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プラスティックロマンス

作者: 瀬川潮

「ロマンティックな夜に」

 窓際に座るカップルがチンとワイングラスを合わせる。二つの深紅が揺らぐ窓の外、淡い街灯の通りを黒い人影が疾駆する。相貌白く口は紅。警官隊が影を追う。走り過ぎた後、通りの奥のショウウインドウでピエロ人形が笑った。

 と、ピエロを見ていた黒背広に丸つば帽子の人物が振り向いた。白い相貌に赤い口がニタリ。通りを警官隊と別方向に。

 やがて影のような黒背広は別のショウウインドウへ。中には目を伏せたまま薄衣と輝石をまとう黒い長髪のマネキン。影が黒手袋で窓に触れるとたちまち回転扉に。

 くるり、くるりと窓の外。その時には警官隊が十重二十重。

 マネキンをくの字に抱いた紅の唇はニタリ。黒い靴を脱ぐとジェット推進で流れ星。マネキンにキスをすると伏し目がぱちり。

「ホホホホホ」

 高い声は風に消えるも背後のネオンが「ホホホホホ」。

「ホホホホホ」

 と、ネオンの見えるホテルの一室。

 チンと朱に揺らぐグラスが合わさる。薄衣の女性は赤い唇をニタリ。胸元には輝石。

「プラスティックな夜に」

 ワインを干すと目の前に座る黒背広の丸つば帽子を取る。

 ばさりと夜のような長髪がこぼれた。

 伏し目の黒服はキスをねだろうにももう動けない。



   おしまい

 ふらっと、瀨川です。


 他サイトのタイトル競作に出展した旧作品です。2006年作品。

 宝石泥棒をテーマにしたプロモーションムービーを意識していたと思います。

 こういうタイトルなのでファッショナブルにスタイリッシュに。

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