も終わり、王宮へ帰る。その時のタイガの足取りは、とても重かった。


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