移民達の挑戦
そこで注目されたのは、「コールドスリープ」の技術だった。
環境破壊の悪影響は、人体へも及んでいた。未知の病原菌の発生や前例のない病気、遺伝子の変異による奇形等、人類が経験したことのない病気が多発するようになっていた。
人類はそれらに対処するための方策のひとつとして、未来の医療技術の進歩に期待したコールドスリープの技術開発に取り組んできた。
壊れかけた地球を見捨てて新世界へ旅立つための移民船の問題を解消する有効な手段として、皮肉にも環境破壊から生まれたコールドスリープ技術が選択されることとなった。
その他にもさまざまな問題が山積していたが、人類の明るい未来を信じた科学者や技術者達の願いが結集し、「ガイア」が発見されてから2年後、第一回目の移民船が飛び立った。
移民人数1000人、片道50年の長い長い旅路だった。
もっとも、コールドスリープされた移民達は、寝て目覚めたら新天地という感覚だったそうだ。
結果的には第一回目の移民船は、何事もなく予定通り無事「ガイア」に到着したのだが、それがわかるのは50年後であった。
しかし、地球の環境破壊度は第一回目の移民船の結果報告を待つ余裕がなかった。
各国では、とりあえず無事旅立った第一回目の移民船を参考に、次々と新しい移民船を建造し、1年に10隻程のペースで地球から移民を送り出していった。
特に最近は、新型エンジンが開発されて、20年位で「ガイア」までたどり着くことができるようになり移民者数も飛躍的に伸び始めている。
そのおかげで「ガイア」の人口は、今では200万人に達している。
「ガイア」の歴史は、第一回目の移民がたどり着いた時点から始まっていることから今年は、ガイア暦52年となる。
科学文明など何もない「ガイア」で生活するために、移民船はそのまま移民者の居住地として使えるような工夫がされており、太古の地球と同じようなジャングルの中で、人類はその移民船でできた街から第一歩を踏み出し始めた。
それから約50年、建設機械も運ばれ近代的な200万人都市が徐々に出来上がりつつある。
今回の僕達の仕事は、最近船出した移民船で発生したトラブル対応が目的だ。
累計するともう数百隻も飛んでいる移民船だが、長旅のためトラブルも多い。
途中で航行不能となり移民者全員が死亡した例も少なくはない。
また、出発したばかりの近場での事故ならば地球からの直接救助も可能だが、ある程度まで行ってしまうと、地球からの救助部隊も事故船にたどり着くまで何年もかかってしまうためかなり難しくなる。
もっとも最近はエンジン性能がアップし、亜光速まで出せるようになったため救助範囲も広がってきているし、途中2箇所に中継ステーションが建設されそこからの救助も可能となったことから、初期の頃と比べると随分安全に航行できるようになり、重大事故も減ってきた。
それでも、ガイアへの道のりは、移民たちにとっては、20年もかかる命がけの行程であることに変わりはない。
今回の事故現場は、地球から約1光年先の外宇宙空間である。亜光速のスピードで行っても1年半はかかる距離だ。中継ステーションは、大体7光年単位で設置されているので、地球から救助に行ったほうが早いらしい。




