19話 三ヶ月の成果
割と、難航しました。どう書いてもヴェルメリオが主人公になります。誰か助けて
幹部になると決めてから、セイラの部隊に任務はなく、誠十朗は三ヶ月間ひたすら修行に明け暮れていた。
そして今日も誠十朗は一人、能力の修行に励む。
「"弾" 」
その言葉に呼応して、誠十朗の闇の一部が弾丸のように射出される。
「"雨"」
次は闇から大きめの"弾"が上空に向け、射出されそれが空中で弾けたかと思うと誠十朗を避けて"弾"が雨のように降り注いだ。
以前の三ヶ月間前の誠十朗であれば、"弾"は手を銃身のように射出する方向に向けなれば使えなかったが、現在の誠十朗は言葉による能力の発動の仕方を会得していた。
それは、少し前にふらりと訓練している誠十朗の下へ現れたドクターが言う"手を向けると撃つ場所が分かってしまうから、能力はイメージによる発動が好ましいね。言葉をイメージの補助に使ってもいい、技名というやつだよ"そんな言葉で会得することを決意しそれを実行出来たのだ。
"雨"はセイラと戦った時に使われたナイフの雨を自身でアレンジして、能力で発動している。それもドクターの"人の能力を参考にするといい"という言葉で実現した。
この三ヶ月でドクターの印象はがらりと変わり、誠十朗にとって能力を使うための師匠と呼べる存在となっている。
「"吸"」
誠十朗の体に寄り添う闇ではなく、誠十朗が"弾"と"雨"で使った闇が誠十朗の下へ戻ってくる。誠十朗から一定の距離が離れていなければ、闇はそこに存在して回収出来るということが訓練の中で分かったのだ。
"吸"を発動することによって、誠十朗の限りある闇を再利用出来るようになった。
「"操"」
背中側の腰に闇で固定してあるトマホークを取り、闇を纏わせると刃の部分が延長しているようになった。そしてそれは、錯覚ではなく実際にその分切れ味が増して大きい刃を成していることを誠十朗は知っている。
いつものように、誠十朗は闇に強化されたそれを一通り振るい、闇を伸ばして人ほどの高さを象らせて、それを的にし投擲で命中させる訓練を済ませた。
「ふぅ、今日はここまでにするか」
戦闘訓練室から誠十朗は出て、自身の個室へと向かう。誠十朗はこの三ヶ月で悪の組織での生活に馴染んでいた。毎朝、能力の操作を修行しその後は風呂に入り汗を流して、服を着替えて飯を食べて修行する。
外界から閉ざされた娯楽に乏しい悪の組織では、任務で外に出なければやれることがなく、誠十朗は修行で自身の能力への知識を高め続けた。
しかし、今日はそんないつも通りとは少し違った。誠十朗が風呂から出て部屋で寛いでいるとノックもなくドクが入ってきたのだ。
「この三ヶ月俺に顔見せなかった先輩が何しに来たんだ?」
「顔を見せるも何も、俺はてめえの幸薄そうなクソみてーな面見るのは吐き気を催すからな。用がなきゃ来ねえよ」
「じゃあ、何かの用で来たのか?」
「おう、任務だ。二秒で姉さんの作戦室へ来い、分かったな! オォン!」
「ガンつけんな、チビ」
ムキー! と怒り狂うドクを置いて誠十朗は三ヶ月振りの任務に人を殺すという憂鬱と自身の力を試せるという興奮を持って作戦室に歩き出す。
「来たわね、悪餓鬼」
「シロさん、修行お疲れ様っすー!」
「ドクくんも呼んできてくれてありがとう」
「ちっ今度からお前が迎えに行けよ! バック!」
「ははは、検討しておくよ。そしてシロくんおはよう」
「ああ、おはよう皆」
誠十朗が作戦室へ入ると既に戦闘服のスーツへ着替えている三人が迎えた。誠十朗も軽く挨拶を済ましてスーツに着替えると任務前のブリーフィングが始まる。
