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アスタシア王国の男装令嬢         作者: 大鳥 俊
三章:男装令嬢と「熱風と臆病風の吹く秋」
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1.ユリウスの気持ち


連載再開しました!!

お暇がありましたら、よろしくお願いいたします<(_ _)>ペコリ






 この間うれしい事があった。

 昇進したとかお金持ちになったとかそういった事ではないけれど。

 ずっと自分を弟分扱いしていた幼馴染みが、自分を頼ってくれたのだ。


 ハッキリと異変に気がついたのはラフィーネの一件を片づけた後ぐらい。

 ちょうど業務連絡の為、フィリップがいつものように指示部屋に来ていた時だ。


 ノックがあり返事をした自分に、ちっとも言葉をかけてこなかったあの日。

 フィリップは寝不足だと言ったけど、多分違う。そう思った。

 何か気がかりがあるように感じたので、少しでも気が晴れればと思い、屋敷に呼んでみた。


 数日ぶりに顔を合わせて、でもこんなにゆっくり話したのはもうどれぐらいぶりだろう?


 フィリップは穏やかな笑顔を浮かべつつ、でもちょっぴり意地悪な表情もしながら沢山話をする。

 とても楽しい時間だった。

 本当はフィリップの気がかりを解消する為に声をかけたのに、普通に楽しんでしまった。


 『周りが暗い方が心の内をさらけ出しやすくなる』と聞いた事があるので、本当は「今日、泊まっていく?」と言いたかった。でも、さすがにそれは言えなくて。

 子供の時みたいに枕を抱えて夜遅くまで話をしていた事が懐かしい。




 帰りがけにラッシュのところへ案内した。


 相変わらずラッシュは今日も自分を相手にしてくれず、その事実にへこんだ。しかし、フィリップを見るなり急に態度を変え、そのまま抱きついてしまう。


 悔しい。


 フィリップはもうずっとラッシュに会っていないのに。どうして、こんなに懐かれているの?

 ずるいよフィーは。わんこにまで、そんなに好かれて。

 そんな嫉妬を心の中に抱いている自分に「座りたいならこっちに座れ」と、フィリップは自身の膝を提供してくれた。


 優しいな。フィーは。

 自分まで乗っかったら重いに決まってるのに、「小枝ぐらいにしか感じない」なんて。



 …………やっぱり、私は頼りにならないのだろうか。



 いつも肝心なところで爪が甘いのか、この間は気を失ってしまうし、少し前は解術まで代行させた。

 そんな頼りない所をみせてしまっているけれど、それでも対等でありたいという気持ちは変わらない。

 だから、せめて護衛の仕事だけはと腕を磨いているが、それでも自分はいつも心配される弟分。

 もっと、しっかりしている所を見せなくては。


 そう思っていたら。


 フィリップが自分を抱き寄せて首元に顔を埋めた。

 一瞬どうしたのか分からなかったけど、まるで甘えるような仕草は頼られているのではないかと期待した。

 するとかすれた声で「ごめんな」って言ってくる。


 自分は謝られる理由なんてないから、多分「兄貴分なのに、こんな風に甘えてごめん」だと、思った。

 だから「いいよ」って答えた。

 だって、こんな不安げな表情で、自分に頼って来る事なんて。今まで、一度もなかったから。


 きっと王子であるフィリップには自分が想像できない様な重責を担っている。

 それをはけ口もなく、自分の中で消化するのは想像するより大変なんだろう。

 誰かにすがって弱音を吐きたい。そんな時もあるに決まっている。

 だから、その誰かに選ばれた事はとてもうれしかった。



 頼りにしてくれている。



 相談はしてもらえなくても。

 たとえ、今この時だけだとしても。



 ちょっとお姉さんぶって優しく髪を撫でてみた。

 手入れの行き届いた髪は柔らかく、すっきりとした柑橘系の香りがした。


 キリリとした香りの中に、少しだけ甘い香り。


 いつもは感じないこの甘さが、今日の甘えた行動をさせているのかな。


(絶対守るから)


 いつも私を支えてくれている貴方を。


 その気持ちが伝わったのか、フィリップが腕に込める力を強めた。


 ちょっと苦しくて、でも、胸元に伝わる吐息は少し熱い。

 今日はいつも兄貴面する幼馴染みの、違う一面が見られてとても嬉しい一日だった。






いつもお読みいただきまして、ありがとうございます(*^_^*)

本日(12/2)は、もう一話投稿しますので、またよろしくお願いいたします!

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