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アスタシア王国の男装令嬢         作者: 大鳥 俊
一章:男装令嬢と「ピンクのドレスにご用心」
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☆14.会話の主導権

今日はちょっと短いです(*^_^;)






「ユウリィ……なんだ、それは」



 フィリップの第一声はこれだった。



 いつもより早めに登城したユリウスはフィリップを自身の控室に呼んでいた。

 呼び出し文句は『事件について重要人物を連れて来た』と、そう伝えて。

 重要人物だと伝えておいたので、部屋に入ってくる時はそれなりの緊張感があった。


 ……が、それも一瞬の事。


 半笑いで部屋に待機していた自分を見て、怪訝(けげん)な顔つきをしたフィリップ。

 しかも部屋に『重要人物』が見当たらない。

 と、そんなところでクーウェルを見せた。すると、フィリップは驚き、第一声につながるのだが。



「なんだとは失礼な。見て分からんか」

「羽根があるな。虫か?」

「なんで、お前ら同じ発想なんだ」

「見世物にしたら、それなりに金が入るんじゃないか?」

「鬼だな、お前」



 ユリウスは口元に手を当てて必死で笑いをこらえる。

 クーウェルの素直な反応とそれに合わせてからかうフィリップ。

 フィリップが自分以外をからかっている姿など滅多に見られないので、その分余計にうれしくなる。


 しかも、どうやらクーウェルの反応はフィリップにもツボったらしい。

 手の甲で口元を隠して笑いを堪えていた。


 クーウェルがこの事件の最重要人物である事は間違いない。

 しかし、こうも存在しているだけでコミカルになってしまうのはなぜだろう。



「いいでしょ、クーは?」

「フン。からかうなユリス」



 ユリウスはまるで自分の宝物を見せびらかした気分になり、ニマニマとした笑みを隠す事ができない。

 そんなしまりのない顔のままフィリップへと視線を向けると、彼の顔からは何故か笑みが消えていた。



「……お前ら愛称で呼び合ってるのか?」



 なんだか不満をにじませた声色。

 その不満げなフィリップに首を傾げつつ、今朝話していた事をそのまま伝える。


 ユリウスは打てば響く、クーウェルの反応を気に入っていた。

 裏も表もない素直な言葉はこちらの思惑など気にしない。

 それは自分自身も思ったままを話していいと言われているようで、ついつい考えなしに言葉を発してしまう。

 ……ただ、そうしてしまうとすぐに話の本筋から外れてしまうのが難点だが。



「? なんだお前? 何怒ってる?」


「怒っていない」



 クーウェルの呼びかけに答えるフィリップは難しい顔をしていた。

 機嫌が悪い……というか、なんというか。

 まさか自分だけ仲間外れになっている気がしているのだろうか?



「いや。その表情は怒っている」

「怒っていない」

「いや、怒っている」

「しつこいぞ」

「そうか。わかったぞ」

「なにが」


 本当に怒っているなら無言を貫く事も出来るのに、フィリップはすぐ返事をしている。

 乗せられていると言うか、巻き込まれていると言うか。

 他者のペースに巻き込まれるフィリップなんて見た事がなかった。



(クーの真似してしゃべれば、自分のペースが守れるかも)



 度々フィリップに話の主導権を奪われるユリウスはそんな事を呑気に考えていた。

 しかし。



「ユリスはお前の女か。だから怒るのか」



 突然会話に巻き込まれ、「ち、ちょっと! クー!! 何言い出すの!」と、思わず声を上げる。



「ユリスはイイ女だ。ただ、暴力がすぎる。止めさせろ、お前」



 こちらの事などさっぱり気にしないで言いたい事を言うクーウェル。

 思わず、()められているのか(けな)されているのか考えてしまうが、しかし、この言葉にも字面以上の意味はないのだとすぐに思い至る。



「……ユウリィ」



 フィリップがクーウェルでなく自分を呼んだ。

 そして、ユリウスには彼が何を言いたいのかすぐに分かった。



「こいつを黙らせろ」

「了解」






 クーウェルは暴力反対と言いながら部屋を飛び回った。

 手で捕まえようにも(らち)があかないので、ユリウスは部屋に置いてあった虫とり網でクーウェルを追いかける。

 虫を捕まえる要領で振りまわしていると、何回かで捕まえる事が出来た。

 網に引っ掛かった様は可哀想だったが、妖精のくせにこんなにあっさり捕まえられていいものだろうかと、入らぬ心配をしてしまった事は心の中に留めて置く。



「ユウリィ、お前、妖精をそうやって捕まえたのか?」



 フィリップから呆れたように質問をされたが、ユリウスは昨日の顛末(てんまつ)を考え、返答に困る。



(昨日は(はた)いて、シーツに閉じ込めたよな)



 うん。

 今日の捕まえ方の方がマシかもしれない。

 そう思うと、なんとか昨日の事は美しく説明した方がいい気がした。 ……が、しかし。



「ちがう。思いっきり叩かれた」



 と、クーウェルに先を越されてしまった挙句(あげく)、「そんで、シーツでぐるぐるにされてほっぺをつねられた」と、最後まで語られてしまった。


 無言のフィリップ。

 もはや、軌道修正は出来る気がしなかった。



「……ユウリィ」

「はい」

「ちょっとやり過ぎじゃないか?」

「…………」


 クーウェル自身、ウソは言っていない。ただ、いろんな事が(はぶ)かれているのだが。

 端的に行動だけ聞くと確かにひどい、かもしれない。

 弁解しようにもなんだか蛇足の様な気がして、いい言葉が浮かばなかった。


「そう思うだろ? お前いい奴。名前は?」

「………フィリップだ」

「お前も名前長いな。リップでいいか?」

「! いや、フィルで頼む」

「わかった、フィル。俺はクーウェル。ユリスが信じているお前だから、俺も信じる」

「ありがとうクーウェル。では、早速話をきかせてくれ」


 やっとズレまくっていた話が軌道修正された。

 どうやらこの三人だと会話の主導権を握れるのはクーウェルのようだ。

 





今回もお読みいただきましてありがとうございました!(*^_^*)

話、進んでませんね(汗)

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