16
舞踏会の広間は煌めく光に満ち、優雅な音楽と談笑の声が溢れていた。
レティシアは深い青のドレスを揺らし、胸の奥の焦れを抑えながら、アークレインの姿を探していた。
すると、広間の入り口から颯爽と現れる赤いドレスの女性――カミラ。
幼いころからアークレインを慕っていた彼女は、華やかな微笑みを浮かべ、一直線にアークレインの元へ。
「アークレイン様……お久しぶりね」
カミラの声は柔らかく、優雅で、けれど確実に心を揺さぶる響きがあった。
アークレインは微笑み、礼儀正しく応じる。
「久しぶりだな、カミラ」
アークレインは微笑みを返すが、視線はまだ周囲を探るように、レティシアの存在を確かめてはいない。
カミラはそれを察し、にやりと微笑む。
「……あら、今日は誰かと来てるのかしら?」
言葉の端々に挑発が混じり、視線はまっすぐレティシアを捉える。
レティシアの胸は跳ね上がった。
(……っ……っ……アークレイン様……見て……っ……!)
無意識に体が少し前に傾き、手のひらが軽く握りこまれる。
すると、カミラが微笑み、軽く腕に触れるその仕草――それを目にした瞬間、レティシアの胸は跳ね上がった。
(……っ……っ……許せない……!)
令嬢として冷静を装おうとする理性は、胸の奥の熱に圧倒される。
呼吸を整えようとしても、視線は自然とアークレインとカミラの間に吸い寄せられ、心臓の鼓動は高鳴るばかり。
「……っ……」
レティシアは思わず歩を進める。足取りは静かでも、内側の焦れは抑えられない。
カミラがアークレインに微笑みかけ、楽しげに話す。
アークレインは穏やかに応じながらも、まだレティシアの存在に気づいていない。
レティシアは意を決し、ゆっくりと距離を詰める。
そのまま、自然な振る舞いのまま――しかし心の奥では嫉妬の炎が燃えたまま――アークレインの腕に手を伸ばす。
「アークレイン様……」
声は落ち着いているが、手は迷わず彼の腕を掴んだ。
アークレインは一瞬、驚きの色を見せる。
しかしすぐに冷静に状況を把握し、目だけでレティシアを見守る。
レティシアの握る腕からは、嫉妬と焦れが伝わり、普段の完璧な微笑みの奥に隠された、熱く甘い衝動が感じられる。
カミラは一瞬、微かな動揺を見せるが、すぐににっこりと微笑む。
「ふふ……なるほど、レティシア様も嫉妬するのね」
その声には挑発と興味が混ざっており、レティシアの胸の熱はさらに弾ける。
レティシアはわずかに体をアークレインに寄せ、視線を逸らさずに彼を見上げる。
「……っ……」
言葉は出ない。ただ、腕を握った手と視線だけで、心の焦れと感情を伝える。
レティシアは腕を握ったままアークレインの視線を見つめる。
胸の奥の熱と焦れが、抑えきれない衝動となって体を支配していた。
「……っ……」
小さく息を漏らすレティシアに、アークレインは嬉しそうに微笑みを返す。
そしてそっと、レティシアの腰に手を回し、自分の方に引き寄せる。
わずかな距離――それだけで、胸の奥が高鳴る。
「やっと見つけた」
低く静かな声に、甘さと喜びが混じる。
レティシアは視線を逸らすことなく、頬を微かに赤らめながらも、その距離に体が自然と反応する。
カミラはその光景を見て、一瞬眉をひそめる。
でもすぐに微笑みを作り、少しだけ嫉妬を滲ませた。
「……なるほど、やっぱり彼女は特別なのね」
言葉の端には、挑発とも取れる軽い嫉妬が含まれている。
しかし、アークレインはその表情を見ても動じず、レティシアだけを見つめ続ける。
「レティシア……俺の隣にいてくれ」
手をそっと腰に添えたまま、視線で甘く確かめる。
レティシアの腰に手を回し、嬉しそうに引き寄せるアークレイン。
二人の間には、周囲のざわめきも届かないような、静かな濃密な空気が漂う。
そのとき、カミラが微笑みを浮かべながら声をかける。
「アーク、ちょっといいかしら?」
レティシアは胸の奥がきゅっと締め付けられるのを感じ、自然と腕の力が強くなる。
アークレインも一瞬、視線をカミラに向けるが、手は離さずにそっとレティシアの腰を支えたままだ。
カミラはにこやかに微笑みながらも、その目にはわずかな嫉妬の色が滲む。
「この間の話、もっと詳しく聞きたいなって思って」
彼女の声は柔らかく、でも確実に二人の距離を意識させる挑発のようでもあった。
レティシアは自然と背筋を伸ばし、表情を完璧な微笑みに整える。
「ええ、そうですか……」
その声にはわずかに焦れも混ざっている。けれど淑女としての落ち着きは崩さない。
アークレインは軽く肩をすくめ、わずかに口角を上げる。
その微笑みは、レティシアの嫉妬と焦れを喜びとして受け止めるようで、さらに心を高鳴らせた。
カミラの存在は、二人の間の距離を意識させる強い刺激になっていた。
レティシアは思わずアークの腕に軽く体を寄せ、目を細めて視線をアークレインに向ける。
「……まだ、私のこと……見てくれてる……よね?」
心の奥で問いかけるように、無言の意思表示。
アークレインはその視線に応えるように、ほんの少しだけ体を近づけ、優しく微笑む。
「もちろんだ。誰よりも、俺は君を見ている」
カミラはそれを見て微かに唇を噛み、嫉妬を隠しながらもその場を後にする。
レティシアの胸は跳ね、アークの腕に寄せる体は自然に熱を帯びた。




