序章「目覚めと眠り」
序章「目覚めと眠り」
魔法と科学、ありえもしないこの二つが重なりあった世界「リディロム」 誰もが理想した世界が実現するには時間がかかった。この世界が誕生した時からその二つの文化が誕生したわけではないリディロムの元の世界は緑豊かな美しい自然でできた世界だった。
その世界を始めに発見したのが天才科学者ログロムと呼ばれる老人だった。
ログロムは自身の世界から異世界へ飛ぶ方法をたった一人で見出し始めにたどり着いたのがこのとても素晴らしい世界だった、ログロムは異世界の素晴らしさを知り、約一年間当時名前も無かった世界に住んだという。
しかしそんなある日今までの独り占めという理想は破られた、ログロムは毎日のように素晴らしい自然を探検している時、その男と出会った。
男の名前は「ラッチ」そのラッチもログロムと大して歳は変わらなかった、二人は警戒するまでもなくすぐに親友になった。
そんなログロムは自分は「ロディマ」と呼ばれる科学の世界から来たというとラッチは「カリム」という魔法の世界から来たと言った。この出会いが全ての始まりだった。
本来なら両者にとっては魔法や科学は架空の存在で馬鹿馬鹿しいと思うだけであったが、このように「異世界」が存在する以上そんな世界もあるのだと二人は信じあっていた。
そして二人が出会って約二年半、さすがにこの世界にいすぎたということで二人は別れを決心した、そして二人は一つの約束をした。
「それぞれ、科学と魔法もとの世界に戻ったらこの世界に移り住もう。我々の出会いをきっかけに科学と魔法の素晴らしい世界を作り上げるんだ」
その約束にラッチも大賛成した。
そして二人は長年の別れを告げ、最後にこの世界の名を「ロディマ」と「カリム」を合わせ「リディロム」と命名した、そして二人はそれぞれの世界へと帰って行った。
二人はもとの世界に戻った瞬間、異世界の恐ろしさをしった、リディロムには三年半しかいなかったのにも関わらず、もとの世界では100年以上が経過していた。
友人や家族はとうの昔になくなっておりログロムは悲しみに包まれたが、リディロムの希望を胸にロディマの長に全ての事情を話した。
始めは全く信じてもらえなくなったが毎日のように頼みを重ねた結果一度だけ見物するという理由で許可を得た。
そして言われたとおりにその世界に連れて行くとロディマの長は大層喜んだ。
「今すぐこの世界に我々の世界を移住させよう!」
しかしそうなる前にログロムはラッチとそのカリムの世界のことを話した。その要求に長はすぐさま賛同した。そしてもちろんラッチもログロムと全く同じ事をしていた。
そしてロディマとカリムの長がリディロムで交渉、そしてここに二つの世界を混合して作り上げる世界「リディロム」を作ることを宣言した。
その条約がされて約120年の時を得て魔法と科学が交差する世界「リディロム」が完成した。
誰もが幸せに安心して暮らせる世界・・・・・・・・・と誰もが思っていた。あの男が現れるまで。
男の名はグレルセント・ラグネス、魔法側の人間である。
カリムの長リール・ラグネスの跡取りである、父親が亡くなり国民もグレルセントに絶大な期待を寄せていた。科学の人間から、もちろん魔法の人間からもだった。
しかしグレルセントは国民が思うに理想の長ではなかった、なんとある日突然科学側の元長の跡取りであるシェイリンというまだ10歳にも満たない少女を式典のスピーチの時に約3万人を越える国民の目の前で堂々と殺したのである。
すぐにその行動は「戦争」を意味することとなった、始めはそのリディアリムのほとんどがグレルセントに戦いを挑んだがグレルセントの力はどういうわけか強大で次々とその世界の者たちを従えていった。
そう、豊に、幸せに住めるはずのリディアリムが支配によって構成される恐怖におびえる世界になってしまったのはこのときからである。
しかしそんなグレルセントに唯一反抗する組織があった。組織の名は 「ゼノ」 魔法と科学を組み合わせた武器を使い絶大な支配力を得ているグレルセントの軍勢に少数で立ち向かった。
