極道の相談
4月30日となり霧川と恋宮は学校から帰ることとなった。
「んー!!締切にも間に合ったし!遊びに行きませんか!?」
「もうすぐゴールデンウィークだろう。その日にめいいっぱい遊ぼう」
「はい!」
学校から出ようとすると黒い車が止まっており1人の若い男が立っていた。
「霧川さんですね」
「ん?」
「あなたが先月助けた方の使いです……お連れの方もご一緒で構いません。屋敷へ来ていただけないでしょうか?」
「……あの老人の?」
「知り合い?」
「絡まれてる所を助けた。なんか美味いもんを食わせてくれるかもよ!」
「ポジティブねぇ……」
2人は車へ乗って屋敷へ向かうことになったが部屋で待っていて気づく。ここはヤクザのいる屋敷だと。2人はヤクザに囲まれながら小声で話し合う。
「ちょっと!ヤクザ!ヤバいって!モロ本だって!」
「落ち着け!別に悪いことしたわけじゃない。いい方向へ考えよう。俺たちはもしかしたら盃を交わすことになるかもしれないぞ」
「どこがいい方向なのよ!?悪い方向じゃん!」
「大丈夫……俺を信じろ。なんなら不安を和らげてやる」
「不安を和らげる?」
霧川は姿勢を正して笑顔で言う。
「整いました!ヤクザとかけまして、労働と解きます!」
「その心は?」
「どちらも組合です」
「上手い!ってなぞかけしてどうすんの!?」
するとヤクザ達がそれに対してキレた。
「何が謎かけだコラァ!!」
「労働組合と一緒にすんじゃねぇ!」
「ひぃ!ごめんなさい!!」
「やめんか!」
ヤクザ全員が老人を見て黙り込む。
「全員部屋から出ろ。透はここにいろ」
「はい」
ヤクザ達が部屋から出ると4人だけで話をすることになった。
「この前はすまんかったな。ワシの名前は蜂山政宗。こっちは息子の蜂山透じゃ」
「蜂山?」
「蜂山って冷多お兄さんの」
「どうしたんじゃ?」
「いえ……それよりも大丈夫ですか?あのあと」
「心配せんでよい!ウチのもんがようやく迎えに来てくれたからのぅ。それよりお前さんらは天神学園の生徒じゃったんじゃな?」
「今年入学したばかりですけどね」
「学校では何を?」
「普通の勉強ですよ。あとは成果報告ですね」
「最近じゃクラスメイトや先輩の相談や悩みを解決してたけどね」
「相談?」
「好きでやってるわけじゃないんですけどね」
「……なら相談してみようかのう……」
「親父。まさかソフィアを……やめとけってただでさえ俺たちにも口聞いてくれないんだぞ?」
「ソフィア?」
ソフィア・蜂山。ロシアから日本へ移住したが一言も話さずに部屋へ篭っているとのことだ。
「ロシアから……日本へ?」
「ああ。ソフィアの母親が死んでな……父である。ワシが引き取った。しかしいくら話しかけても返事もせんし、話そうともしないのじゃよ」
「ちゃんと俺たちは勉強したのに……なんでだ……」
「……様子を見に行きましょう」
2階にあるソフィアの部屋の前へ行くと何人かのヤクザがロシア語辞書を使ってロシア語を調べていた。
「……何してんの?」
「ああやってソフィアが望む物を調べて部屋の前へ置いておるのじゃ」
するとドアの隙間から紙が出てきた。それを見るとロシア語で何か書かれていた。
「すぐに調べろ!」
「もう5時だから晩御飯じゃねぇか!?」
「馬鹿野郎!!きっと5時に放送するテレビ番組だろう!」
「ソフィア嬢は日本語ができねぇんだぞ!この野郎!!」
「うるさいだってさ」
その紙を読み上げたのは霧川であった。
「うるさい?誰に向かって言ってんだ!この野郎!!」
「俺じゃなくてこの紙に書かれている内容だ」
「霧川くんロシア語話せるの?」
「他に中国語、英語、韓国語、ベトナム語、タイ語、フランス語、スペイン語、イタリア語を話せる」
「何それスゴ……」
するとヤクザ達が紙に指をさした。
「じゃあこれはなんて書いてあんだ?」
「……ココアが飲みたい」
「じゃあこれは?」
「スナックが食べたい」
「これは?」
「晩御飯は肉料理じゃなくて魚料理がいい」
「マジ……ぽいな」
「ロシア語できるんならお前ここで訳してくれねぇか?」
「ロシア語できる人はいないわけ?」
「あいにく日本語しかできねぇ」
「俺もだ」
「俺はラテン語なら話せる」
「なんで話せるんだよ……じゃあ俺がソフィアと話をつけてくる」
ソフィアの部屋の前に立ちロシア語で話す霧川。
(ソフィア。母親が死んで日本へ移住するはめになって……しかもヤクザの家に住まわされていろいろ悩んでんだろう?違うか?お前に必要なのはお前が1番わかってんじゃないのか?今どうすべきか考えろ)
するとドアの隙間から紙が出てきた。
「あとはこの現実を受け入れる覚悟を……」
ロシア語で睡眠薬50錠と水を要求してきた。その内容を見て冷や汗をかく。
「あれ〜おかしいなぁ」明らかにこれ自殺する気だよな?
