第8話 「骸骨王との死闘」
ガシャン! ガシャン!
鎧の関節が軋む音とともに、五体の骸骨兵──スケルトン・ソルジャーが一斉に武器を構え、蓮と凛に襲いかかる。
「くっ!」
蓮は一歩踏み込み、長剣を横薙ぎに振るう。
青白い火を灯した骸骨兵の眼窩が、光を放ちながら崩れ落ちた。
だが、他の四体が間を詰める。
「《ライト・バリア》!」
凛の光の壁が蓮を包み、槍の突きを弾く。
「ありがと……って、ぐっ!」
背後から振り下ろされた剣が肩をかすめ、蓮は痛みに顔をしかめる。
金属音と骨が砕ける音が大広間に響き渡る。
やがて最後の一体を蓮が斬り伏せると──ギィ……と不気味な音が響いた。
奥の王座。
そこに座っていた巨大な骸骨が、ゆっくりと立ち上がる。
頭には黒ずんだ金の王冠、手には錆びながらも禍々しい光を放つ槍。
その存在感だけで、空気が重くなる。
「……やば……あれ、絶対強いヤツだ」
「蓮にぃ、集中!」
スケルトン・キングが大地を踏み鳴らすと、床に亀裂が走り、石片が舞い上がる。
次の瞬間、その巨槍が稲妻のような速さで突き出された。
「っ!?」
蓮は辛うじて身をひねるが、槍先が頬をかすめ、血が一筋流れ落ちる。
間髪入れず、槍が薙ぎ払われ、蓮と凛は同時に吹き飛ばされた。
「くっそ……速ぇ……」
蓮は息を切らしながら立ち上がる。
凛も膝をつき、肩で息をしていた。
そのときだった。
背後で呻くような声が響く。
「……お……ま……も……る……」
振り返ると、あのグールが立っていた。
しかし、その全身から淡い青白い光が溢れ、腐敗していた肌が次第に透き通っていく。
鎖のような魔力が四方に広がり、二人の身体へ絡みついた。
「な、なんだこれ……体が……軽い!」
「魔力も……溢れてくる!」
それは強力な身体強化バフだった。
筋肉が爆発的に反応し、魔力の循環が倍増する。
「凛、行くぞ!」
「うん!」
蓮が床を蹴ると、まるで風を裂くような速度でスケルトン・キングへ迫る。
凛の詠唱が終わる。
「《聖槍》!」
光の槍が空間を裂き、王の胴を貫く。
同時に蓮の剣が閃き、首元へ鋭く斬り込む。
スケルトン・キングは最後の抵抗として槍を振り上げるが──
「させるか!」
蓮が渾身の力で一閃し、王冠ごと頭蓋を斬り割った。
骨の砕ける音が響き、巨体が膝をつく。
次の瞬間、崩れた骨は光に変わり、静かに消え去った。
荒い息をつきながら、蓮は剣を下ろす。
凛はその場に座り込み、額の汗を拭った。
すると、グールは何も言わず、奥の小さな扉へと向かう。
その背中は、先ほどよりも人間らしく、そして穏やかに見えた。
「……あいつ、何者なんだ?」
「分からない。でも……ついていこう」
蓮と凛は視線を交わし、グールの後を追った──。




