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アスタシア王国の男装令嬢         作者: 大鳥 俊
一章:男装令嬢と「ピンクのドレスにご用心」
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☆8. 侍女マリー

手直ししました!9/12






 晴れた日の朝。

 カーテンを開け、思いっきり背伸びをした。

 その表情はここ最近みられなかった満面の笑み。


「ふふふ……」


 一人ほくそ笑むユリウス。



「ついに、遂に終わったぁー!!」



 ――そう。ユリウスは仮面舞踏会(罰ゲーム)から解放されたのだった。


 先日、不思議な言葉を掛けられた。

 その声の主が今回のターゲットだったらしいが、しかし、声をかけられたのは初めの一度きり。

 一応、その後も仮面舞踏会に参加をしていたが、やはり声の主に会う事はなく、作戦は終了となった。

 

「久々の休み! 何しよう」


(庭いじりでもいいし、犬小屋の修繕もいいな)

 

 基本は貧乏貴族である。

 自前で出来る事は何でもしないといけない為、やる事は多い。


「ああでも、久しぶりに遠乗りもいいな」

 

 ちょい、貴族らしい発言。

 間違っても刺繍がしたいとは言わない。


 部屋がノックされた。



「ユリウス様」



 声をかけて来たのはマリー。

 入室を許可すると、ゆっくりと扉を開け部屋へと入ってくる。


「マリー、今日は遠乗りか、犬小屋か、庭かどうしよか?」

 

 決めかねていたユリウスが助言を聞きたくて声をかけると、マリーは「……ユリウス様。お忘れですか?」と返してきた。



 静かに、そして少し冷たさが残るような言葉。

 マリーは何か大事な事を忘れている時にこういった言い回しをする。

 

 その事に気がついたユリウスは息を飲み、マリーの言葉を待つ。

 マリーもユリウスから回答が無い事を確認し、言う。

 


「今日は子爵令嬢とのお約束があるのでは?」



 浮かれていた気分をどん底に落とすような言葉を聞いて、ボフッとベッドに倒れ込んだ。


「…………」

「…………」


 両者沈黙。

 ユリウスは顔だけ動かし、マリーを見上げた。


「ご自分で招いてしまったとはいえ、心中をお察しします。ユリウス様」

「…………」


 一言余計だと、突っ込めない自分が悔しかった。






 ユリウスの心情は複雑だった。

 お見合いは仕方ない。

 子爵からの申し出を断るわけにはいかないから。

 だが、このデートは明らかに自分が対処を間違ったことによる副産物だった。

 令嬢に戻る予定はないが、初デートが女性。

 もはや泣くに泣けない。


(ああ、初デートはフィーとの外出にしておこう)

 

 ユリウスは心の安寧の為、無理やり過去の仕事を引っ張り出した。

 数ヶ月前にお忍びで城下に出たフィリップを護衛した時の事だ。

 もちろん、その時は男装だったが。


「…………」


 どっちにしろ、心に優しくない事を悟る。


「ユリウス様、そろそろお召し物を決めませんと」

「だって、マリー……何着て行ったらいいのかわからないよ」


 前回は屋敷に招待されたので正装に近い服装で行ったのだが、今日は散策との事。

 正装するのは合わないし、普段着というのもちょっと。


「普段着でよろしいのでは?」

「マリー……それは、まずくない? 一応デートなんだけど」

「ユリウス様はデートの際、服装を気になさるのですね。ちゃんと」


 失敬な話である。


 相手がめかし込んで来るかもしれないのに、自分があまりにくたびれていたら失礼だろうと思う。


「お付き合いを断っていただきたいのでは?」

「そうだけど」

 

くたびれた格好を晒して、振られるというのは正直悲しい。


「なんか、こう、性格の不一致的な。お互い悪くない的な断られ方をしたい」と、理想を答えたら目を細められた。無言で。

 

 マリーはふぅと溜息をつき、ユリウスの衣装棚を開ける。

 そして、普段着で一番くたびれていない服を出し、合わせる小物を用意してくれた。



「これぐらいで、どうですか?」



 組み合わせは白と黒。アクセントに、黄金色のボタンとチェーンがいくつか付いている。

 小物は若草色のスカーフ。


 ユリウスは「小物は青系の方が涼しげじゃない?」と、提案したが却下された。

 

 マリーが退室しようと扉へと向かい、途中、何かを思い出したかのように立ち止まった。



「ユリウス様、今度は殿下の護衛もきちんとした服装にしてくださいね」



 突然何を言い出すのやら。


「それこそ普段着にしないと、溶け込めない」と答えたら、溜息をつかれた。


 ……すごく不本意なんですけど。






今回もお読みいただきありがとうございます!(*^_^*)

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