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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第二章 異世界生活
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第一八話 魔法と性質

 カリンも朝食を食べ終え、王室に戻って来た。先程と同じ様に座ると、ペルが部屋に備え付けられている止まり木に止まった。


「それでペル、俺をここで待機させたのは何か話すことがあるからだろ?」

「凄いねタイガ! その通りだよ」


 タイガは少し緊張していた。一体何の話をするのか。ここに来てからまだ日は浅い。その為、聞かれたことを全部答えられる自信がない。そういう意味で緊張していた。


「タイガは、ここの生まれじゃないんですよね?」


 まずカリンが質問する。この言葉にタイガは首を縦に振ると、続けてカリンが質問してきた。


「タイガはどうやって魔法を覚えたんですか?」


 いきなり答えづらい質問をしてきたタイガは言葉を詰まらせる。だが、ここで黙り込んでしまえば怪しまれてしまうと思い、タイガは『ここにどうやって来たか』という事と、まだ確証はない『予知夢』以外、全部話した。


「初めて魔法を使ったのは、カリンと初めて会った時だ。カリンに飛び道具が当たると思って、諦めかけた時に突然頭の中から『ルカ』という単語が出てきたんだ。それを唱えたら急に俺から風が出て、カリンに当たるはずだった手裏剣が吹っ飛んで行った。『クリアガービル』もそうだ。今まで使ってきた魔法は全部、頭の中に出てきたんだよ」

「なるほど……」


 カリンは顎に手を当てて呟く。

 暫く黙った後、カリンがまた質問してきた。


「タイガは『ガリル』を知っていますか?」

「確か、魔法を使うために、体内に宿っている魔力の事だよな」


 タイガはメイドのシェスカの話を思い出しながら説明していく。


「はい。ガリルにはそれぞれ性質があって、その性質しか魔法は使えないんです」

「例えば、俺のガリルに火の性質が無かったら、火の魔法を習得できないって事か」


 カリンはタイガの言葉に静かに頷く。


「ガリルの種類は火・水・風・土・光・闇の全部で六種類あります」


 ガリルの種類を聞いた時、タイガはふと疑問に思った。タイガが使っているクリアガービル、つまり雷が無かった。


「タイガが使っている雷は、光魔法の性質を変化させたものです。他にも、回復魔法がありますし」

「回復魔法も光魔法だったんだ」


 そしてカリンは説明した。魔法にもそれぞれ、効果の強い弱いがあると。


「水は火に強く、火は風に強く、風は光である雷に強く、雷は土に強く、土は水に強いというサイクルが出来ます。そして、光と闇はそれぞれ効果大になるんです」


 カリンは紙に、今説明した性質を書いてタイガに見せる。

 タイガはそれを手に取り、今の自分の状況を整理した。


「今俺が使えるのは風・光・火か」

「タイガ、火も使えるのですか?」

「あぁ。ウリドラの幻術にかかっていた時に、使えた。それも、さっき言ったように脳内でな」


 幻術で何が起きたのかカリンに話し、説明した。するとカリンは突然立ち上がり、窓を背にしている机の引き出しを開けて六枚の紙を取る。色は赤、青、黄土(おうど)、緑、黄色、黒の六色だった。


「その紙は?」

「これはガリルの性質を調べる紙です。一枚ずつ手に取って、紙に向かってガリルを流し込みます。赤は火、青は水、黄土は土、緑は風、黄は光、黒は闇の性質を持っています」


 カリンは黄色の紙を持つと、突然優しく光り出した。


「ガリルを流し込んだ時、その紙が光ればその性質のガリルを持っていることになります」


 次は青の――水性質の紙を持っても、何も反応しなかった。


「逆に、反応を示さなかった場合、その性質は持っていないことになります」


 カリンは紙から手を放し、タイガの前に置く。


「やってみて下さい」

「あ、あぁ」


 タイガはまず、緑の紙を手に取り、ガリルを流し込む。すると、先程のカリンとは比べられない程、強い光を放った。タイガは思わず手を放してしまい、紙が下に落ちる。


「な、なんか光強くなかった……?」

「そ、それ程風のガリルが強いという事でしょう。さて、続けましょうか」


 二人とも紙にたじろいでしまったが、気を取り直して調べ始めた。

 数分後……


「ど、どうなってんの……?」

「こちらが聞きたいです……」

「タイガ、何者?」


 調べた所、黒以外の紙が反応して、最初の風の性質程の光を放った。最初は興味本位で見ていたペルも、徐々に目を見開いて言葉を失っていた。


「と、とりあえずタイガの性質は分かりました。これから――」

「ちょ、ちょっと待って」


 タイガはカリンの話を遮る。


「闇魔法ってさ、確かペルみたいな使い魔と契約できるんだよね? 俺この間ペルと契約できたんだけど」


 ウリドラとの戦い前、確かにタイガとペルは契約した。それを思い出したタイガは、自分も闇魔法を持っているのではないかと訴える。

 その疑問に答えたのはペルだった。


「ちょっと違うな。確かに、おいらとタイガは契約できたけど、あれは『レンタルビルド』って言うんだ」

「れんたるびでお?」


 聞き返したのはタイガでは無く、カリンだった。


「何でお前が知らないんだよ。それにレンタルビデオって……。で?」

「『レンタルビルド』は契約者とは別の人と、一時的に契約すること。解約はおいら達使い魔――つまり召喚獣の判断で出来るんだ。一応、タイガとの契約は維持されているけど……どうする?」

「それはまた後でいいよ。それで、レンタルビルドとの違いは?」

「召喚獣って言うのはね、闇魔法で召喚されるんだ」


 ペルの話によると、『レンタルビルド』は召喚獣が許した相手なら誰でも出来る。だが、自分専用の使い魔を召喚するには、闇魔法で召喚しなければならないとの事。つまり、闇性質のガリルを持っていないタイガは召喚することが出来ず、自分専用の使い魔を持つことが出来ない。

 それを聞いたタイガは、ガックリと項垂れた。


「レンタルビルドの期間は?」

「最長で五〇時間。タイガはあと一三時間残っているけど……」

「その一時的を永遠にするには?」

「それはおいらじゃなくて、カリンちゃんと契約しないといけない。まぁ、それはちょっと厳しいけど……」

「何で?」

「それはおいらの口からは言えないなー」


 二人で会話しているのを見て痺れを切らしたカリンは、二人に割って入って来た。


「もう! 二人して難しい話して、私を無視しないで下さいよ! 私も入れて下さい!」

「難しい話って……。ペルの契約者っていうか、召喚獣を使えるのに何でそんなことも知らないんだよ。こんなので王様やって行けてんのかよ……」

「カリンちゃんはバカだからしょうがないんだよ」

「あ! ペルまたバカって言いましたね!? 今日こそ許しませんから!」


 一人と一匹の光景を見て、タイガは一人微笑んだ。

 そっと部屋を出て庭に出ると、芝生に寝っ転がって雲一つない空を見る。


「ここに来て、案外良かったのかもな」


 一人呟き、あまりの気持ちよさに眠気が襲ってきた為、素直に目を閉じた。


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