浄霊ラジオ。
『夏のホラー2022』の参加作品です。
休日に雨が降ると、僕はラジオを持って散歩に出かける。
明る過ぎると見えない物や、騒がし過ぎると聞こえない声を探して。
今日もラジオのノイズに混ざって聞こえてきた小さな声。
路地裏、でっかいビルの前、オンボロアパートに飲食店の勝手口…。
声が大きくなる場所を探して歩く、歩く、歩く…。
ほら、いた。
近づく僕に気付いた“それ”は、ラジオを通してか細く声を上げる。
―たすけて。
僕は精一杯の笑顔を見せて、線香1本、そっと供える。
「大丈夫だよ。もう苦しくない。」
助けを求める声が少しずつ小さくなり、“それ”の姿も消えていく。
「次はちゃんと、生きているうちに言うんだよ。」
―ありがとう。
線香が消えるとラジオの音はまたノイズに戻り、僕は一粒、涙をこぼす。
休日に雨が降ると、僕はラジオを持って散歩に出かける。
届かなかった、助けを求める声を探して。
お読みいただきありがとうございました。
優しい雰囲気が書ければと思いましたが難しいですね。
楽しんでいただければ幸いです。