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真相

「行ったな」


「ブルードリーム」のある一室の窓から、カトウは遠ざかる「マゼラン」を見ていた。


 同僚のジョンは、部屋の隅にあるロッカーをあさっていた。

 その部屋のドアには『マツイ』と表示してある。


「あった。これだ。マツイに渡していた超時空通信機だ。」

 ジョンはそう言うと、ロッカーの中からちょっと厚めの銀色のノートパソコンのような装置を取り出し、蓋を開け電源を入れた。


「どうだ?通信記録は残っているか?」

 カトウは、ジョンに近寄り、一緒にディスプレイを見ながら言った。


「二つ残っている。」

「やっぱり残っていたか。再生してみろ。」


 ジョンはカトウに言われ、スタートボタンを押した。


『(ザッ・・マツイか・・ザッ・・ザザッ・・)ああ、わたしだ、マツイだ。』


 相手の音声はかなり雑音が多いが、聞き取れなくは無い。マツイが誰かと話しているようだ。

『(ザッ・・よし、では計画通り実行しろ。ザッ・・段取りはわかっているな。ザッ・・)』


『ああ、まず12ユニットの8番以外の45個のボックスを13ユニットに移動させ、残り5個になったら8番ボックスと前方の外壁に例の機械を取り付けスイッチを押す。』

『爆発が収まったら、コントロールルームのキャプテンユーリへ連絡してから、8番ボックス以外の4個を13ユニットに移動させる。・・・本当に壊れるのは8番だけなんだな。』


『(ザッ・・そうだ、ほかの4個はかすり傷程度になるはずだ、ザッ・・隕石衝突で1個だけ大破では不自然だろう・・ザッ・・)』

『それより、本当に娘は、エリーザは手術を受けられるんだろうな。』

『(ザッ・・ああ、約束する。間違いない・・ザッ・・通信はこれで終わりだ、・・ザッ・・通信記録も確実に消去しろ、いいな・・ザッ)』



ジョンはカトウを見上げ尋ねた。

「これで一つ目は終わりだ。二つ目も再生するか。」

「ああ、聞いてみるか。」


『(ザッ・・どうした?もう通信はしないはずだ・・ザッ・・)』

『どういうことだ、5個全部壊れていたぞ!5人も死んだぞ。殺るのは8番だけじゃなかったのか!。』

『(ザッ・・そうか、・・済んでしまったことは仕方あるまい。・・ザッ・・もう一度現場に戻って状況を確認してくるんだ・・ザッ・・)』

『ちくしょう、、なんということを、、俺は、、』


 死者の秘密の声を聞いたジョンは、生気を吸い取られたようなかすれた声で「以上で全部だ」と言った。


 少し白っぽい顔色になったカトウは、表情を全く変えずに言った。

「このあとマツイは、現場で2度目の爆発に巻き込まれた。・・予定通りだな。」


 その時、部屋の入り口のほうから声が聞こえた。

「マツイにはかわいそうだったが、遺族には保証金もでるし、英雄になったマツイの娘は大金がかかる手術も受けられる。我々も、違法企業献金の証人がいなくなって一安心というところだな」


「キャプテンユーリ、いらしてたんですか」

 カトウは、突然訪れたユーリ艦長に驚くことも無く、話を続けた。

「通話記録を消去して、この作戦は終了です。我々は次の中継ステーションでこの装置を持って下艦し、大臣が用意した最新の超高速艇で地球に戻ります。降りるまでよろしくお願いします。」


 カトウは、口元に薄笑いを浮かべて右手を差し出し握手を求めた。

「ああ、お疲れさん。中継ステーションまではまだ3年もあるからな。何かあったらこちらこそよろしく頼むよ。それとも、3年間コールドスリープでタイムスリップするかい?ボックスの予備機、2個位はあるよ」

 カトウと握手しながら、ユーリ艦長が聞いた。

「いやあ、寝たままあの世行きはいやですから、3年間働かせていただきますよ」

 カトウは、同僚のジョンに目配せしながら言った。


 ジョンは、片方の眉毛を少し上げて、口をへの字にし窓から漆黒の宇宙空間を見つめてつぶやいた。

「・・・宇宙だろうが、地上だろうが人間やることは一緒だ・・罪深いものだな・・」



END


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