「どうしたんだ?紙にはなんと!?」
「と、とりあえず水を用意してくれ」これは重症だ。仕方ない。この手は使いたくなかったが。
屋敷の屋根裏にて
「ソフィアの部屋へ侵入して話をつける」
「やってること高校生のしてることじゃないよね?しかもなんでジャージに着替えないといけないの?」
「トンキに行ったけど……クノイチと忍者コスプレが売り切れだった」
「クノイチコスプレがあったら私に着せるつもりだったの?」
「雰囲気は大事だろ?」
「そんな雰囲気いらない!でも屋根裏なんて入ったの初めて……薄暗くて汚い。というかこの黒い砂粒は何?」
「いや、これネズミの糞だ」
「最悪……」
「いや……目の前に最悪なヤツがいるぞ」
目の前に1匹のネズミがいた。
「いやぁぁぁぁ!!ネズミ!!帰ろう!帰ろう!」
「いや……やめといた方がいいぞ。後ろは既に包囲されているぞ」
「包囲って……」
後ろを見るとネズミの大群がいた。
「あ……あ」
恋宮は青ざめながら涙目になると霧川はいい笑顔で言う。
「叫ぶか?」
「うん。叫ぼうか」
2人は腹の底から叫んだ。
数時間後 なんとかネズミの大群から逃げ切り庭で寝転がる。すると恋宮は言う。
「はぁはぁ……諦めて帰ろう」
「はぁはぁ……この状況で帰れるか?ヤクザに何されるかわからない。俺たちには最強の味方がいるだろ?しかも今回は一石二鳥だ」
「最強の味方?」
SATの訓練場にて冷多はSAT達を指導していた。
「お前らそんな走りで敵を殺すことができると本気で思っているのか!?甘いんだよお前らは!!」
SATのメンバーはそれぞれ腕立てをしながら思う。
SATは別に人を殺す集団じゃねぇっつーの!!
敵って日本を戦場かなんかと勘違いしてんじゃねぇの?
腕持ってかれて頭がおかしくなったんじゃねぇのか?
と言いたいが言えない……なぜなら。
ショットガンを持っているんだぁぁ!!
と思う一同き対して、なぜか冷多はショットガンを持って指導していた。
何考えてんだよコイツ!?
持ってるだけで恐喝だろ!?
教官の指導の方がよかった……木刀が懐かしい……。
白が現れて冷多に話しかけた。
「霧川さん。弟くんから電話に出してくれと」
「論外だ」
「しかし蜂山組に関連した話らしいです」
舌打ちをして電話に出る。
「俺の願いを無視とは…よっぽど死にたいようだな」
《冷多兄!実はカクカクシカジカで……》
「……偶然にもほどがあるだろ。しかしなんで俺に連絡してきた?」
《邪魔をするなと言われたけど……手伝うなとは言われてない》
「……蜂山組にいるのだな?仲間を連れてそちらへ向かう。SAT共!!今日の訓練はここまでだ!」
「「「「「「イエェェェェェェ!!」」」」」」
とまるでアイドルLIVEを楽しむ若者のように喜ぶ一同。冷多はアサルトライフルを構えると全員黙り込んだ。
「白…蜂山組を1人くらい殺してもいいよな?」
「麻薬を見つけてからにしてください。でもいきなり来て怪しまれないでしょうか?」
「怪しまれたら行動に移る」
「慎重に行動してください。向こうはソフィアとかいう女の子を部屋から出したいんですよね?」
「それっぽい格好をすればいいってことか……ならアレしかないな」
「そうですね。トンキへ行ってきます」
「なんでだよ……いや、ヅラを買いに行くぞ」
更に数時間後
「ねぇもう19時だよ。お腹空いた」
「すぐに来るって言っていたんだが」
するとヤクザから霧川の知り合いと言われ全員でお出迎えをする。
「初めまして弟が世話になっているな。霧川輝だ」
霧川冷多 偽名霧川輝
金髪のカツラにスーツ姿でホストっぽい見た目。
「你好!李尊寿です!」
白陽 偽名李尊寿
白いチャイナ服にちょび髭
「こんばんは……アニメ大好きゴ◯タ」
衛宮染 偽名ゴ◯タ
緑の肌に、丸いつけ鼻にノースリーブのシャツ。
「どうも……高校生の◯◯瀧です」
鉄熱作雄 偽名◯◯瀧。
あの有名なアニメ映画の主人公と同じ高校の制服。
「……勝利。ソフィアとかいう小娘はどこだ?」
