キラキラと輝く魔の結晶
魔想体回収のため、落盤した場所まで歩くスレイとルーデンス達。真っ暗闇の中をカンテラ一つで照らして進むが、周囲にキラキラと輝く鉱石があること以外暗闇が続くだけだった。
「本当にこの先にあるのか?」
「俺の見立てが正しければな」
ダリルが訝しむが、ルーデンスは確信を持って言うと、道の先へ行く。すると何もかもが岩で埋め尽くされたところへ辿り着いた。
「ここだ、ここで俺は、マイクと……右腕を失った」
ルーデンスは早速爆薬の設置作業に入る。硬い岩盤の隙間にダイナマイトを差し込んでいき、丁度いい量の爆薬を調節していく。
「俺たちは下がってたほうがいいか?」
「頼む、発破作業は命懸けだからな、爆風は来るし粉塵は舞うし、安全はなるべくあったほうがいい」
ルーデンスがそう言うと、ダイナマイトのコードを伸ばし起爆スイッチの方へコードを持っていく。スレイ達は全員ルーデンスの言う通り落盤地点から少し離れたところで待機し、ルーデンスを待つ。
「久々だな、こんな作業をするのは」
ルーデンスは一人そう言いながらコードを起爆スイッチに繋いでいく。そうしながらも、過去のことを思い返していた。
【マイク! へへっ! やったな! また鉱石ゲットだ! これで大金持ちだぜ!】
【どうせお役所にバレて豚箱行きだよ、それより、この金で今のうちに遊んでおこうよ】
「あの頃は、何もかもがキラキラしてたな、この鉱石のようによ」
鉱山街ハイウェスタンで不良をやっていたルーデンスは、街の町長の息子であり、同じ不良のマイクと共に鉱山に毎日のように行っては鉱石を漁り、遊び尽くしていた。
街の人はその事を放任していた。気にも留めなかったのだ、どうせ不良どもの遊びだと。だが、ある時、過ちを犯してしまった。
【マイク! マーイク! くそっ! 腕がぁ! マイク! 生きてたら返事をしてくれ!】
爆薬の調節のミスで爆発で落盤事故を起こし、マイクを死なせ、自身も片腕を失ってしまった。片腕を失ってなおマイクを呼んだが、失血で倒れ、気がつくと病院のベッドの上で片腕が義手になった状態で寝転がっていた。
【なぜ貴方だけが生きてるの】
【あいつを殺したのはお前の責任だ】
【金目的で荒らし回って、最後は片割れが死んで、片腕をなくすなんて惨めね】
周囲の人間からはたくさん罵声を浴びせられた。
自分達が遊び呆けていた時は知らぬふりをしてきたくせに、片割れが死んだ途端、雨のように罵声を浴びせてきた。
町長の息子を死なせた罪は重く、ルーデンスは街から追い出された。
それからと言うもの、ミズガルズで闇ギルドの冒険者になり、あらゆることをしてきた。人に話せないような悪事も無論した。
全てがどうでも良くなったのだ。親友の死というものでタガが外れ、善悪の判断なんてどうでも良くなった。だが、それでも親友を死なせた後悔は残っていた。その後悔は幻肢痛と共に残り、彼を時々襲った。
そんな彼が仕事を送っていたある時だった、元々暮らしていたこの街、鉱山街ハイウェスタンから人がいなくなったと話を聞いたのは。街にはもう働ける人も、採れる鉱石もなく、無価値と判断されたのか、街は捨てられたらしい。
ここに戻ってきた時に見えた骸骨は、恐らくはこの街の"生きていた"頃の亡霊だろう。
「……過去とケリをつけなくちゃな」
ルーデンスは起爆スイッチに手をかけ、下がるとスイッチを見る。
このボタンを押せばあの日落盤し、失った友人と片腕が吹き飛び、道が開かれるだろう。
ルーデンスがスイッチを押そうとしたその時だった。
「ルーデンス? そこで何をしてるんだい?」
「…マイク、なんでこんな時に、来るんだよ……」
ルーデンスの目の前にマイクが現れた。マイクはあの日の姿でルーデンスに語りかける。同時にルーデンスも片腕が生身の状態に戻っていた。
