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☆0.プロローグ
その屋敷は王都の片隅にあった。
不便極まりない立地に、小じんまりとした風体。
豪華絢爛とはかけ離れた屋敷には田舎男爵が暮らしていた。
一応貴族である為、王都に屋敷をもっている。
とはいえ、実質この屋敷で暮らしているのは一人と僅かな使用人のみ。
普段、領地へ引っ込んでいる男爵夫妻のかわりに、屋敷を管理するのは男爵家長男。
彼の名はユリウス=セクト。
少々事情が――もとい、個人的な事情――あり、彼の存在は貴族社会の中で殆ど知られていない。
自由きままな生活を送るユリウス。
そんな屋敷へと男爵夫妻が久しぶりに帰ってきた。
ユリウスにとって、おっそろしい案件を抱えて………