事故の犠牲者
数日後、マリーは「マゼラン」の自分の部屋の窓から遠ざかる「ブルードリーム」を見ていた。
「マゼラン」は、ついさっき「ブルードリーム」を離艦し、新たに45人を収容して帰路についていた。
僕は、マリーの部屋のドアをノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
僕は、夕食を持ってマリーの部屋に入った。
「食堂にいらっしゃらなかったので、夕食をお持ちしました。」
「あら、ごめんなさいね。ありがとう。乗客が増えたのに気を使ってもらって悪いわね。」
僕は、パンとチキンの照り焼き、卵スープの乗ったトレイをテーブルの上に置いた。
テーブルの上には、蓋が開いてディスプレイが映きっぱなしになったパソコンがおいてある。画面には、人の顔写真と細かい文字が並んでいた。
「これは・・」
「ああ、今回の犠牲者の履歴よ。技術者に教師、皮肉なことにこの8番ボックスの人はベアトリックス社の元社員なのよ。えーっと、技術者じゃなくて経理部勤務だったようね。」
「そうなんですか。・・・報告書は出来たんですか。」
「ええ、なんとかね。」
「カトウさんたちはどうなるんですか」
「そうねえ。形式的には偽証罪とかで立件されることになると思うんだけど、本人たちの希望で「ブルードリーム」に残って他の欠陥部分を調査修理することになったの。だから実質的にはお咎めなしで、ガイアで第二の人生ということになると思うわ。・・・一生、亡くなった6人の十字架を背負ったままね。もちろんベアトリックス社に対しては責任を追及していくつもりよ」
「・・・そうですか」
僕はそう言って、どんどん離れていく「ブルードリーム」が見える窓のほうを振り返った。
見る見るうちに、あの巨大な「ブルードリーム」は一本の輝く針になった。その細く鋭い輝きは、胸にチクリと刺さるような奇妙な刺激を残した。




