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ワールズストレンジャー  作者: 遊戯九尾
第一章 不愉快で愉快な旅の始まり
5/19

旅路にトラブルはつきもの

 7番街に降り立ったスレイ達6人は、バスの乗客の安全を確認する為、それぞれ二人組に分かれて行動する事となった。

 分かれた組は

 スレイ、ルーデンス

 サーシャ、ローランド

 ダリル、レイン

 この三組だった。全員が裏社会の人間ゆえ、何かトラブルを起こさないかスレイは心配になったが、ひとまず、ここは仲間を信じることにした

 そう言うわけで、スレイはルーデンスと共に歓楽街を歩く。


「お前はこう言うところ初めてか?」

「あぁ、まぁ、表通りを通ることすら滅多に無かったから」

「実は俺もこう言うところを通るのは初めてだ、7番街ってすごいところとは聞いていたが、本当なんだな」


 バスの乗客は今のところトラブルに巻き込まれている様子はない、できることなら自分たちも観光に興じたいところではあったが、仕事であると同時に裏路地暮らしの自分たちにはそんな金は全くなく、表通りでも人気のファストフード店でハンバーガーを買う程度しか金を持ってなかった。


「なぁ,スレイ、お前はなんでこの会社に入社しようって決めたんだ?」

「危険を承知で安定した暮らしを得たかったから…かな」


 スレイはテリヤキバーガーをもぐもぐと食べながらそう答える。するとルーデンスは笑ってこう答えた。


「俺も一緒だ、裏路地の暮らしに安全圏なんてないからな、だから危険を覚悟してもとここの面接を受けることを決めた。でもまさか強制的に入社させられることになるとはなぁ」

「魔想体の回収…だっけか、俺たちにできるんだろうか」

「今はそのことは気にしないでおいた方がいいんじゃないか? 今回はあくまで新人研修、気楽に行こう」


 先にハンバーガーを食べ終わったルーデンスがタバコを取り出すと、ライターで火をつけて一服する。

 そんな二人の持つ武器だが、スレイはなんと素手で、ルーデンスは手斧だった。


「そのタバコ、格安で手に入る違法の物だろ、こんなところで吸ってていいのか?」

「いいんだよ、周りの人間からすれば普通のタバコにしか見えないんだから、サツでさえ気づかないんだから」

「ルーデンスって意外と金は持ってるのか?」

「いいや、お前の考えるほど金は持ってはない、俺もお前と同じように、裏路地で貧乏暮らししてるわけさ」


 ふぅっと煙を吐きながらルーデンスは一服を続ける、反対にスレイはテリヤキバーガーを食べ終わるとEフォンで観光客の様子を観察し始めた。


「そう肩肘張らなくてもいいんじゃないか? 出番が来た時はフィーネ達が教えてくれるって」

「とはいえ、警戒しておくに越したことはない」

「あんまり考え事してるとパンクするぞ、もう一度言うが、気楽に行こう」


 ルーデンスがタバコを吸い終わると吸い殻の火を消してゴミ箱に捨てスレイと共に動きが起きるまで待つ。この二人のコンビは今の所上手い感じで回っているようだった。


 ーーー


 場所は変わって歓楽街のカジノ周辺、そこでは、攻防が行われていた。


「いーきーたーいー!」

「だめです。我々は仕事できています、勝手な行動は慎んでください」


 カジノで1発当てようとするサーシャをローランドが襟首を掴んで止める。気分屋なサーシャに厳格なローランドを組ませたのはどうやら正解なようで、めぼしいものがあったらその方へ走って行こうとするサーシャを、ローランドがつど止めにかかっていた。


「仕事仕事って、ローランドは7番街を楽しみたくないの⁉︎ ここで一山当てて大金持ちになった著名人だっているって観光ガイドに書いてあったのだよ!」

「仕事でなければ楽しんでいたでしょう、ですが今は仕事、我々は問題が起きたら対処にいかねばからない。それに、この街のカジノは合法に見えて違法のカジノが多い、下手に入ればイカサマで骨の髄まで搾り取られるでしょう」

「ええっ! ここ表通りなのに違法カジノがあるの⁉︎」


 サーシャは大声でそんなことを叫ぶ、今のをカジノの関係者などに聞かれたら難癖をつけられて大変な目にあうだろう。ローランドはすぐに周りを見渡すと,安全を確認し、サーシャに言った。


