鉱石巨人
魔想体のなり損ないは鉱石の拳を握りしめると、スレイに拳を振るう。
「危なっ! こんなの喰らうと死ぬぞ!」
スレイは一歩下がって振るわれた拳を避け、接近すると、杭打ち機をなり損ないの体に突き刺す。
「ぶち抜け!」
なり損ないの体が杭で打たれ弾け飛ぶ。しかし、致命傷にはならなかったのかなり損ないはスレイに対して再び拳を振るう。だがその瞬間、氷の壁が攻撃を防いだ。
「無事ですか! スレイさん!」
「レイン! ありがとう!」
氷の壁を登ってレインがスコップ型のヒートブレードをなり損ないに突き刺す。なり損ないは振り払おうと必死にもがくが、レインは氷の針を形成すると、それも突き刺して耐えた。
「射撃で援護します、サーシャさんは相手の削岩を!」
「了解!」
ローランドが大型の釘打ち機を撃ち、釘が打ち込まれてヒビが入ったところに、サーシャがヒートブレード二刀流でフェイタルブレードの効果でなり損ないの体を削る。だが、それでも耐えるのか、なり損ないは身体中の鉱石を光らせると、サーシャに攻撃を行う。
「やばっ!」
「そうはさせません」
ローランドが前に立って硬化して盾になり、サーシャへの攻撃を防ぐ、しかし威力はあったのか攻撃が体に響き、ローランドは地に膝をつく。
「くっ!」
「情けないぞ! ローランド!」
ダリルがドリルランスを手になり損ないの肩に突き刺す。ダリルは肩を貫くも、レインともども振り払われてしまい、隙を作ってしまう。
「させるかぁあああっ!」
巨大なピッケルを持ったルーデンスがなり損ないの片目をピッケルで貫く。なり損ないは悲鳴を上げながら魔素を撒き散らすが、まだ油断はできない、なり損ないが咆哮を上げると、周囲に鉱石の魔物が現れた
「数が多い!」
「一匹ずつ確実にやるぞ!」
ダリルとスレイが背中合わせで構え、ドリルランスと杭打ち機をそれぞれ魔物に打ち込む。そこまで強力じゃないのか、魔物は倒されるが、数が多い、別の個体がスレイに飛びかかってきた。
「隊長!」
ローランドが釘打ち機で魔物をスレイに迫った撃ち抜き倒す。すると今度はサーシャの方に魔物が寄ってきた。
「わ…わ⁉︎」
「牛女!」
サーシャが逃げようとしたところをダリルが血を弾丸として飛ばし、魔物を薙ぎ払う。だが、血を使いすぎたのか、ダリルは膝をついた。
「ぐっ…血を補給しないと!」
「時間は作ります!」
輸血パックをダリルは飲む間、レインが氷の壁で魔物の攻撃を防ぐ、だが、一つ忘れていた、ここにはまだなり損ないがいたことを、氷の壁を乗り越えてなり損ないがレインとダリルの前に立つと、拳でぶん殴った。
「レイン! ダリル!」
「心配するな! お前は自分の心配をしろ!」
「けほっけほっ! あと少しタイミングが遅かったら死んでましたよ」
殴られて吹き飛んだ二人を心配してスレイは声をかける。運が良かったか、二人は無事で、粗悪品のアンプルを打ち込んで回復をする。
そうして戦う中魔物となり損ないは数と威力の暴力で周囲に暴れていく。状況は少し追い込まれていた。
そんな状況にまずいと思い、スレイはフィアネリスに連絡を取る。
「フィーネ! もっと強い物語はないのか⁉︎」
【残念ながら、そのなり損ないに対してはその物語が適正です。ですが……手はなくはありません】
話を聞いて一抹の希望を見出し、スレイはフィアネリスに問いかける。
「その手ってなんだ!」
【物語に秘められた力を解放する事です。その物語で起きた出来事を、模倣する、魔力と精神力を使いますが、ですが、盤上を覆す一手になるかと】
「…どうすればそれは使える!」
【自身に流れる物語の記憶を紐解くのです。そして、力を一気に解放するのです!】
「物語の…記憶を⁉︎」
スレイは己の中で流れる物語の記憶の奔流に身を任せる。その時、彼の中で、物語の中で特に印象的なシーンが思い浮かんだ。それは、採掘機を持った男が巨大な岩の巨人に向けて杭打ち機をぶち込むシーンだった。これが物語の記憶かとスレイは思い、その記憶の通りに身構える。
『どれほど強大な巌であろうと、わが杭は決して折れぬ…』
スレイは詠唱を始める。詠唱と共に、杭打ち機に光が宿り、先が光で鋭く尖る。
『この杭に打ち貫けぬ物などない、砕けぬ巌があると言うのならば砕いて見せよう、我が心を、この杭に込めて!!』
詠唱を終えると、眩く光る杭打ち機を携え、スレイはなり損ないに急接近する。危機を感じ取ったのか、なり損ないは魔物を盾にしようとするが、ルーデンスがピッケルで砕き、道を作った。
「行けっ! 隊長!!」
「ああ! 貫け!!『ストライクバンカー!!』」
ルーデンスが作った道を通りなり損ないの攻撃を避け、ゼロ距離まで接近すると、スレイは杭打ち機をなり損ないに打ち込み、炸薬を炸裂させた。その杭はなり損ないの心の臓を貫き、なり損ないは動きを止めると、ボロボロと鉱石の体が崩壊していき、最後には魔想体だけを残して砕けた。
「なり損ない撃破…魔想体を回収するぞ」
「はっはい!」
リリーが魔想体を専用のアイテムボックスに入れると、魔想体の影響を受けていた洞窟の内部が元の姿へと戻っていく。
キラキラ光っていた鉱石は消え、何もない空間のみになる。再びカンテラに火を入れ、スレイ達は魔想体の入ったアイテムボックスを見た。
そして、これでここでの任務は終了だとホッとすると、洞窟の外へと向かっていった。




