15
廊下の角を曲がり、教室の喧騒から離れた静かな空間に足を踏み入れる。
日の光が差し込む小さな中庭――二人きりだ。
アークレインはレティシアの手を握ったまま立ち止まり、視線をじっと彼女の目に向ける。
その瞳はいつも通り冷静で鋭いが、今はほんの少し挑むような光を帯びていた。
「……なあ、レティシア」
低く、落ち着いた声で呼びかける。
手の温もりを感じながら、彼は指先を少し強めに絡める。
「……俺のこと、もう……好きだろ」
言葉は簡潔だ。だがその背後には、彼なりの確信と、静かな焦れが混ざる。
レティシアは一瞬、息を呑む。
胸の奥で熱が一気に跳ね上がり、指先から伝わる彼の力強さに心が震える。
理性ではまだ抵抗しようとするが、心は無意識に答えを求めていた。
「……っ……」
レティシアは小さく息を吐き、指先に力を込めて彼の手に応える。
理性で冷静を装おうとしても、無意識に体が彼の方へ寄ってしまう。
アークレインはわずかに口角を上げ、低く笑う。
「……まだ抑えられてる顔だな。でも、見てて面白い」
挑むような言葉。けれど強引さはなく、彼の冷静な観察眼に、レティシアは焦れを感じる。
胸の奥のざわめきが、じわじわと全身に広がる。
理性で抑えようとしても、心の奥ではもう、彼に引き寄せられる自分を隠せない。
言葉にはしないけれど、互いの距離と手のぬくもりで、答えはすでに交わされている。
二人の周囲には誰もいない。
手と視線、微かな呼吸の間に、甘くて焦れた時間がゆっくりと流れる。
レティシアの心は完全に動き、アークレインに引き寄せられていた。
アークレインの手がレティシアの手を優しく包み込むと、胸の奥で小さな焦れが跳ねる。
視線を交わすだけで、言葉以上に伝わる心の温度。
「……レティシア」
低く呼ばれる名前に、レティシアの胸は一層高鳴る。
「……はい……」
答える声はかすかに震え、頬は熱を帯びる。
アークレインは指先で彼女の手をそっと動かし、距離をさらに詰める。
「……もう、理性だけで抑えようとするな」
言葉は甘く、しかし確信を含んでいる。
レティシアはその声に小さく息を呑む。
彼の視線が、微かに挑むように揺れる。
「……っ……」
心の奥で熱が弾け、思わず唇を軽く噛む。
焦れと甘さが混ざり合い、体が自然に彼の方へ傾く。
「……アークレイン様……っ……」
声が小さくも切迫している。
視線を合わせると、彼はわずかに笑みを浮かべ、距離を一歩詰める。
「……俺のこと、もう……意識してるんだろ?」
手のぬくもりと視線だけで、問いかけるような強さと優しさ。
レティシアは小さく頷き、手をさらに強く握り返す。
その瞬間、二人だけの世界になる。
手と視線、微かな呼吸のリズム――
すべてが絡み合い、甘さと焦れが満ちた時間が静かに流れる。
レティシアは胸の奥で決心する。
(……もう……隠さない……私の心は……アークレイン様だけ……っ……)
アークレインはゆっくりと顔を近づけ、目を閉じるように促す。
「……目を閉じろ」
言葉には柔らかさと確信が混じる。
レティシアは小さく息をつき、瞼を閉じる。
そして、アークレインの唇が静かに自分の唇に触れる。
柔らかく、しかし確かな熱。
胸の奥から全身にじわりと広がる甘い衝撃。
心が一気に彼に引き寄せられ、理性ではもう止められない。
「……っ……」
小さな声が漏れ、体は自然に彼に寄せる。
アークレインも応えるように、手を少し強く握り、距離を保ちながら唇を重ねる。
二人だけの世界。
手と唇、呼吸と視線――
甘く焦れた初めてのキスが、二人の関係を確かなものにする。
離れたあとも、互いの呼吸がわずかに重なり合い、視線だけで心の奥まで通じ合う。
レティシアの頬は赤く、胸はまだ早鐘のまま。
アークレインは微かに微笑み、手を離さずに優しく彼女を見る。
「……これからも……俺のこと、意識してくれ」
低く囁くその声に、レティシアは小さく頷く。
胸の奥の焦れと甘さが、さらに深く満ちていった。




