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ワールズストレンジャー  作者: 遊戯九尾
第二章 怪異植物都市ラップローズ
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初めての別世界

 スレイ達が魔想体回収の目的の為、植物都市ラップローズに降り立つと、都市のあちこちに植物があった。


「凄い…都市のあちこちに木や花だらけだ!」

「牛女、あまりチョロチョロするな、ただでさえ俺たちは目立つ」

「自然の香りがしていい街ですね」


 辺りをキョロキョロ見回すサーシャをダリルが抑え、レインが都市の空気を気持ちよさそうに吸う。都市の雰囲気そのものは良かった。魔想体があるとは思えないくらい平和で、それでいて美しく思えた。


「さて、まずは何をすべきかな」


 スレイは何をしようか悩む、二泊三日の旅ではあるが、魔想体の回収は一日だけで済む、残る2日をどう過ごすか悩んだ。すると、バスからフィアネリスが6人に見てこう答える。


「暫くはあなた方も自由行動でよろしいですよ、ただし、観光客の身を守りながらではありますが」

「身を守る? 何か不味いことでも起きるのか?」

「ええ、魔想体の影響で、各地になり損ないが出没しているとの情報がございます。警戒を」

「分かったよ、それじゃあ、トラブル対策チーム、出動だ」


 スレイ達が動き出し、ラップローズの街並みを見ていく。道行く人は普通の格好だが、あちこちのビルは植物と共生するように立ち並んでいた。


「この都市の特産品ってなんだろう?」

「旅行ガイドにはキノコが特産品のようですよ」

「キノコかぁ、毒じゃなかったらいいね」


 サーシャとレインがそんな呑気な会話をしながら歩く。一方ルーデンス、ダリル、ローランドは落ち着いた様子で歩いていた。


「そう言えば、魔想体の回収をするって言ってたけど、回収する際にどうやって回収するんだ? 流石に直に手に持つのは嫌だぞ」

「それに関しては、フィーネから専用のアイテムボックスをもらってる、その中に入れれば問題はないらしい」


 そう言うとスレイは頑丈そうなポーチを見せた。魔想体はこの中に入れればひとまずは安心らしい。とは言え回収するのは世界を滅ぼせる品だ,決して油断はできない。

 と、言ってると、サーシャとレインが何か買ってきた。


「えへへー、なけなしの金を使ってアボカドサンド買ってきちゃった、みんなで食べよ?」

「難しい話をするのもいいですが、今はこの状況を楽しみましょう」


 4人は楽しそうにする2人に呆れるが、確かに、今悩んでも仕方ないと思うと、アボカドサンドに手を出しては食事を始めた。


「美味しいなこれ。どこで買ってきたんだ?」

「向こうの売店、私がちょっとお願いしたら安くしてもらっちゃった」

「サーシャさん値切りがうまいのですよ、色仕掛けがまさか使えるだなんて」

「頼むから余計な真似は勘弁してくれよ…」


 値切りまでして買ったものを食うとは、なんだか世知辛い気持ちになる。そう言えば、とスレイはレインに言った。


「旅行ガイドに、目的地である生命樹のことは書いてあったのか?」

「ええ、なんでもこの樹は、この都市のエネルギー全般を賄っている樹で、何千年も前から立っているところから、神格化までされているそうです,その地下にはしっかりと根が生やされていて、この木が枯れることはないと言われてますね」

「…気のせいかな、この写真の光り具合より、薄く光ってるように見えるのは」

「写真写りの問題でしょう、気にすることはないと思います」


 本当かなぁとスレイが思っていると生命樹の光りが一瞬途切れるのが見えた。それはレインも確認していて、2人は先ほど言った言葉が本当だと確信する。ここでスレイはフィアネリスに連絡を取った。