「声が大きいです、トラブルを自ら起こすのを避けたいのならばそのようなことは大声で口に出さないように」

「わかったよぅ…」


 サーシャをいさめると、ローランドはEフォンの端末で周辺の観光客の様子を見る。スレイ達の方もそうだが、今の所観光客でトラブルに巻き込まれてそうなのはいなかった。

 サーシャの持ち武器は面接の時にボロボロ落としていた小型のナイフで、ローランドの持ち武器は携帯しやすい小銃やハンドガンなんかの銃火器だった


「カジノなどの施設を避けて観光をしてるあたり、少なくとも観光客のほとんどはこの街の危険性を熟知してますね、安心します」

「裏路地に入っていく観光客は?」

「そちらも見かけません、皆都市の人間として模範的ですね」


 しばらくは安全そうだとローランドはため息を吐く。今はそれよりも目の前であちこちに行こうとするサーシャが心配だった。


 ーーー


 さらに場所は変わってダリルとレインのコンビ、彼らはスクランブル交差点付近で人の動きを見ていた。


「凄いですね、こんなにたくさんの人が動いているのを見るのは久々かもしれません」

「この程度で驚くな、目立つだろう」

「サングラスをかけて強面で話す貴方の方が目立ちますよ」


 そんな会話はしつつも二人もEフォンで観光客の様子を逐次観察していた。性格も何もかも真反対な二人だが、仕事はきっちりこなしているようで、ダリルは勤務態度こそ悪いがしっかりと周辺を見渡していて、レインは笑顔のままだが、その目は笑っておらず、人の動きをよく観察していた。


「全く、仕事内容がお守りとは、やりたくないな」

「僕は全然構いませんけどねー。戦う必要がなければよろしいですし」


 二人が持つ武器はダリルが剣で、レインはそれより少し大きめのフランベルジュだった。二人の雰囲気は1番街の裏路地では少し浮いていたが、7番街は浮いた人物が多かったため、気になることはなかった。


「いつも笑っているだなんて気色が悪いな、お前は」

「笑顔は崩さないほうがいいって思ってますからね、僕だって泣く事も怒る事もあるんですよ?」

「とてもそうには思えない」

「まぁ、僕は寛容ですからね」


 そうレインは自慢そうに言うが、ダリルにはその表情が胡散臭く思えた。


「思えば僕たちは元殺し屋と元警備員、真逆の存在ですよね、そんな存在が一緒に仕事するのも不思議な話ですよね」

「確かに、裏路地では珍しい、どの勢力でどの役職につくかなんてバラバラなのだから、どの職についても敵同士な俺たちが、こうして一つのチームを組んでいること自体、不思議だ」


 ダリルがタバコに火をつけて吸い始めると、レインは笑顔のまま振り返る。


「勤務中にタバコは不味いのではないんですか?」

「誰も見ていない、何をしても別に構わんだろう」


 すると全員のEフォンにメールが届いた。どうやら送り主はフィアネリスらしく、開いて覗いてみると、こう書かれていた。


【貴方達がどんな行動を取っているかは常に"見て"ますので、余計な行動は考えないほうが身のためですよ】


 そのメールを見て、ダリルはタバコを吸いながらも少し恐怖を覚えた。トラブル対策チームの中で、ダリルが一番フィアネリスに対して恐怖感を抱いていた。他のメンバーもフィアネリスに対して不思議な女性だと思っていたが、ダリルだけが本能的に彼女に恐怖を持っていた。

 彼女はただの天使じゃない。天使の中で最高位とされた熾天使が、こんな小さな旅行代理店の会社でバカみたいな物質の回収に携わる、明らかにおかしいと彼は思っていた。


「あのフィアネリスとか言う天使は、何者なんだ?」

「何者でもいいでしょう、どうせ僕達は彼女達会社にいいようにこき使われるんですし」


 レインが気軽にそう言うが、ダリルの中からは面接の時に向けられた彼女の視線の記憶が離れなかった。


 ーーー


 それからしばらく経ち、バスへの帰還時刻まで残りわずかとなった、多くの観光客が戻る中、スレイ達6人は観光客たちがバスに乗るのを見ていく。


「とりあえず、トラブルなく仕事は終われそうだな」


 そうスレイが言った矢先だった、観光客の一人がスレイ達に近寄ってきた。


「あの、すみません、ウチの子を見かけませんでしたか? さっきまで一緒に帰ってたのですが、飲み物を買ってる間にはぐれてしまって…」


 トラブルが起きなさそうだと言った矢先にフラグを回収してしまった。どうやら親子の観光客らしく、はぐれたのは子供のようだった。

 すると、ピロンっとまたメールが全員のEフォンに入ってきた。


【はぐれた子供の位置情報を端末に表示します。恐らくは、わずかな隙をついた誘拐かと、バスの発車時刻までに子供を取り返しに行ってください】


「わかりました、子供は俺たちが探します、お客様はバスでお待ちください」

「よろしくお願いします」


 そう言っては観光客は不安そうにバスの中に乗り込んで行った。Eフォンのマップ端末を覗けば赤い点が一つ、バスから離れて行っているのが見えた。

 再びメールが入る。


【バスに近い位置で誘拐されたのが幸運でしたね、そこからならばすぐにでも取り返しに行けます、急いでください】


「だ、そうだ、行くぞ、トラブル対策チーム、最初の仕事だ」


 その言葉と共に、スレイ達はマップの赤い光点目掛けて走り出した。

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