ゼリウム132
マリーは、またキーボードの操作を始めたが、5分ほどで止め、ディスプレイを見つめて言った。
「カトウさん。あなた達、どこか触った?」
「えっ・・」
カトウは一瞬言葉につまり、ジョンのほうを振り返った。ジョンは軽く両手を挙げて首を振った。
「いや、どこにも触れていないはずだが、無意識に触ってしまったかな」
カトウは戸惑いながら、言い訳した。
僕は、マリーが見ているディスプレイ画面が気になって、マリーの肩越しに覗いてみた。
画面にはこの部屋の中が立体的に映っているが、実際の色とは違う様々な色に光っている。
「・・・確かに『ゼリウム132』が反応しているけど・・これはどういうこと?・・」
マリーは再びキーボードを操作しながらつぶやいていた。
「マリーさん、どうしたんですか」
気になった僕は聞いてみた。
「え、、ああ、この青い部分を見てみて。これが『ゼリウム132』よ。それ以外は元々この宇宙船に使われていた物質ね。さっきも言ってたように『ゼリウム132』はPアステロイドベルト特有の物質だから、これがあるということは隕石が原因の衝突事故としてほぼ間違いないわ。でも、『ゼリウム132』の付き方がおかしいのよ」
「付き方?」
「ええ、今までの分析器だったら判らなかったけど、この装置だと付着した箇所まで瞬時に判定できるの。それでいくと、、よく見て。青く光っている部分が『ゼリウム132』よ」
画面を見てみると、いくつかの部分がボウと青く光っているが、かなり偏った部分しか光っていない。
しかも一番強く光っているのはカトウの右手だった。僕たちが入ってきたハッチの淵にも青い手形が付いている。
「これは、、」
僕はどういう状況なのか判別が付かなくて言葉が続かなかった。
「もしこれが外からの隕石が原因なら、まず船体の裂目に大量に付着しているはずなのに・・」
僕が発するはずの言葉をマリーが続けてしゃべってくれた。
確かに、ディスプレイ上に表示されている裂目には、ほとんど青い光がない。
裂目には、『ゼリウム132』はほとんど付いていないということだ。
つまり隕石がこの裂目を作ったのではないということになる。
ならば、この青い光はなぜこんな風についているのか。
隕石とかの既成概念を全て拭い去って、改めて考えてみれば・・
とても単純だ。
―――カトウが持ち込んだのだ。
「でも、なぜ・・」
僕がそこまで到達したことに、マリーは気づいたらしく僕の方を振り返って言った。
「さて、そこは聞いてみないと判らないわね。ねぇ、カトウさん?」
キーボードの操作を止めたマリーは、カトウの方に向き直って聞きなおした。
「どういうことなの?ベアトリックス社のMr.カトウ?」
ベアトリックス社とはこの移民船の製造メーカーだ。




