第一七話 女王と朝食
立派なドアを開けた先にはドルメサ王国の国王――カリンがいた。
「やっぱり、カリンが国王だったんだな」
「え? 知ってたんですか?」
タイガの反応に、カリンは驚く。タイガには、自分が王様なんて一言も言っていないのに、何故か知っていた様な口ぶりだったのだから。
「いや、さっきのメイド――シェスカさんだっけか? その人と話して何となくそうかなって思ったんだよ。それにノックの時、カリン様って言ってたしな」
「やっぱり、タイガは凄いですね。短時間でここまでの思考力は、滅多にいませんよ」
太陽みたいに眩しい笑顔でタイガに言う。その笑顔にタイガは少し見惚れてしまい、頬を少し紅く染める。シェスカは失礼しますと部屋を出ていき、今はタイガとカリンの二人きりだった。
タイガは何か気を紛らわそうと、カリンに声をかける。
「そ、そういえば、俺ってどの位寝てたの? 記憶が正しければ、傷だらけでウリドラと闘って気を失った筈なんだけど……」
「タイガは丸一日寝ていました。余程疲れていたようですね。まぁ、魔王の手下相手にあそこまでやったのですから、本当はもっと寝ていてもおかしくないんですけど……。タイガは回復も早いのですね」
――いや、回復が早いなんて初耳だよ。しかも一日中寝ていたなんて……。まぁ、向こうではあまり寝ていなかったから丁度良いか。
日本にいた頃はずっとゲームばかりしていて寝不足だったタイガにとって、良い休息が取れた。因みに、傷はカリンが回復魔法のヒール・ゴアで治した。
カリンとタイガが対面でソファーに座ると、丁度良くシェスカが入ってきて、紅茶を注ぐ。二人分のティーカップに紅茶を注ぐと、また失礼しますと言って部屋を出ていった。
タイガは一口紅茶を含むと、「美味しい」と小さく呟きティーカップを置く。
「カリンが女王様だから、俺も『国王様』とか『カリン様』って呼んだ方が良いのか?」
「いいえ。タイガはそのまま『カリン』と呼んで下さい。私にとっては、初めて出来た友人なので」
「初めて?」
初めてという言葉に疑問を抱き、カリンに聞き直してしまう。カリンは少し悲しそうな顔をして頷いた。これ以上詮索は止めようと、タイガが何か話題を変えようとした時、カリンの使い魔、ペルが起きてカリンの肩に止まった。
「ふぁ~……。おはよう、カリンちゃん」
「おはようペル。いい朝ね」
「タイガもおはよう」
「あ、あぁ。おはよう」
タイガは少しフリーズしてしまった。理由の一つは、家族以外の人に「おはよう」と言った事。そして――
「カラスって、欠伸するんだ……」
鳥でも欠伸をする事に一番驚いていた。
シェスカに朝食の準備が出来たと言われ、二人と一匹で部屋を出て食堂に向かった。途中で執事のハスキーさんに出会い、タイガはここまで運んでくれた事をお礼した。食堂に着き、入ると部屋が物凄く広く、テーブルの上にはスクランブルエッグにウィンナー、サラダに食パン二枚、イチゴジャムが置いてあった。
――やっぱり、王族となると、朝飯も豪華に見えるな。
偏った食生活を送って来たタイガにとって、久々にしっかりとした食事に感動していた。
――今思えば、ここで食べる朝食は初めてだな。前はカリンが連れ去られたから食えなかったし、丸一日寝てたし。
そう思いながらタイガは椅子に座った。座ったのはカリンとタイガだけ。他の人は? と聞くと既に食べたらしい。ここの使用人はカリンより早めに食べて、仕事にかかるそうだ。
「久々の飯だ。いただき……」
「待ってタイガ。お祈りしないと」
タイガがいただきますと言おうとした時にカリンに遮られる。そしてカリンは胸の前に手を組み、目を瞑った。タイガもカリンの真似をする。
「この世界における生物たちよ。我が命に変わらん事を感謝いたす。汝らの命、無駄にせんことをここに契る。今日までありがとう。汝らの来世に、祝福あらんことを」
お祈り中、タイガはチラチラと薄眼でカリンを見て、いつ目を開けていいか窺っていた。そしてお祈りが終わったのか、カリンが目を開け、手を解き、ナイフとフォークを手にして食べ始めた。タイガも目を開け、静かに「いただきます」と言って食べ始める。最初は食パンもナイフとフォークで食べているカリンに驚いたタイガだったが、行儀の悪い事は出来ない為、カリンの真似をして食べていた。
食事中は静かだった。食べる前、ペルから食事中は黙っているように言われ、二人とも無言だった。
タイガは先に食べ終わってしまい、どうすればいいか迷っていた。するとペルの声が聞こえ、食べ終わったらそのまま部屋を出ていいと言われ、立ち上がり部屋を出ようとする。そしてペルにさっきの部屋で待っているように言われ、タイガは王室に戻っていった。
「こういう時、ペルって便利だよな~」
一人廊下で呟きながら、王室に入っていった。