「今の点滅を見たか?」

【はい、しっかりと、時間的猶予はありますが、この都市の寿命が刻一刻と迫ってるようですね。二泊三日の旅にしたのも,この都市の寿命を想定してのものです。ゆっくりするのもいいですが、本来の目的を忘れぬよう】


 フィアネリスの言葉で、スレイはこの都市の危機を改めて感じ取った。あの木に魔想体の影響が出れば都市中の植物が魔物化する、そうなればこの都市はおしまいだ。そうなる前に止めねばと、スレイは胸に留めておく。

 そうして対策チームが街を歩いていると、悲鳴が聞こえた。


「何が起きたんだ⁉︎」

「兎に角行くぞ!」


 声のした方へ向かうと、そこではこの都市の住民が植物の形をした魔物へと"なり損なう"のが確認されていた。そしてたまたまそこにいたのか、観光客が魔物を前にして腰を抜かしていた。


「ルーデンス! 観光客を頼む!」

「あぁ!」

「ダリル! レイン! サーシャ! ローランドは俺と共に応戦!」

『了解!』

「これより物語を転写します、戦闘の開始を!」


 5人が戦おうと構えた途端、魔法陣が敷かれ、下から上へと通ると彼らに物語が転写される。転写された物語は焔の騎士の物語のようだった。それぞれが焔を纏う槍や剣を持って、植物の魔物を前にして構える。


「よし! 戦闘開始!」


 スレイが時間操作で自身の体感速度を早め、連続で魔物を切り裂く。焔の攻撃のせいか、魔物は悲鳴を上げる。


「喰らえ! 植物の化け物が!」


 ダリルも遅れて剣を振るう。攻撃は魔物に通り、再び悲鳴を上げる。だが、攻撃が浅かったのか、反撃を受け、ダリルは右肩を貫かれてしまう。


「ぐっ!」

「ダリル!」

「この程度…!」


 貫かれた肩の部分を切り裂いて切り離すと、ダリルは上から剣を振り下ろし、魔物を一刀両断した。


「はぁあああっ!」


 サーシャは両手に剣を持ち、魔物のフェイタルポイントを剣で切り裂く。切り裂かれた途端、ざぱっと樹液が飛び出し、魔物は倒れた。


「貫け!」

「邪魔だ」


 レインとローランドは互いに槍を持ちながら魔物を貫いた。瞬間、業火が魔物に燃え盛り、魔物は暴れ回った。


「暴れ回ったら余計に痛む…!」


 槍が変形すると、火炎放射器が露出し、火炎放射が放たれた。魔物は火を受けて熱く燃え盛ると、そのまま倒れ込んだ。残すは最後の一匹となった、するとここでフィアネリスから伝達が入る。


【最後の一匹は生け捕りにしてください、できますよね?】

「無茶を言う!」


 だがやれなくはないとスレイは事前に渡された対策チーム用アイテムボックスからあるものを取り出した。それは、対象を捕縛する為のかなり網目のあるネットガンだった。

 それを魔物に構えるが、魔物は暴れ回っていて動きを止めてくれない。

 そこでスレイは指示を出した。


「サーシャ! あいつの足で致命的な部位を切れ!」

「はい!」


 スレイの指示を受けたサーシャは魔物の脚部のフェイタルポイントを両手の剣で切り裂いた。それにより足に力が入らなくなった魔物は倒れる。


「そこだっ!」


 魔物が倒れたところでネットガンが発射され魔物が捕縛される。魔物はネットを切り裂こうとするが、強靭な網に阻まれ、切り裂くことができない。


「捕獲完了だ、フィーネ、どうすればいい」

【魔物の回収はこちらが転移でしておきますので、対策チームの皆様は一度バスへお戻りください】

「わかった、みんな、バスへ戻るぞ」

「え? でもまだ門限には早いですよ?」

「フィーネからの指示だ、聞かなきゃ怒られるだけじゃ済まないかもしれないぞ」


 それを聞いてゾッとした対策チームは一度バスへ戻ることにした。

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