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逆嫉妬編

大広間のシャンデリアが輝きを放ち、舞踏会の熱気と音楽で空間が満たされている。

婚約を発表して以来、レティシアとアークレインは正式に婚約者となったが、それでも大広間で彼女が他の男性と楽しそうに話すのを、アークの心は黙って見過ごせなかった。


レティシアは隣に立つ青年騎士と礼儀正しく会話を交わす。微笑みを浮かべ、優雅に身を傾ける仕草は、さすが侯爵令嬢という完璧な立ち振る舞いだ。

しかし、アークレインの視線は鋭く、胸の奥で熱がじわりと湧き上がる。


(……っ……俺の婚約者が……他の男と……っ……)


自然に手がレティシアの腰に回る。指先で軽く引き寄せるようにし、距離を詰める。周囲の誰も邪魔することはできない、二人だけの空間を作り出す。


「……楽しそうだな」

低く、含みのある声で呟くと、レティシアは微笑みを返しつつも、わずかに目を見開く。


「ご安心を、あなた以外には興味ありません」

その言葉にアークレインの胸は熱を帯び、嬉しそうに口角を上げる。嫉妬と独占欲の交錯で、自然と彼女の腰をさらに引き寄せる。


周囲の貴族たちは微笑ましそうにその光景を見守る。

「婚約者同士って、こういうものなのね」

小声で囁き合う女性貴族もいれば、男性は少し苦笑しながら遠くから観察しているだけだ。


レティシアは顔に淡い紅を浮かべ、アークレインの腕に手を回す。

「……離れられないですね」

そのささやきに、アークレインはさらに嬉しそうに微笑む。


「当然だ。君は俺の婚約者だ」

声には優しさと独占の色が混ざり、耳元で囁かれると、レティシアは思わず息を漏らす。


アークレインは人目も気にせず、腰を軽く抱き寄せ、体を彼女に密着させる。

レティシアの手は自然と彼の肩に回り、舞踏会の音楽に合わせて二人の体が揺れる。

周囲の視線は、嫉妬と独占の甘さを包む二人に、微笑ましさしか覚えない。


(……俺以外の男はもう、見せるな……っ……)

アークレインの独占欲は高まり、レティシアが笑顔を見せるたびに、胸の奥で熱が膨れ上がる。

その熱を表情に出さずに、静かに微笑む姿は、まるで獲物を守る獰猛な雄のようだ。


レティシアも負けじと微笑み、少し耳元に顔を寄せる。

「……あなたのものですから」

その一言で、アークレインの心は完全に満たされ、嫉妬と独占心は同時に喜びへと変わる。


二人は舞踏会の中心で揺れながらも、周囲の視線はあくまで微笑ましく見守るだけ。

婚約者としての絆と、嫉妬によってさらに濃密になった独占関係――その空間は誰も踏み込めず、二人だけの甘く熱い時間が続いた。



舞踏会が終盤に差し掛かり、大広間のざわめきは徐々に落ち着きを見せる。

レティシアとアークレインは、式典の喧騒から少し離れ、そっとテラスへ向かう。夜風が軽く揺れるカーテンを撫で、月明かりが二人の輪郭を柔らかく照らす。


「……やっと、人目を気にせずに話せる」

レティシアはほっとした表情を浮かべながら、アークレインの腕に軽く触れる。


しかし、アークレインの視線は、まだ大広間のほうを気にしている。

(……他の奴らが俺の婚約者に近づくのは、絶対に許せない……)

胸の奥で嫉妬が再び熱を帯び、手のひらに力が入る。


「レティシア……ちょっと、そばを離れるな」

低く、だが確実に独占の色を帯びた声。

彼女の手を取り、自分の腕にしっかりと固定する。自然な笑顔を作るレティシアだが、アークレインの腕に触れられると、心臓は跳ね、頬がわずかに赤くなる。


「……あなたの婚約者ですから、離れません」

レティシアの微笑みに、アークレインは嬉しそうに微かに笑みを返す。

嫉妬の炎は収まらず、しかし今はその焦燥を甘さに変えるだけだ。


夜風が二人の間を流れる中、アークレインはレティシアをさらに自分の方に引き寄せる。

「他の誰かが君に近づくと……俺、黙ってられないんだ」

それは冗談めかして言ったわけではなく、胸の奥から自然に湧き上がる独占欲の吐露。


レティシアは微笑みつつも、少し挑発するように目を細める。

「……ほら、私のこと、そんなに心配するんですね」

その言葉にアークレインはにやりと笑い、頬に微かに触れる手を動かし、腰へと回す。


「心配じゃない……独占してるだけだ」

低く、そして甘く響く声。耳元で囁かれた言葉に、レティシアは息を詰める。胸の奥が熱くなるのを感じ、自然に体を寄せる。


「……あなたのものですから」

小さな声で、しかし確信を込めて言うレティシア。


アークレインは満足そうに微笑み、テラスの手すりに寄り添うようにして二人を包み込む。

月明かりの下で、周囲の喧騒は遠く、二人だけの世界が出来上がった。


「俺の婚約者は、誰よりも美しい……誰も触れさせない」

嫉妬と愛情が入り混じった独占的な吐息。

レティシアは軽く笑い、アークレインの胸に顔を寄せる。


「……あなたに触れられると、嬉しい」

その言葉だけで、アークレインは胸を張り、微笑む。嫉妬は完全に喜びに変わり、二人だけの甘く濃密な夜が続く。


テラスの夜風に揺れるカーテンの陰で、二人は離れず、互いの温もりと鼓動を確かめながら、婚約者として、そして恋人としての濃密な時間を過ごした。


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