しかしいかに武器が強かろうと、いかに人材がよかろうともグレルセントの消えることのない軍隊に次々とゼノ達は倒れていった。
ゼノの戦力は半年もかからないうちにほぼ壊滅、残すはゼノの最後の砦、廃墟となった町の崩れかけた高層ビルだった。
しかしいままでその所在が隠されていたいたそのビルの在り処もバレてしまいグレルセントはゼノに対し総攻撃を決断した。物語はここから始まる。
カッカッと廊下に慌ただしい足音をたてある部屋に迫る男達がいた。
男の近くには銃や剣、槍などを持った軽く装備をまとった兵士達にとり囲まれながら早足で廊下をただただ歩いていた。
その時、突然巨大な地響きが起こり床全体が大きく揺れる、兵士達は多少動揺したが男は何事もなかったかのように歩いている。翼
まるで終りのない廊下を右へ左へ、複雑な構造だが男は導かれるようにその歩みを止めなかった。
そして男たちの前に「無断立ち入り禁止」と書かれた電動式の扉があった。
その真横には指紋、声紋を確認するための装置が設けられている、男はすぐさまその認証機械に近づくとまず指紋確認の装置に自らの手のひらを乗せ正門装置のマイクに口を近づけると言った。
「ゼノ第一小隊体長「アルゼ・リガンズ」科学ナンバーT-366JーGP、魔法ナンバーMERUHOA・・・・・・・・・・認証開始」
ピピピピ・・・・・・・アルゼ・リガンズ・・・・検証・・・ピピ・・・・・科学ナンバー・・・・・・・・ピ・・・・魔法ナンバー・・・・・ピピ・・・・ナンバー・・・科学、魔法どちらとも一致・・・・ピピピ・・・認証完了・・・・ロック解除・・・・
妙な電子音の後に承認を確認されると電動ドアは音を立てて開いた。
男たちはすぐさまその部屋の中へと入る、男達が全員入るとそのドアは自動的に閉まった。
部屋の中は薄暗い、電灯が一つも機能していないのだ、だがその電灯の代わりに光を放つ物があった。
それは巨大なドーム型の形をした実験の時に使いそうな装置だった。
装置からはたくさんのコードがつながっている、
装置はガラス越しに見える仕組みでそのガラスの中には緑色の奇妙な色をした培養液のような液体が充満していた、しかしそんなものは並みの者の眼中には目に入らないだろう、そんなことよりも目を奪われてしまうものがある。
それはその中にいる「存在」である。
男達は全員その中の「存在」を確かめる、「存在」といってもそれが本物の「存在」なのかはハッキリしない、なぜならその「存在」は人の形をしているが大きな実験用の鎧に身を包んでいるため生物かは不明だった。
そんな装置の近くにはコートをまとった金髪のポニーテールの女性が一人だけその装置と直接コードでつながっているパソコンを素早い手の動きで操作していた。
女はすぐさま男=アルゼ・リガンズとその部下たちに気づき、一瞬振り向いたがすぐにパソコンの操作を再開した。
アルゼは少々険しい表情で女に近づきパソコンのモニターに映し出されている画面をじっと見つめる。
「進行状況はどうだ?」
「血管、動脈、静脈ともに異常なし。臓器の一部にまだ不具合があるけれどそこは戦闘には影響を及ぼさないから大丈夫、で、一番大事な細胞だけど、現状維持を保ちながら戦うなら長く持って五分が限界ってとこかな、でもこの戦いで「彼女」もろともスクラップにするんなら十五分は軽いけど」
「・・・・・・・・・・・ここを落とされれば終りだが、Z-11(ジーイレブン)を失うわけにはいかない、Z-11に現状維持での戦いを最優先させてくれ」
「了解!この作業が終了次第作動に移るよ!」
そして女性はすぐさま作業に移行した。
するとまたもや大きな地響きがその場を襲う、さきほどよりも遥かに強い揺れだ。
先ほどの大きな揺れは違う場所で大きな爆発が起きたのだろう、しかし今回はこの建物直接攻撃してきたようだ。
「奴ら、もうここまで来たのか・・・・リズ急げ!早くZ-11を起動させろ!」
「言われなくたって!!」
すると女性=リズは起動用の赤いボタンを押した。
