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ベアトリックス社の技術者

 きつい目をして正面に立ったマリーに気圧されたカトウは、2,3歩後去ると同僚のジョンの方を見た。

 ジョンはしばらくカトウを見つめていたが、やがて全身の力が抜けたようにガクリと下を向いてつぶやいた。


「バグだったんだ、、。設計コンピュータのほんのちょっとしたプログラムバグなのに、、スリープ装置が爆発するなんて・・」

「やっぱり・・。隕石と衝突というのはうそだったのね。」


 すっかりあきらめた様子のカトウは、淡々と語り始めた。

「・・・宇宙船に詳しいマリーさんならご存知かと思いますが、宇宙船の建造には無数のコンピュータが使用されます。特に設計段階では、コンピュータはなくてはならないものです。しかしコンピュータをプログラミングするのも使っているのも人間です。残念ながらミスも発生してしまいますので、何度もチェックし間違いを防ぎます。」

 カトウは『ゼリウム132』がついている指を無意識に擦りあわせながら続けた。

「ところが、この「ブルードリーム」にはその何重ものチェックを通過してしまった欠陥があったのです。我々がその欠陥に気付いた時点では、すでに「ブルードリーム」が移民を乗せて出発し半年近く経っていました。」


「会社はそのことを知っていたの?」


「はい、我々は欠陥に気づいてすぐに会社に報告し、リコールして急いで修理に向いたかったのですが、会社からなかなかOKが出ませんでした。会社では、どれだけの被害がでるのか検証しないと許可をしないと言ってきたのです。多分欠陥を公にした場合のイメージダウンと事故が発生した場合の補償額を天秤にかけたのでしょう。そんなことをしているうちに今回の事故発生の連絡を受けました。残念ながら最悪の事態が発生してしまったんです。我々は、とにかく修理に向いたいと会社に申し出ました。すると、会社からある条件と引き換えに修理の許可が出ました。」


 そこで、マリーが言葉をはさんだ。

「事故現場に『ゼリウム132』を持ち込んで隕石に衝突したと偽装するように・・・と」


 カトウは、『ゼリウム132』が付着した右手を見つめながらうなずいた。

「・・はい。」

 しばらくカトウを見つめていたマリーは、カトウから視線をはずすと自分が持ってきた成分分析機の方に向き直った。


「ふうぅ、事故調査委員としては、今の話は聞き流せないわね。報告書を作成しなくちゃいけないから、後でもう一度教えてちょうだい。」


「・・・・・・わかりました」

 カトウは、消え入るような声で答えた。



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