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第6話 応接室①

応接室には年齢も性別もバラバラな

5人の男女がいた。


部屋の丁度真ん中にテーブルと、

それを挟んで2つのソファーがあって、

1つには年配の男と若い女が

もう1つには年老いた女が座っていた。


年配の男は70代だろうか。

頭頂部に辛うじて残った髪が寂しそうだった。

その頭髪とは違って太いゲジゲジ眉毛。

その下には出目金のように丸い一重の大きな目。

そして脂ぎった団子鼻。

血色がよく、

丸々と肥えた体。

開いたジャケットから見える

ワイシャツの前のボタンが

今にも弾けそうだった。

老いてなお衰えず。

見るからに男性ホルモンが多そうな男だった。

さしずめ「老いた豚」といったところか。


男の隣に座っていたのは

水商売風の女だった。

明るい色の髪は肩よりやや下のラインで

ふわりと巻かれていた。

前髪はアップでまとめられていて

眉は細く整えられていた。

長い睫毛に赤いアイシャドゥの引かれた

キリッとした二重の目からは

気の強さが窺えた。

細い鼻。

その下の大きな唇には

真っ赤な口紅が塗られていて

それが官能的だった。

胸元が大きく開いた赤いワンピースは

今にも下着が見えそうなほど短く、

そこからは艶めかしい白い太腿が見えた。

派手で若作りをしていたが、

30代半ばと思われた。

隣の男との組み合わせは

まるでお店に来た客とホステスのようだった。

こちらはそのまま「娼婦」でいいだろう。


そして男の向かいに座っている老女を見て、

僕は一瞬、言葉を失った。

それはまさしく

物語に出てくる「魔女」のようだった。

白い髪の所々が紫に染められていた。

恐ろしく化粧の濃いその顔は

雪のように真っ白だった。

長い眉の下の細い目は鋭く、

それを隠すかのように

銀縁の小さな丸眼鏡を掛けていた。

大きな鷲鼻に

唇には髪と同じ紫の紅が塗られていた。

彼女は小柄な体を黒ではなく

真っ白なドレスで着飾っていた。


そして部屋の奥に

ポツンと立っている40代のくらいの女。

肩で切り揃えられた黒髪に

くるりとした目に丸い鼻。

厚い唇というアンバランスな容姿だった。

化粧っ気がなく、

その服装も上下ともに黒のジャージで

それが彼女を地味に見せていた。

先ほどの「娼婦」とは大違いだった。

身長は女性としては高く、

その体つきはやや痩せていた。

どことなく幸が薄そうな印象を受けた。

とりあえず「未亡人」とでもしておくか。


そして最後に。

車椅子に乗った少女。

長い黒髪を頭の後ろで一つにまとめていた。

大きな目にスッと通った鼻筋。

化粧はしていないものの

小さな唇には薄いピンクの紅が塗られていて、

幼さの残るその顔立ちには

どことなく品があった。

彼女は淡い水色の

カジュアルなドレスを着ていた。

「天使」

そう呼ぶことに異を唱える者はいないだろう。

しかし僕は改めて考え直した。

彼女の車椅子が神の罰、いや嫉妬ならば

彼女には「堕天使」と名付けた方が

ぴたりと当てはまるかもしれない。

僕は満足げに頷いた。


その時、

彼らの視線が

僕を捉えていることに気付いた。

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