・・・・・・・Z-11・・・・起動要請を確認・・・・・身体・・・・異常検証開始・・・・・・・・・・・・・・・・・・心臓、右心房に異常・・・・自己再生能力で戦闘中での回復に設定・・・・・・・・・他、以上無し・・・・・・起動開始
無感情な言葉とともに「Z-11」と呼ばれる人型の存在の軌道が開始された。
・・・・・・・・アーマー・・・・・・・解除・・・・・・・・・・回線・・・・・・解除・・・・・・・・
するとその声とともに実験用の鎧が少しずつ解かれていく、その豪傑を思い立たせる鎧が解くにつれて段々とその体は豪傑とはいいがたいとても細い腕が中から見えてきた。
右手、左手、右足、左足、胴体、そして顔。
全ての鎧が解けたとき男の兵士達は言葉を失った。
そこにはまだ15歳にも満たなそうな小柄な少女がいた。何度見てもこの子の姿を見ると胸が痛む。
「起動完了、維持培養液解除!」
リズの操作で中に充満していた、不気味な培養液は吸い込まれるようにして消えていく。
培養液の影響で分からなかった少女の金色の湿った髪がしなやかに揺れた。
「カプセル開封」
機械音とともにそのガラスのカプセルはゆっくりと開いた。
そして少女の瞳がそっと開かれる、まるで宝石のような輝きをもつその瞳は物静かな性格を感じさせた。
少女はそっと開かれたカプセルに手を掛けそっとそこから出きたのはいいが床に足をつけた瞬間バランスを崩しその場に倒れこんだ。
「・・・・・・・・・初期起動の少量の誤差により左足の血管運動が一時停止・・・・・・自己再生開始・・・・・・・血管再運動まで・・・・・・・・・約15分」
「・・・・・・・・ウソ!?・・・・そんな今頃になって・・・・」
レヴィンが思わず声を上げる、15分、そんなに時間を与えてはここが落とされるのも時間の問題だ、どうにかしなければ。
「要は15分、ここを守り切ればいいんだな?」
アルゼの言葉にすぐさまリズが反応する。
「何考えてんの!?まさかあれだけの数の敵相手にそれだけの戦力で挑むっていうの?無茶だよ無茶!死にに行くだけよそんなもの!」
リズはアルゼの言葉を全否定しながら言った。それもそうだ、おそらく敵は我々ゼノの反抗をここで終わらせるために多大な勢力を持ってビルを包囲しているに違いない。勇敢というよりむしろ無謀だ,そうリズの言うとおり死にに行くようなものだ。
「だがここにとどまってたって相手がずっと待ってくれるわけがない。なら一人でも注意をひければなんとか時間稼ぎにはなる。なに、逃げ回ってれば問題ない」
たかが15分、されど15分である。たったそれだけの時間でも耐えきれる確率は極端に低いということはアルゼも承知の上だ、もしかすれば15分どころか1分も持たずに死ぬかもしれない。だがいつ敵が総攻撃を仕掛けてくるかわからない。ならせめてでも餌が必要なのだ。
「隊長!我々も一緒に・・・・・」
「お前達は来るな!奴らはビルに侵入してくるケースもあるかもしれない。そうした時のためにお前たち全員残ってろ!これが最後の命令だ、いいな!!」
「・・・・・・・・・・・は、は!!」
隊員達は涙をこらえながらビシっと敬礼をした。そんな隊員達をアルゼは温かい表情で見守るとそっとリズの近くに寄るとそっとリズの肩に手を置いた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・俺が死なない保証はない・・・・・いや、おそらく俺はここで死ぬ。もし俺が死んだらZ-11の力を借りてみんな逃げてくれ、この戦いに勝とうとすればたちまち全員死ぬに決まっている。いいか、とにかく逃げることを最優先しろ。命あってのこの人生だ。そうだろ?」
「絶対死なないでよね!!・・・・・・・・・・・・ホント・・・お願いだから・・・・・」
そのレヴィンの瞳には小さな涙が垂れていた。その一滴の涙を頬の部分でアルゼはそっと指でふき取ると何も言わずにその部屋から出て行った。
みなさん「ANBISHA」を読んで頂きありがとうございます!
作者の海緒と申します。
実を言うとこの作品が初めての小説です
まだまだ足りぬ所があるかもしれませんがどうぞよろしくお願いします!