「今回の任務は、二席のヴェルメリオとの合同任務よ。想像生物の寄子である組織の殲滅が目的。手当り次第に能力者を集めてぶくぶくと太った組織のダイエットを手伝おうという善意ある任務よ。その為に能力者との戦闘も予想されるからそのつもりでいなさい」
「姉さん、何でそんなダル……大変そうな仕事が俺たちに回ってきたんだ?」
「さあ、戦闘力では最強の二席に付けるのは最弱の十席の部隊でいいというボスの意向かしらね」
「ひえー、大変っすねえ」
「それで、隊長二席とは何処で落ち合うので?」
「二席とは、現地集合よ想像生物の寄子の組織"右前足"は能力者十五人で構成されていて港の倉庫で、魔物を輸入して手に入れてるらしいから魔物も殺しなさい」
「魔物か、見たことないな」
誠十朗が魔物を見たことがないのも無理がない。何故なら、魔物や大規模なヒーローと悪の組織の戦闘が行われた際には警報が鳴り近くの人はシェルターに入る権利を持っている。
余談だが、戦闘訓練室と上記にあげたシェルターはNYBと同質の素材で出来ている。それにより戦闘訓練室は能力による破壊は不可、シェルターも能力の発動阻害しているのだ。
「悪餓鬼が知らないのも無理ないわ。戦えとは言わないから、一つ心構えだけしておきなさい」
「なんだ?」
「魔物は決して動物なんかではないわ。 犬や猫とは違うってことを覚えておくことよ」
「ああ、流石に俺だって魔物は化け物ってことは知ってるさ。ま、見たことはないがな」
そんな呑気な返事をする誠十朗に若干の不安をセイラは覚えるも、作戦決行の合図を出す。
「まずは、港に向かうわ。任務開始よ」
四人の返事が室内に反響した。
■
港の潮風が誠十朗の頬をくすぐり、通り抜けていく。
誠十朗の目の前には、日中に関わらず人気のない港の倉庫街と港にはそぐわない数十人の男達が取引を交わしていた。
「話に聞いていた通りっすね。日本人の方は十五人程で取引相手は中国人系のマフィアっぽいっす、こっちは目測三十人程度っすよ」
「私達はヴェルメリオの襲撃に合わせて行動するわよ」
「ああ、分かった」
「分かりましたよ! 姉さん」
「こらドクくん、もう少し音量を落として」
そして、誠十朗達の目の前の取引現場に黒い鬼の面を付けた赤髪が倉庫の上から飛び降りて凄まじい衝撃をもって着地した。石で作られた地面は割れ、土埃を払いヴェルメリオは眼前敵を見て笑う。
「てめえら全員地獄送りだぜ」
「……ッ! は、破壊王だ! dead laughが攻めてきたぞおおおおおお!」
その声と同時に誠十朗達も逃げようとする中国人系マフィアを殺して現れる。
「相変わらず、派手ねヴェルメリオ」
「当たり前だ、俺は主人公だからな」
能力が飛び交い、それでもdead laughには一撃も与えれずマフィアが一人二人と数を減らしていくのを見て、想像生物の"右前足"が黙っているはずもなく、それは起こった。
「やってくれたな、dead laugh……! 位置指定!!」
ヴェルメリオを残して、セイラ達五人の姿が消える。
「その他五人は他の奴にやらせるが、貴様だけはこの手でぶち殺してやるぞ破壊王ッ!!」
ヴェルメリオは自身を囲む"右前足"の能力者と中国人系マフィアを見て、やはり笑った。
ヴェルメリオにとって、多勢に無勢は当たり前。彼は破壊王、ただ破壊するだけだ、彼の辞書には敗北の二文字はない。
「ふっモテる男は困るな、安心しろ俺は平等だ。すべからく全員ぶっ壊してやるよ」
「死ねええええええええ!!!」
そしてそれぞれの戦いが始まる。




