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第7話 「墓の下の迷宮」

 月明かりが差し込む墓場の奥──。

 グールが辿り着いた先には、大きな樹の根元にぽつんと佇む一つの墓石があった。

 他の墓と違い、まるで長年誰も手をつけていないような苔むした姿だ。


 グールはその前で立ち止まり、腐敗した腕を必死に振って何かを訴えている。

 その喉からは、低く湿った声が漏れた。

「……ぁ……お……おお……」

 言葉らしき音だが、濁っていて聞き取れない。


「蓮にぃ、この人……なんか必死に何か言ってる」

 凛は眉をひそめ、そっと一歩近づく。

 グールは胸を押さえ、墓石を何度も指差し、両手で何かを抱えるような仕草を繰り返した。

「……お……ま……も……れ……」

 蓮は剣を握り直し、顔をしかめる。

(やめろ……その声、マジで怖い……)


 凛はそっと墓石に触れ、優しく問いかけた。

「……ここに、大事な人が眠ってるの?」


 その瞬間──ゴゴゴゴ……と低い音を立て、墓石が横へスライドした。

「ちょ……!動いたぞ!」

 蓮が思わず後ずさる。


 墓石の下から現れたのは、暗闇へと続く階段だった。湿った空気が吹き上がり、まるで地下から何かが息をしているようだ。

(うわ……完全にホラー映画のやつじゃん……)


 先導するように、グールが階段を降り始める。

 仕方なく二人も後を追った。


◇ ◇ ◇


 階段の先は石造りの地下通路だった。

 壁に打ち込まれた松明が、不気味に明滅しながら奥へと続いている。

「……ダンジョンだな」

 蓮は剣を抜き、凛は杖を握りしめる。


 通路を進むと、スライムやコウモリ型モンスター、さらには骨だけの小さな骸骨兵が行く手を阻んだ。

「《ライト・ヒール》!」

 凛の回復魔法が蓮の肩の傷を瞬時に癒し、蓮はすかさず斬り返す。

「っらあああっ!」

 剣が骸骨兵の頭蓋を叩き割り、砕けた骨が床に散らばる。


 グールは一度も振り返らず、まるで何かに引き寄せられるように階段を下り続ける。

 時折、喉を震わせながら、何度も「お……ま……も……れ……」とつぶやいていた。


◇ ◇ ◇


 やがてたどり着いたのは、重厚な石の扉。

 黒い鉄の取っ手を二人がかりで押し開けると──ギィィィ……と音を立て、広い石造りの大広間が現れた。


 薄暗い空間の端には、鎧に身を包んだ骸骨兵が5体、無言で立ち尽くしている。

 そして奥には、王冠をかぶった巨大な骸骨が王座に座り、錆びた槍を手に静かにこちらを見下ろしていた。

 その背後には、小さな木製の扉がひっそりと存在している。


 グールはゆっくりとその扉を指差し、蓮と凛の方を振り返った。

 その濁った目に、かすかな懇願の光が宿っていた。


 しかし──バタンッ!!

 後ろの重厚な扉が自動で閉まり、鈍い音が響き渡る。


 そして……ガシャンッ!

 鎧の関節がきしみ、骸骨兵たちが一斉に動き出した。

 王座の骸骨も立ち上がり、槍を構える。

 乾いた骨の音が、大広間にこだました。


「……おい、これ絶対ボス戦だろ……!」

「やるしかないよ、蓮にぃ!」


 剣と魔法が再び構えられ、兄妹は戦闘態勢に入った──。


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