「よしてくれ……マイク、お前は死んだんだ、死者がこんなところないちゃいけない」
「何を言ってるんだい? 僕はほら、生きてるよ、それより何だいそこの爆薬、こんなところにブッ刺して、もしかして、その先にお宝があるのかい⁉︎」
「ここでお前は死んで! 俺は片腕をなくしたんだよ!」
ルーデンスは泣きそうな声で言い、震える手でスイッチを押そうとする。だが、押せない。魔想体の生み出した幻想があまりにも情に訴えてきて、スイッチを押せなくなっていた。
スイッチを押せば自分の片腕もろともマイクの死体も吹き飛ぶ。そうなればいよいよ本当に彼とお別れだ。
だが目の前の彼はそれをよしとしなかった。
「僕は死んでないよ、ここにちゃんといるじゃないか」
「違う! マイク! お前は、俺が! ……殺してしまった」
スイッチから指が離れ、ルーデンスはマイクを泣きながら見た。もう魔想体なんてどうでもいい、このまま終わらない夢に堕ちて、死んでしまっても構わないと思ってしまった。
その様子を見たのか、マイクはルーデンスに近づいては手を取ろうとする。
「さぁ、また一緒に鉱石を掘ろう、一緒に馬鹿騒ぎをしてさ」
「っ!」
マイクの手を触った時、とても冷たい感じが肌に感じた。とても冷たい、死の感覚。その感覚がルーデンスを襲った。
その時、ルーデンスはマイクの顔を直視した。これはマイクではない。マイクを模した死神だと。脳面のように普通の表情で話しかけるマイクに、ルーデンスは泣きながらも過去の幻想を振り払う。
「違う! お前はマイクじゃない! 過去の亡霊は、過去のままいてくれぇえええええっ!」
起爆スイッチに指をかけ、カチッと押し込むと、爆薬が起爆し、道が開かれる。同時にマイクの亡霊は恨むように言った。
「どう…して」
恨み節を残しながらも消えたマイク。落盤により塞がれていた道は、綺麗に開かれた。同時に、ボロボロの白骨死体と自分の片腕だったものが道に転がり、ルーデンスは道が開けた事を確認する。
「過去は…過去のままでいてくれ、未来にまで干渉しないでくれ」
ルーデンスがそう言ってるとスレイ達がやってくる。
「ルーデンス! 道は開けたのか⁉︎」
「……あぁ、開けた」
涙を隠すように拭うと、ルーデンスは立ち上がる。道の先を見ると、魔想体の高濃度の侵食があるのか、道の色が変わっていた。
「行こう……この街を、もう眠らせてやろう」
「あぁ、トラブル対策チーム、前進」
スレイ達は周囲に警戒しながら前進を開始した。その後方にはリリーがついてはキョロキョロと見渡しながらついてくる。
「この先に…魔想体が」
「恐らくは前回や前々回のように魔物化して襲いかかってくるだろう。リリー、お前は戦闘はできるか?」
「で、できません、私は後方要員なので」
「なら、下がっててくれ、こっから先は激しい戦闘になる」
リリーを少し下がらせ、スレイ達は進むそうしてしばらく進むと、少し広い空間に出た。そこは、壁全体がびっしりと鉱石に覆われ、幻想的な光を放っていた空間だった。
「驚いた、あの日、俺たちが盗ろうとした鉱石がこんなに綺麗だったなんて」
「あれ!」
ルーデンスが見惚れている中、サーシャが指差した先には、魔想体があった。スレイ達は警戒しながら魔想体に近づく。すると、スレイ達に気がついたのか、魔想体は周囲の鉱石を取り込み、巨大な鉱石の体を形成すると、スレイ達に向けて吠える。
「フィーネ! ショータイムだ! 物語を頼む!」
【ええ! これぞと言うべき物語を用意しましたよ!】
そうしてフィアネリスが物語を転写すると、するとそこにはドリルランスや杭打ち機、スコップ型のヒートブレードなどを装備したスレイ達が立った。
「これより魔想体の回収作業に入る! 総員! 死ぬなよ!」
『了解!』
スレイ達と魔想体との戦いが始まった。




