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ワールズストレンジャー  作者: 遊戯九尾
第三章 高脂菓子王国スイーティーパラダイス
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深まる疑惑

 翌日、昼になって集まることを決めたスレイ達は、桐枝が指定した場所へと向かった。


「なんだ、あの女、呼び出しておいてどこにもいないじゃないか」


 ダリルが怒って帰ろうとすると「ちょっと待つっすー!」と遠くから聞こえてきた。


「いやぁ、ホテルのタイマーをかけるのをうっかり忘れてたっす」

「遅いぞ、それで、今から何をするんだ?」


 ダリルが桐枝に詰め寄るが、桐枝はまぁまぁと落ち着かせる。


「今からやること、そっすね、情報共有でお茶会でもするっす」


 すると桐枝は近くの席に座ると、慣れた手つきでアイテムボックスから茶器を出し、スイーツを出すと紅茶を入れ始めた。スレイ達も最初は呆気に取られていたが、それが彼女なりのやり方なのだろうと納得すると、お茶会に参加することにした。


「この紅茶、ウチの課長がよく好んで飲む紅茶で、スイーツとよく合うんっすよ、あ、今回持ち出してきたスイーツはミズガルズの一等地に立つ高級スイーツ店のスイーツなので問題はないっす、ぜひ食べていただければ」


 そう言って桐枝は対策チームの皆に紅茶と菓子を振る舞う。サーシャは高級菓子に舌鼓を打っていたが。他のメンバーは周囲を警戒しながら茶を飲んでいた。


「そう警戒しなくても、王国の兵士はここには来ないっすよ、こう見えて人避けのお札を持ち込んできてるので」


 スッと服の裏を見せると、桐枝に人避けの札が貼られたいた。用意は周到らしい。


「さて、互いに情報交換タイムとしますか、WS社の人達は王様と謁見したんすよね、何かわかったことはあったっすか?」

「特には……強いて言うなら直産品の魔想体の影響を受けたお菓子を客人に食べさせることに躊躇いがなかった、それに…」

「それに?」

「その菓子を作ることも,まるで認めているようだった、高カロリーになればなるほど美味しいと」


 ふむふむなるほどと桐枝は頷く。メモ帳に雑に字を書いては記録を取りながら、桐枝は紅茶を一飲みした。


「このスイーツ本当に美味しい! 高級店って言ってたけど、ミズガルズのどこで売ってるの⁉︎」

「1番街っすよ、ほら、この店っす」


 Eフォンで桐枝がサーシャに店の情報を見せるが、ダリルが足を鳴らすと、あーはいはいと桐枝は通常営業に戻った。


「イストリア側で分かったことは、国王は魔想体の影響を強く受けているようっす。恐らくは、魔想体を見つけ、工場に持ち込んだのは国王陛下っすね」

「魔想体に触れていると、精神にもそんな影響が出るのか?」

「そっすね、これを見て欲しいっす」


 それはスイーティーパラダイスの国中を示すマップだったが、前回のラップローズと違い、スイーティーパラダイスは工場地帯のみ魔素が満ちていた。同時に桐枝は工場の映像を見せる、するとそこでは、廃品となる切れ端のお菓子を肉の塊のように太りながらもバクバクと食べる人の姿が見えた。


「知ってると思うっすけど、魔想体は人の精神にも影響を及ぼすっす。こんなふうに、人間の形を成してない姿にになるまで食べ続ける者も出れば、国王のように、それらの菓子を禁止せず放置する輩もいるっす」

「それを止めるには、やはり魔想体の回収が必要なのか?」

「……残念っすけど、人の精神への影響は、魔想体の回収程度じゃ収まらないっす。相応に喝を与えなければ…

「…そうか」


 スレイは魔想体の改修で全てが解決されると思っていたが、そこまではいかないのかと少しがっかりした。だが、魔想体の場所はわかっている、この国の問題を取り除くには、あとはそれの回収さえしてしまえばいいとスレイは思った。


「忍び込む計画はどうする?」

「今夜実行するっす。誰にも気づかれずに終えたいから手早く行くっすよ」

「わかった」


 菓子を食べ、茶を飲み終えると、スレイ達は立ち上がってバスの方へ戻ろうとする。ふと、桐枝の事が心配になったのか、スレイは振り返った。


「どうかしたんすか? 何か顔にでもついてたっすか?」

「……いや、なんでもない」


 そうしてバスの一同はバスの中で作戦決行の夜まで待つことにしたんだった。


 ーーー


 夜、作戦時刻となり、スレイ達は目的の工場の前に集まる。桐枝は先に来ていたのか、彼らを待っていた。


「あっ来たっすね、待つことなく来てくれて嬉しいっす」

「時間にルーズなのは良くないことですからね,ちゃんと時間通りに来るのが鉄則ですから」


 レインがEフォンの時計を確認しながらそう言う。


「目的の魔想体はここにあるんだな?」

【はい、確かにここです、しっかり回収をよろしくお願いしますね】


 フィアネリスと連絡を取ると、桐枝が不思議そうな顔で見てきた。


「何だ?」

「今のってフィーネ先輩っすか?」

「そうだけど……そう言えばフィーネもお前のこと知り合いだと言ってたな」

「確かに知り合いではあるっす、にしても変っすね、この任務にフィーネ先輩がつくことはなかったはずなんすけど、しかもWS社のバックアップに着くだなんて」


 うーんと桐枝が悩む。だが考えてても仕方ないと、仕事に入ることにした。


「なるべく音を立てずに、ゆっくり行くっすよ」

「わかった」


 桐枝がピッキングで工場の門の鍵を開け、一同は中に侵入する。中でケーキや洋菓子なんかを作られていく光景を目にするが、その奥に立つものを見た途端、一同はゾッとした。


「もっとぉ…お菓子をぉ…」


 人と呼べないくらいにぶくぶく太った人間が、素手で菓子の切れ端を鷲掴みにしては食べていく。昼間に見たEフォンの映像通りの光景が広がっていた。


「驚いてる暇はないっすね……皆急ぐっすよ」


 桐枝は驚いてた自分を正すと、対策チームを連れて工場の奥深くまで入る。


「警備があるって言うけど、人気はないんだな」

「……いや、変っす、昨日潜入した時は、これほど静かではなかったっす、この先、何かが待ち構えてるっすよ」


 桐枝の言葉に対策チームは警戒を強める。そうしてしばらく進むと、外から見て紫色に発光する部屋を見つけた。


「ここっすね、今ドアを開けるっす」


 もう一度ピッキングでドアを開けて,部屋の中に入る。するとそこには、憎きあの物質があった。


「魔想体……」

「そうだ、その物質が、我が国に繁栄をもたらしてくれる」


 声が聞こえ、部屋の奥を見ると、そこには、この国の国王陛下がソファーに座っていた。


「なっ⁉︎ なんで国王がこんなところにいるんすか⁉︎ 視察は昨日だったはずじゃ!」

「怪しい虫が入り込むだろうと考えて今日はここで待ち構えておった、そうしたらお前達が引っかかったと言うわけだ」


 国王が立ち上がり、前へ進むとスレイ達を見下ろす。


「我が国で何をしようとしてるのだ、異郷の旅人よ」


 スレイはこの状況に。嫌な予感を察していた。

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