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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第二一話 恐怖と君の傍に

 仮想時刻盤『マグナラ』を手に入れたタイガ。一時涙を流していたが、今は何もない様に振舞っている。


「タイガ、今何時ですか?」

「そうだな、早速使ってみよう」


 タイガはマグナラにガリルを流し時間を聞くと、先程のバーチャルモニターが出てきた。モニターの表示に『一四時三〇分』と書かれていた。指示はタイガにしか反応しないが、モニターは誰でも見ることが出来る。周りの人は、いきなり空中に時間が出てきた事に驚いていた。

 現在、二人は王宮に向かっている。


「そういえばカリン、ここでお金を儲けるにはどうすれば良いの?」

「お金ですか? 衣食住、全て大丈夫じゃないですか。何か必要であれば、私達が出しますが……」

「待て、色々おかしい」


 今朝は何も考えていなかったタイガだが、実は一つ思い残していた。


「よくよく考えてみると、俺があの屋敷にいるのはおかしくないか? 今回は俺が気を失ってカリンのお蔭で王宮で休ませてくれたけど、俺はもう大丈夫だし、新しい宿を探すよ。それに、シェスカさんやハスキーさんに迷惑かけられないし」

「タイガは、出て行っちゃうんですか……」


 タイガの言葉にカリンは目に涙を浮かべ、今にも泣きそうだった。


「待ってくれカリン。俺は――」

「タイガなら、私の傍にいてくれると思ったのに……」


 遂に涙を流し、嗚咽し始めた。あたふたしているタイガに、ペルは声を掛けた。


「タイガ、カリンちゃんの傍にいてあげてくれないかな」

「どうして俺が」

「カリンちゃんは王である前に、一四歳の女の子だ。それに二日連続であんな怖い思いをしちゃった。君が気を失って寝ている時、カリンちゃんは凄い震えていたんだ。恐怖に駆られてね。寝るに寝れないカリンちゃんを見かねて、おいらは君の寝ている部屋にカリンちゃんを連れて行って、君の隣に寝かせてあげたんだよ。そしたら安心したのか、ぐっすり寝てたよ」

「ツッコみたい所があるが……」


 ペルとの会話で、もう一度考え始めたタイガ。


 ――ここでカリンを見放したら、あの時の二の舞になりかねない。そしたら、『アイツ等』の二の舞になっちまう……。そんな結果、俺は望んでない! なら、答えは一つしかねぇじゃねぇか!


 タイガはカリンに近付き、カリンの手をそれぞれ持った。


「カリン、俺が悪かった。俺はお前の傍にいるから」

「本当、ですか……?」


 涙をボロボロこぼすカリンがタイガを見上げる。そんなカリンの目を真っ直ぐ見て、タイガは答えた。


「あぁ。もう出て行くとか言わない。お前の傍にいる。だからもう泣かないでくれ。可愛い顔が台無しだぞ」


 そして、カリンの頭を優しく撫でる。

 カリンはまた涙を流し、タイガに抱き着いた。タイガも、優しくカリンに抱き締める。


 ――こうやってカリンに抱き締められるのは二回目だな……


 カリンが泣き止むまで、タイガはずっと抱きしめていた。


「それで、どうしてお金が必要なんですか?」


 暫くして落ち着いたカリンは、タイガと一緒に近くのベンチに座った。


「いや、これから生活していく上で何かと必要になるだろ? 例えば、武器の手入れする道具とか、新しいのを買うとか……」

「ですが、それでしたらこちらで払いますのに」


 カリンは納得しないような面持ちをしていた。


「それはありがたいけど、何でもカリン任せにしたら意味ないだろ? 自分の事は自分でしなきゃ」

「とても素敵な志ですね」


 ようやく納得したのか、普段の優しいカリンの面持ちに変わった。

 カリンはタイガにマップを出してもらい、モニターをスライドさせる。すると指の動きに合わせて、マップも動く。そしてカリンは一つの建物を指さした。


「ここは『ギルド』って言って、依頼をこなしてお金をもらう施設です。ギルドに登録すれば、様々な依頼を受けることが出来ます」


 カリンに説明してもらい、ギルドに向かって歩いて行った。途中、道行く人々に見られていたが、タイガは気にせず先を歩く。

 因みに人々が見ていたのは、カリンとタイガが手を繋いで街を歩いていた所だった。


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