17
カミラが微かに離れた後、アークレインは静かにレティシアの腰に手を回したまま、柔らかく微笑む。
「踊ろうか」
低く落ち着いた声。その響きだけで、胸の奥の焦れがさらに膨らむ。
レティシアは一瞬、驚きと喜びで息を吞む。
「……ええ……」
淑女としての優雅な微笑みを保ちながらも、体は自然とアークレインに寄せられる。
舞踏会の中心へと二人は歩み、光が揺れる広間の中で足を合わせる。
音楽が始まると、アークレインの手はしっかりとレティシアの腰を支え、もう一方の手で彼女の手を優しく握る。
「……っ……」
レティシアの心臓は早鐘のように打ち、頬は熱を帯びる。
目の前のアークレインは穏やかに笑みを浮かべ、まるで二人だけの世界に入り込んだかのようだった。
アークレインの視線が深くレティシアの目に絡み、微かに首を傾げて囁く。
「君の心、ちゃんと感じてる。言っただろ。好きになるって」
レティシアは息を詰め、視線を逸らそうとするが、彼の手の温もりと確かな腕の感触に心が解けていく。
無意識に腕に力が入ると、アークレインはそれを優しく受け止め、笑みを深めた。
周囲の煌めく光も、他の貴族たちのざわめきも、二人の間には届かない。
舞踏会の中心で、時間がゆっくりと流れるように感じられた。
「……アークレイン様……」
レティシアの声はかすかに震えるが、甘く、切ない響きを帯びる。
アークレインはその声に応えるように、さらに優しく体を寄せ、二人の距離を縮める。
「俺のこと、もう少し意識してくれてるんだろう?」
レティシアは微かに頷き、視線を落とす。
頬を赤く染めながらも、舞踏会の光の中で、二人だけの世界に身を委ねることを選んだ。




