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英雄 マツイ

 そう言ってユーリが手元のキーボードを操作すると、正面のメインスクリーンに映像が映った。


 それはまさに事故現場の映像だった。

 12ユニット内と思われる空間の空中には大小の破片が漂い、その中に人間らしい形の浮遊物が他の無機物と同じように浮かんでいる。

 その傍らには、大きくひしゃげた楕円形の繭のようなボックスが5個並んでいた。


「あれが、、マツイさんね。報告書では爆発に巻き込まれ死亡となっているけど、、」

 悲惨な映像に眉をひそめたマリーは手元の資料を見ながら質問した。


「はい、保安員が到着した時には既にマツイは死亡していました。最後の交信の直後に発生した小規模の爆発に巻き込まれたようで、宇宙服が破損していました。マツイは自らの命と引き換えに45名の命を救った英雄です」


 キャプテンユーリはキーボードを操作し、メインスクリーンの事故現場映像を消しマツイの個人ファイルを映し出した。スクリーンには英雄マツイの顔写真が大きく映し出された。



 約二時間後、僕たちは宇宙服を着て宇宙遊泳をしていた。僕の宇宙空間遊泳B級ライセンス取得のための実技訓練を兼ねた事故現場調査のためだ。

 13ユニットのハッチから外に出て、事故のあった12ユニットへ向かう。実際には光に近い速度で飛んでいるのだが、何も無い宇宙空間では速度感はまったく無い。


 右手でコントローラーを操作し、背中についている小型ジェットノズルの出力を細かく調整すると、面白いようにふわふわと進んでいく。

 それでも移動のスピードは歩くよりも遅い。ちょっとくらいジェットノズルの操作を誤っても暴走しないためだ。


「もうすぐ12ユニットの外壁よ」

 先を行くマリーが無線で話しかけてきた。

 目の前に続いている銀色に輝く滑らかな移民船の外壁の先に、黒く汚れギザギザに破損した部分が見えてきた。


 近づいてみると破損箇所は意外と大きい。

 外壁の切れ目は縦10m、横5m位で透明なプラスチックのようなもので覆われている。

 全体から見ると、まるで絆創膏を張っているような感じだ。

 このプラスチックは、破損した船体の破片が航路に散らばらないようにするためのもので、特殊な樹脂でできている。通常はジェル状だが、特殊な光を当てると硬化するのでどんな形にもフィットするという便利な緊急用品だ。

 しかもかなりの強度があるので、宇宙空間であればこのまま旅を続けられるらしい。


 よく見るとその樹脂の下部には、人が一人やっと通れる位の丸いハッチがついている。調査立ち入り用に特別取り付けたハッチのようだ。


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