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ワールズストレンジャー  作者: 遊戯九尾
第四章 幻影鉱山街ハイウェスタン
18/19

吹き荒む荒野

 吹き荒む砂塵の中、右腕が義手の男が歩き続ける。ただ目的はなく、ふらふらと幽霊のように歩み続ける。


【なぜ貴方だけが生きてるの】


 周囲からそんな声が聞こえてくる。聞こえないフリをしながら歩こうとしたが頭から離れてくれない


【あいつを殺したのはお前の責任だ】


 そんなわけない、そう言おうとしても声が出ない、声帯から声を絞り出すことすらできない。それどころか、片腕の義手が本物の手のように疼き痛んだ。


【金目的で荒らし回って、最後は片割れが死んで、片腕をなくすなんて惨めね】

「違う! 俺は!」


 俺は決して、死なせるつもりはなかった。そう言おうとした時、目が覚めた。

 ベッドの上で目が覚めた男は右手を見る。何も変わらない義手だった。なのに、夢を見ている時、右腕に激痛が走っていた。


幻肢痛ファントムペインか…)


 男は夢の中の内容を鮮明に思い出し、右手の感覚を確かめる。痛みはもうない、しっかりと腕は動かせた。

 そうしていると、男のいる寮の中に通達が入る。


【次の魔想体が発見されました、対策チームの皆様はブリーフィングルームに集まってください】


 通達を聞くと、男はベッドから降り、制服を着ると、"仕事"へと向かった。


 ーーー


 ブリーフィングルームにスレイが向かっている最中だった。汗だくのルーデンスを見かけたのは。


「何か運動でもしてきたのか?」

「ちょっとな、トレーニングをしてきたんだよ」


 エレベーターに2人で乗って、目的の階に到達すると降りてはブリーフィングルームに着く。そこでは既にほとんどのメンバーが集まっていた。


「対策チームは…あとはサーシャさんだけですね」

「お待たせしましたぁ! 遅れてすみません!」

「いえ,ギリギリ予定時刻です。作戦の説明に入りますので座ってください」


 そうしてフィアネリスが全員座らせると、次の作戦の説明を始めた。


「今度の魔想体のある異世界はここ、所在地は鉱山街ハイウェスタンですね」

「…!」

「どうしたんだ?」


 ハイウェスタンと聞いてルーデンスが驚いたのをスレイは見逃さなかった。目を見開く彼に、どうかしたのかと聞く。


「いや…なんでもない」

「っ……ハイウェスタンですが、元々は金鉱山の街、ゴールドラッシュが行われていた街です。現在はその機能を失い、街として寂れましたが、魔想体が出現、鉱山内部に金鉱石が生成され、再びゴールドラッシュが始まりました」


 モニターに映るのは大量の金鉱石だった。それを見たサーシャは目をキラキラさせた。


「金がたくさん取れるってこと⁉︎ 行く行く! 私も一山掘り当てたい!」

「残念ですがそれは出来ない相談です。生成された金鉱石は魔素を持っており、非常に危険な物です。決して取ろうと考えないよう」

「そんなぁ」


 サーシャが嘆く中、ルーデンスは冗談かと思うように作戦を聞いていた。


「あり得ない…あの街は……」


 何か知っているかのように話すルーデンス。それを横目に見たスレイは彼の様子が変なことに気付いていた。


「バスの用意はできています。観光客も来ているので、準備ができたらすぐに来てください、では、ブリーフィングを終了します」


 そうしてブリーフィングが終わり皆が出ていく中、スレイとルーデンスだけが取り残された。


「なぁ、ルーデンス、鉱山街ハイウェスタンって…」

「…俺の故郷だ」


 ルーデンスの故郷と聞いて、スレイは息を飲む。

 するとルーデンスはこんなことを言い出した。


「俺は元々、その都市の炭鉱夫をやってた、違法な炭鉱夫でよ、悪さをして稼いでは、バチが当たって友人とこの右腕を失った」

「友人って…」

「……そこに関しては話す必要性はねぇよ、もう過ぎたことだ」


 そうしてスレイとルーデンスは話を終え、バスへと向かう。バスには既に観光客が乗り込み始めていて、スレイ達も遅れて列に並ぶと、バスの中に入った。慣れてる手つきでシートベルトを付け、対策チームの全員はいつでも出られるようにする。


「ご乗車ありがとうございます。本日は本バスのご利用、並びに旅行にご参加いただき、誠にありがとうございます。私は熾天使のフィアネリスと申します。お気軽にフィーネとお呼びください」


 いつもの自己紹介を終え、フィアネリスは旗をパタパタ振ると行き先の説明に入った。


「さて、当バスの目的地は鉱山街ハイウェスタンです。西部劇のような街並みが特徴的な街となっております。ゴールドラッシュもあった時期があり、現在も金鉱石が鉱山内にありますが、取ることは禁じられてるので、採掘はおやめください、では、これより出発します、ボンボヤージュ♪」


 リコッタが運転を始めると、バスが動き始める。そして、都市をしばらく走ったところで、フィアネリスが転移の説明へと入った。


「これより当バスは異世界転移を始めます。多少揺れますのでシートベルトをしっかりと着用してください。また、転移酔いに慣れない方はお申し付けくださいね」


 そうして説明を終えると、フィアネリスはカウントダウンを始める。


「それでは転移します、5、4、3、2、1、転移開始!」


 異世界転移が始まりスレイ達は体が揺さぶられる。が、何度も経験してると慣れてくるのか、今回はそこまで不快感は感じなかった。そうしてしばらく転移をしていると、転移空間から出た。外に見えたのは所々にサボテンが生え、荒野になっていた、よくある西部劇で見るような景色だった。


「皆様、前方に見える街が、鉱山街ハイウェスタンになります、当バスは数十分後、ハイウェスタンに降り立ちます。この街の人たちは非常に好戦的ですので、バスから降りた際は、私から離れずに行動をお願いします」

「そんなに荒っぽいのか? この街は」

「あぁ、金の為ならなんでもするようなゴロツキがいる街だからな」


 フィアネリスの説明を聞いてスレイはルーデンスに聞く。ルーデンスは古巣のことを思ってか苦笑いで答えた。


「けど、この街はもう無いんだ」

「無い?」

「着いたらわかる」


 ルーデンスに言われるがまま街に着くまで待った。そして街に着くと観光客達が降りていく。そんな中、ルーデンスは驚いていた。


「嘘だ……なんで、なんで街がちゃんとあるんだよ!」

「?」


 ルーデンスの反応にやはりスレイは疑問を隠せなかった。対策チームがバスから下車する。するとそこは完全な西部劇の街並みで、人もそれなりに歩き回っていた。


「なんで…街が残ってるんだ」

「ルーデンス、一体どう言うことなんだ、説明してくれ」

「あぁ、鉱山街ハイウェスタンは寂れたとブリーフィングで言ってたな。あれは嘘どころかより酷い話になっている」


 ルーデンスの話を、スレイは黙って聞く。すると彼はこう言った。


「俺の知るハイウェスタンは、ゴーストタウンになっていた」

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