序章
広大な海。人間たちが知らない所で人間界侵略作戦が計画されていた。
サメ=全て人を襲う害獣=だから無差別に殺してよい
という人間の思想が原因で人を食わずに平和に暮らしていたサメたちも何匹も殺されていった。
結果、家族や友人を理不尽に殺された復讐心に囚われたサメたちが立ち上がろうとしたのである。
しかし一部のサメたちは「自分たちだって生きるために他の魚を食い殺している。人間たちも生きる為に仕方なく殺しているのだろう。生態系とはそういうものだ」という事を言ったり、「一部の人食いサメが原因でサメ族が悪とみられてしまうのも仕方ない。そして人間皆全てがサメを悪だと思っているわけではないはず。たまたまこの海に来る人間が悪いやつだっただけだろう。ヒト族もサメ族もどっちもどっちだ」な事を言うサメもいた。
結果、人間擁護派のサメと人間殲滅派のサメの戦いが始まった。最初は言論での戦いだったが、一向に決着がつかず、結果己の肉体を使った戦いに発展。
皮肉にも、人間の手ではなくサメたちの自らの手でサメ族を大幅に減らす原因になってしまった。
そして、擁護派、殲滅派共に同族に対する復讐心が芽生えていった・・・。
数年後、人間及び同族に対する復讐心を糧に両派のサメたちは地上での呼吸方法を会得した上に脅威のテクノロジーにより人間に近い体を手に入れ「魚人」となった。最初は5本指の手や今までなかった脚部の扱いに慣れなかったが、執念で慣れていき、「グーで殴る」「物を蹴り飛ばす」といった動作から「箸を丁寧に使う」「長時間片足立ち」が出来るようにまでなっていった。一部の落ちこぼれは脱落したようだがね。人間界でもできる人間もいれば出来ない人間もいるんだから、サメ界も同じなのさ。
だがその「サメをそのまま人間体系にした」姿ではあまりにも不審過ぎる姿である為(完全にヒーロー物の悪の怪人)これまた脅威のテクノロジーで「人に擬態する」能力を使って人間世界に溶け込んでいた。
しかし「人間語」を話す事(書く事は可能。発声器官の問題で喋る事が難しいらしい)が出来た者は少なかったようで、ほとんどは陸上でも仲間内では「サメ語」を使用していた。
その為、人間界に潜伏している彼らは普通の人間相手には言葉を使用せず「首を振る」やレクチャーで対応していた。
ほら、周りにもいるだろ?すごい無口な人。挨拶しても会釈しか返さない人。質問しても返事しない人。
ひょっとしたらサメ族かもしれないね?
そして殲滅派サメ族が人間界に潜伏してから数か月後、擁護派のサメ族の若き戦士が人間界に送られた。
サメ同士の争いにより両親を殲滅派に殺されたオスであり、復讐の為に殲滅派サメ族と戦う事を決意したオスだった。
彼の名は「シャークサバーカ」。