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ワールズストレンジャー  作者: 遊戯九尾
第三章 高脂菓子王国スイーティーパラダイス
16/19

異形の菓子獣

「我が国で何をしようとしてるのだ、異郷の旅人よ」


 その言葉に、スレイ達が圧されていると、桐枝が答えた。


「魔想体の回収にきたっす! アンタの企みもここまでっすよ、国中を巻き込んでこんなお菓子を作って、タダで済むと思うな!」


 桐枝が剣を抜くと、その剣にスレイ達は見惚れた。美しい刀身でありながらも、大き目の刃を持つそれは、御伽話の聖剣のようであった。


「お前は……そうかそうか、死神部隊の1人か、イストリアにも援助をして、ここの菓子を届けようとはしていたが、何故か断られた……さてはお前達、最初から菓子について気づいていたな?」

「ああそうっすよ! 頂く前に見識のある奴に止められたっす! だからきりちゃん達はここにきた!」


 桐枝はすごい度胸だった。一国の王を前にして圧に負けずに剣を掲げるその姿、その姿は英雄の如しだった。


「だが、この物質は渡さない! この物質が、より良いお菓子と国の繁栄を生むのだから!」


 国王が魔想体を手に取ると、その魔想体から光が溢れ出し、国王の体が変化する。全身をホイップクリームの毛皮で満たし、チョコレートの角を持つ怪物へと変わった国王は、スレイ達を見下ろしては言う。


『絶対に、渡さんぞぉおおおおお!』

「総員! 戦闘開始!」


 物語の転写が行われ、スレイ達は戦うパティシエの姿になると、国王と正面からぶつかった。


「やぁあああ!」


 まずはサーシャが包丁で切り掛かった。しかし、ホイップクリームの毛皮がそれを阻むと、攻撃を無効化する。


「毛皮でガードされてるなら!」

「能力ならどうだ!」


 レインが氷の能力を、ダリルが血液の能力を使うと、2人の攻撃が国王を襲い、ホイップクリームを凍らせると同時に血の弾丸が体を穿った。


「効いてる!」

「斬撃には強いけど、どうやら貫かれたりされるのは効くようだな!」


 再び物語の転写が行われる。スレイ、ルーデンス、サーシャ、ローランドは焔の騎士となり、槍を持っては突撃した。槍は突き刺さるが、その瞬間、獣へと変わった国王に火炎放射を行い、ホイップクリームごと焼き払う。


『ぐぁああああっ!』

「確実にダメージは入っている!」


 ローランドが肉体硬化をして、接近するが、ここで国王がホイップクリームを飛ばしてきた。


「っ!」


 本能的にローランドは回避する。すると、ホイップクリームが落ちたところがドロドロに溶けてしまっていた。


「酸性のクリームだと⁉︎」

「あんなの当たったら私たち死んじゃうよ!」

「死ぬことを考えるな! 生き延びてこのクソッタレなケダモノを潰すことだけを考えろ!」


 そうしてスレイ達が戦う中、桐枝は歩きながら言った。


「そうっす、死ぬことを考えない、こんな化け物ぶっ潰して生き残って笑い合うことを考えるっす」


 桐枝が片手に持つ剣に光を宿すと、まっすぐ飛び込んだ。


「叩き切れ! エルメイル!」


 エルメイルと呼ばれた剣を握り、それを振るうと、光が室内を明るく照らし、その光の斬撃で、国王の体が切られた箇所のホイップクリームごと吹っ飛んだ。


「すごい……あれが、世界を救ったと噂される部隊の1人…」

「なーにぼさっとしてるんすか、勝負はまだまだこれからっすよ

「あ、あぁ!」


 スレイ達が槍を持って突撃する中、国王が再びホイップクリームを飛ばしてきた。全員がそれを回避するが、ルーデンスだけが遅れた。


「っ! ぶねぇ!」


 義手が溶けて無くなり、片腕が使えなくなる。だがやれることはあるとルーデンスは槍を国王の体に思いっきり投げたのだった。


『ただの人が! 魔想体の力に抗うなどぉおおおっ!』


 国王は体を槍で貫かれ、痛みで声を上げながら、頭のチョコの角を振るった。その一撃で、ルーデンスは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「ルーデンス!」

「バカ! よそ見をするな!」

「っ⁉︎ なっ!」


 ルーデンスに気を取られているうちに、スレイには大量のホイップクリームが降り注いでいた。今から回避しても間に合わず、全身を溶かされるであろう。そう思って諦めた。

 だが、死ぬことは無かった。目の前を光の壁が覆ったからだ。ホイップクリームが光の壁に浄化され、スレイは助かる。


「大丈夫っすか?」

「あ、あぁ…」

「えへへ、貸し一つっすね、まぁでも、死なれちゃきりちゃんだって悲しいし、助けるんすけどね!」


 桐枝は剣を再び握りしめると、目の前の敵を見た。スレイも立ち上がっては2人で武器を構える。


「俺が奴のドタマを貫く、桐枝はさっきの光の攻撃をもう一度頼む」

「分かったっすよ、じゃ、行きますか!」


 国王が前足を振り下ろして2人を潰そうとした時、2人は動き出した。スレイは槍についた火炎放射器で国王に牽制し、桐枝は剣から光波を飛ばし、ダメージを与える。2人で挟み込むように移動し、国王を捉えると、スレイは飛び上がって国王の頭部にしがみついた。


「くたばりやがれぇえええええっ!」

『あぁああああああ!』


 国王の頭部に槍を突き刺し、火炎放射で顔面を焼き尽くす。そうしているうちに桐枝が剣に光を溜めると飛び上がって剣を振るった。瞬間、剣から眩い光が放たれ、国王の体が両断される。

 それにより力尽きたのか、国王は倒れ、元の姿へと戻っていった。同時に、魔想体も国王の体から出てきて瘴気をなくし、淡い光を放つ。

 すぐにスレイは魔想体を回収し、アイテムボックスに押し込んだ。これでこの世界での魔想体の影響はもうなくなるだろう。


「我が国の…繁栄が……」


 国王が倒れた状態で言う。それを桐枝は近づくと言った。


「アンタは後日、この世界のイストリアから罰を受けるっす、覚悟しておくっすよ」

「そんな………私は、この国の王だぞ…」

「王であっても1人の人間、罰は平等に降るっす」


 そうして国王は力無くうなだれ、桐枝に両手に手錠をかけられるのだった。


「これでおしまいか?」


 スレイが周りの状況を見て、そんなことを言う。


「うん、これでおしまいっす、皆お疲れ様っした」


 スレイの疑問に対し、桐枝はニッと笑っては、スレイ達は、誰も死なずに事態が収拾したことを喜ぶのだった。

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