キャプテン ユーリ
「あの時、障害物アラームが突然鳴り響いた時は、私はこのコントロールルームにいました。」
「ブルードリーム」の今のキャプテンであるユーリが言った。
全旅程が20年の移民船にはキャプテンが10人いる。
交代でコールドスリープから目覚めて2年づつ務めるやり方だそうだ。確かに狭い移民船の中に20年間醒きていたくはない。
僕らは、コントロールルームでキャプテンの状況報告を聞いていた。本来この仕事はマリーの範疇であり、僕なんかは完全に門外漢なのだが、なぜかマリーは僕の同席を許してくれた。どうやら後学のためらしい。
「音も衝撃も特に感じませんでしたが、メインモニターに危険区域を示す船内マップが自動的に表示されました。それによるとNO12のユニットにアラームランプが点滅していて何かしらの障害が発生しているようでした」
ユーリキャプテンは、コントロールルームのキャプテンチェアに座り、手元のキーボードを操作しながら言った。
「その、ほんの数秒後、当直のマツイから連絡が入りました。これがその音声です」
ユーリキャプテンはそう言うと、キーボードのENTERキーを押し、目線をちょっと上げた。コントロールルームのスピーカーに録音された音声が流れ出した。
『Aブロック担当のマツイだ。今、NO12ユニットの近くにいる。なにかよく判らないが隔壁が閉じていて12ユニットに入れなくなっている。NO13の作業用ハッチから外に出て状況を確認する』
『キャプテンユーリだ。了解した。保安員をそちらに向かわせるが、30分位かかると思う。気をつけて作業するように』
一旦ここで会話が途切れた。
「次に連絡があったのは5分後くらいでした」
キャプテンユーリはそう言ってキーボードを操作した。
『今。12ユニットの外にいる。外壁が破損し穴が空いている。結構でかい穴だ、ザザ―・・穴から12ユニットに入ってみる。ザザ―・・あぁ、まだ生きているボックスがある。くそっ、・・・よし・・一台づつ外から回して13ユニットのハッチから中に収納するザザ―・・』
また通信が切れたようだ。
「このボックスというのは、コールドスリープしている人間が入っている装置のことで、一台づつ切り離せるようになっています。基本的には、宇宙空間でもある程度はその機能を維持できます。マツイは、破損し隔壁で隔離された12ユニット内にまだ機能しているボックスを発見し、救出作業を開始したようです。次の通信は、約20分後でした」
『保安員はまだか、ザザー、【今10ユニット付近まで行っている、後少しだ】判った、こちらは45個までは回収できたが、残り5個は既に壊れている、、だめだ、あ、ガガッピー、、【マツイ、マツイ、どうした、ザザー】』
「マツイとの交信はこれが最後でした。この5分後に保安員が到着しました。これがその時の映像です」




