幕間:セシルの見解
短いですがおまけです(*^_^*)
セシルから見た10話の見解です。
セシルはユリウスの話を聞きながら、ニヤつくのが止められなかった。
殿下が愛称をフィルではなくフィーでいいと言った理由も、殿下自身がユウリィと呼ぶのも理由がわかったからだ。
彼女は特別なのだ。
殿下にとってそういう存在なのだろう。
前に会った時もそういう雰囲気はあったが、この事実は決定的だった。
自分だけの愛称で呼び、自分もただ一つの愛称で呼ばれる。
それは、ある種の独占欲みたいなもの。
たぶん、彼女はそれに気がついていない。
こういった独占欲を胸に秘めるのは男である場合が多いから。
(じゃあ、なんで男装なんかさせてるんだ)
これだけ仲が良いのだから、召し上げると言っても問題にはならなさそうだが。
先程からヘラの話を続けるユリウスにチラリと視線を向けると、キョトンとした顔をした。
今は女性の姿をしているから、その姿がいつもより愛らしい。
自分にもようやく馴染んだから、こんな表情を向けてくれるのだろう。
そこまで考えると、殿下の気持ちも少しわかった気がした。
(……ふうん)
あんなに余裕たっぷりな殿下が。
彼女の事になると反応が違った。
以前、森で自分を追い払った時、殿下は結構本気だったかもしれない。
恐らく彼女に対しては余裕がないのだ。
誰も近づけたくないし、殿下自身もどれぐらいまで近づいていいのかわからない。
まるで、触れれば消える雪のように、少し離れた場所から大切に守っているのであろう。
そう思うと、この状況は激しくまずい気がした。
彼女に仕事と称して私的なお願いをした。
女性で腕の立つ者と言われ、すぐにユリウスが頭に浮かんだ。
彼女は以前ゴロツキをあっさり倒していた。しかも、抜刀なんてせずに。
彼女に手紙を書き、来てくれたらいいなと、思っていたらすぐに来てくれて。
しかも、仕事を探してるなんて自分に相談までしてくれる。
殿下より先に相談されたのは結構嬉しかった。
可能性とか……ちょっとは思ったりして。
ただ今はそんな可能性がないなんて、十分に理解できている。
横恋慕なんて趣味じゃない。
セシルは冷静に自分の置かれている状況を考える。
ユリウスに――ルークから頼まれた事とはいえ――女性の姿で来てもらった。
さらに自分も一緒にラフィーネについていった。
そして、殿下は彼女に会えていないのに、自分はここ数日を除いて毎日一緒にいる……
「…………」
まずいな。コレ。
バレたら、どうなるんだ……?
セシルは冷や汗が伝うのが分かった。
「……ユリー。もし、さ。殿下にバレたら、庇ってくれるよな?」
「へ? って、バレたら私もマズイのだけど……」
どうやらお互いばれる訳にはいかないようだ。
そう思いながらも、あの余裕たっぷりな殿下をからかってみたいと思う自分は、命知らずだなと自覚した。
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