表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

青年がほんとうに好きなもの

「お、おまえ、まさか」

竹の皮につつまれたおにぎりを、青年は指差しました。

「焼きタラコだよ」

「何それ。じゃねぇよ! 何勝手に行ってんだよ」

「なんで行くのにお前の許可がいんのよ」

マサムネの態度に青年は気づきます。

「お前、余計なこと言ってないだろうな?」

「余計って?」

「だから」

「例えば、お前が領主の息子ってこと?」


「痛てて・・・」

殴られた頬をさすりながら、マサムネは焼きタラコを頬張りました。

「さて。どうなるのかな」

青年が出て行った扉を見ながら、「焼きタラコ、うまっ」マサムネは呟き、

彼女ほしいなー。心から思ったのでした。


ドンドンドン。

夜なのに、お店のシャッターを叩く音がします。

治安が悪くないとはいえ、夜の訪問は滅多にあることではありません。恐る恐るシャッターを上げると、信じられない人が息を切らして立っていました。

「どうして・・・」

「ごめん!」

青年は膝に頭を打ちつける勢いで謝りました。

「・・・なんで謝るのですか?」

「自分のこと、言ってなかったから」

「・・・ここには、再開発のため?」

「この地域に来たのはそうだけど」

「帰ってください」

「聞けって!」

青年は娘の腕をとりました。

「このお店に来たのは違う! おにぎりが美味しかったから。ほんとうに、初めて食べたんだ」

「そうだとしても。あなたが謝ることじゃないわ」

青年と娘は目を合わせたまま、沈黙が走りました。

青年は謝罪の意思を。

娘は拒絶の意思を。

お互いの瞳に秘めたまま。


「信じてほしいのは」

青年が口を開きました。


「僕は、このお店のおにぎりが好きだ」

「わかってる。傷ついたのは、私の勝手な思い込みで」

「君のことも好きだ」


信じられない。娘は目を見開きました。

喜ぶべきことなのに、驚きが先立ち、不信感がわいてきます。

「再開発のことは関係ない。確かに僕は、プロジェクトのメンバーだけど、決定権を持っているわけじゃない。この地区の人と話し合って、合意の上で進めたいとも思ってる」

青年の真摯な声が、辺りに響き渡ります。

「僕は、はじめておにぎりを食べたけど、断言できる。君が作ったおにぎりだから、こんなに美味しく感じたんだ。梅干しだって美味しいと思った」

魔法にかかったみたいなんだ。

「・・私と、あなたでは身分が」

「その前に大事なのは」

娘の両手を、外側から強く握りしめます。

「君は、僕のことをどう思ってるの?」


暗い道の途中で、一軒のお店から明りがもれていました。

お店の前には男性と女性が立っていました。

二人は抱き合って、おでこを合わせていました。

お店の奥で、五人の子供達が覗いているのは、まだ秘密です。

もう少しだけ、二人の時間をあげましょう。


「今更なんだけどさ」

「はい」

「順番めちゃくちゃなんだけど」

「はい」

「名前、聞いてもいいかな?」

名前が入らないじゃないかーー!!

すみません。

改めまして。読んでいただき、ありがとうございました。

心ふるえるほどに嬉しかったです。

気力がたまれば、マサムネくんのお話を書きたいのですが・・・いつのことやら。

またどこかでお会いできたら、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