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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第一章 異世界転移
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第一二話 最強幻術と変わり果てた世界

少々残酷な描写あり

「面倒だな。しょうがねぇ、ここで眠ってもらうか」


 ウリドラがそう言った瞬間、タイガの視界がグニャリと歪んだ。


「まずい! タイガ! 目と耳を塞ぐんだ!」


 ペルが言うも、タイガには聞こえずその場に倒れてしまった。そして、ピクリともしない。まだぼんやりと意識が残っているタイガは――


「お休み、坊や」


 その言葉を最後に、眠ってしまった。



「んっ……ん? ここは……」


 タイガが目を覚まし、起き上がる。すると、そこは先程いた更地ではなかった。周りを見ると、高い建物が沢山建っていて、竜車ではなく機械が走っている。所々に赤・黄・緑の三色で光っている物がある。その光景は、タイガの見たことのある光景だった。


「日本……?」


 ここが日本だと分かった所で、歩き始める。場所はタイガの地元のコンビニ付近。母校があり、平日なのか校庭で運動している姿が見えた。周りは何も変わっていない。まさに、タイガの故郷そのままだった。


 ――あれは夢だったのか? いや、夢にしては現実味がありすぎた。カリンと出会って、カリンと食事して、買い物して……そして……


 タイガは右頬をそっと触る。


 ――傷口は無いが、あの時の痛みは夢ではありえない。もしかして、帰って来たとか……


 家に辿り着き、玄関を開ける。ドアは普通に開き、別の世界とかにも通じている訳でもなく、タイガが住んでいた家に間違いなかった。


「た、ただいま~」


 タイガは小さな声でそっと言う。するとリビングの方から足音が聞こえた。


「あらタイガ、お帰りなさい」

「た、ただいま……」


 迎えに来てくれたのは、母親だった。ピンクのエプロン姿をしていて、笑っている母親を見てタイガは違和感を覚えた。


 ――なんだろう……何かおかしい。言葉に表せないけど、長年暮らしてきたから分かる。


 タイガはその違和感を心にしまいながら、他愛もない会話を始める。その光景は、仲の良い家族にしか見えない。

 タイガは一度部屋に戻り、久々にPCゲームをやる。セーブデータもちゃんと残っており、部屋の風景も何にも変わってない。タイガは昼間までの事を忘れ、ずっとゲームに夢中になってた。ネットワークバトルをしたり、パーティーを組んで敵を倒したり、今までと何ら変わりない生活に戻っていった。

 一九時を過ぎたころ、下から母親の声が聞こえて、タイガはリビングに向かう。だが、階段を下りる途中にまた違和感があった。


 ――何でこんなに血生臭いんだ……?


 階段を下りて右手には、両親の寝室がある。玄関を見ると、先程いなかった父の靴があり、恐らく寝ているんだろうと思い、寝室を開けて起こそうとした。だが開ける直前、タイガはふと、開ける手を止めた。


 ――血生臭い臭いはここから?


 気になったタイガは覚悟を決め、寝室を開けた。


 それがまずかった。


「な、なんだよ……これ」


 タイガが見た光景。それは部屋中が血で溢れ返っていた。ベッドの方を見ると、寝ていたのは父親ではなく、父親()()()()()がベッドの上にあった。

 首から上が無く、腹を切られ小腸や大腸が丸見えだった。


「お、親父……おぇぇぇぇ」


 それを見た瞬間、タイガに吐き気が襲い、その場で嘔吐してしまった。


 ――何で、何で親父が!


「あ~あ、見つかっちゃった」


 声がした方を見ると、包丁を持った身体中に血を浴びている母親の姿があった。


「か、母さん……」

「何で見ちゃうかな……母さん、悲しいよ。だって――」


 母親が急にタイガに攻めより、包丁で刺そうとする。タイガは先程の嘔吐で少し体力は落ちたが、近くにあった椅子で包丁を防ぐ。


「貴方を殺さなくてはいけないんだから」


 彼女の目に光は無かった。ただただ包丁を振り回すだけ。タイガも対抗しようと、寝室を出てリビングに行き、包丁を手にする。そこでタイガは、台所に自分の父親の頭が転がっているのを見てしまい、嘔吐する。さらにテーブルの上にあった、夕食で食べるのであろうおかずを見る。そこには何も調理されていない肝臓や睾丸など、人体に関係する臓器が沢山並んでいた。


「タイガ……今日のおかずはお父さんよ……おいしくいただきましょう」


 リビングに入って来た母親に、不意をついてキッチンの物を色々投げる。母親は怯み、タイガは今のうちにと、気が引けるが包丁で母親の左胸を刺す。

 悶えている間に、蔵の方に行き、祖父が遺した大刀を手に取り、家を出る。


「マジかよ……」


 大和家を出ると、街は火の海だった。消防車も来る気配がない。それよか、人っ子一人いない。タイガは走り、誰でもいいから人を探していた。

 母校の如月中に着くと、校門で一人佇んでいる女の子がいた。タイガはやっと見つけたと思い、その子に近寄る。


「あの――っ!!」


 声を掛けようとした瞬間、突然刃物を振り回してきた。タイガはそれを避け、距離を取る。すると後ろからも気配を感じ咄嗟に避けると、先程の包丁が刺さったままの母親が、完全に自我を失って刃物を振り回す。タイガは周りを見ると、全員自我を失ってタイガの方に近付いてきている。その中には何人か顔見知りがいた。だがタイガは手段を選ばす、相手に向かって行った。


「クリアガービル!」


 雷の魔法を大刀に流し、斬っていくと身体が真っ二つになった。やったかと思ったが、次第に離れた身体がくっつき、元に戻る。


「まさか再生するとは……」


 だが道が開いたことに変わりない。タイガは彼らを無視し、先へと進んでいった。



「ふっふっふ……どんどん溺れるがいい……その恐怖に」

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