「その前に……誰もいないところで話さない?」
誰もいない庭にて
「それ変装なの?」
「ちゃんと偽名は使っている」
「輝兄の名前をそのまま使ってるじゃん。その格好だと輝兄狙われるぞ」
「あんなヤツ死ねばいい」
「気持ちはわかるけどさぁ……白さん」
「完璧な変装だろ?」
「ハッキリ言うなら……中国人の格好をした中国人みたい」
「どういうこと!?」
霧川は衛宮と鉄熱を見るが無視したが2人が突っかかってきた。
「俺の格好に何か感想はないのか!?完成度高いだろ!?」
「変装する気ねぇよな!?肌が緑色の変装なんて聞いたことねぇよ!?そもそもなんでゴ◯タ!?いっそのことリ◯ルかベ◯◯ルのコスプレにしろよ!」
「転◯◯で好きなの……ゴ◯タなんだ///」
「なんで顔を赤く染めてんだ!うざいんだよ!」
「そうだぞ。この中で1番変装がうまいのはやっぱり俺だな。この格好なら◯◯◯葉も騙すことができる」
「うぜぇよ!しかもなんで今さら瀧くんなんだよ!何年前の流行りをまた掘り返してんだ!?」
「バカヤロウ!今もあの映画は愛されてんだ!」
「バカはお前だよ!一回彗星に頭打たれてこい!お前ら2人だけおかしいんだよ!漫画ならモザイクだぞ!」
冷多は話を逸らして聞く。
「麻薬は見つかったか?」
「いや。そもそも本当に蜂山組が麻薬を取り扱っているのか?屋敷内でそういった物は見つからなかったけど」
「隠してるに決まってるだろ?そのソフィアを部屋から引きずり出して信頼を得よう。もしかしたら辿り着けるかもしれん」
「ソフィアは少し難しいから繊細にすぐに死にたがるし」
「わかった。行くぞ。引きこもりを引き摺り出してやる」
「人の話聞けよ!」
全員でソフィアの部屋へ向かい霧川の通訳を使い1人ずつ説得する。
「とりあえず誰か説得する?」
霧川がそう言うと冷多は言う。
「ゴブリン行け」
「名前違うし!ていうかなんで?」
「お前が1番状況に適しているからだ」
「緑色のゴブリンが?まぁいいけどさ」
衛宮の話すことを霧川がロシア語で同時通訳をする。
「オッス!オラ!ゴ◯タ!日本のアニメがでぇすけだ!同じアニメ好き同士仲良くしようぜ!」
恋宮は考える。
外国人=アニメ好きは違うと思うけど……しかもその口調と見た目一切関係ないし。
紙がドアの隙間から出てきた。アニメ好きじゃないとのことだ。
「あれれ〜おかしぃぞぉ」
とアニメキャラの真似をすると冷多は言う。
「お前の頭がおかしい。じゃあ……お前名前なんだっけ?」
「◯◯瀧だ」
「神◯◯◯◯。行け」
「中の人だよそれは……」
鉄熱はドアの前で言う。
「アニメが嫌いなのはわかる……でもアニメ映画は違う。そうだろ?アニメが嫌いなら日本映画の話をしようか……お前は知っているか……君◯◯◯。の実写映画化されるって言われてから何年も経って先にONE ◯◯◯◯◯が実写化されることに」
「待て何の話だ?」
霧川がツッコむと紙が出てきた。
私の名前はソフィア。ワンピースなら何着か持ってる。
「ダメだ。話が噛み合わない」
「お前らアニメから離れろ!!」
「仕方ないな。俺がやるよ」
白が挑戦する。
「你好!中国生まれだよ!どうかな?同じ日本国外の人間同士話をしないか?俺はな……お前と同じだ。両親が亡くなって児童施設行きになったけど……俺の才能を認めてくれた友ができた。ショットガンで指導する友が」
どんな友達…っと思う恋宮。すると冷多は腕を組んで聞いていた。
「俺は友に救われ、外へ出してくれた。無理にとは言わない。お前も外に出て人と触れ合ってみろよ。きっとお前を外へ出してくれる人が出てきてくれるはず」
ドアの隙間から紙が出てきた。全員これなら心を開いてくれると思い紙に書かれていることを霧川は読み上げた。
「その人が好きなんですね……へぇーそうなんだ」
「輝さん。ショットガン持ってきてますよね?中にいるロシア人殺して来ます」
「中国とロシアは友好な関係なんだろ?まぁこれ以上は時間の無駄だから俺がやる。勝利、通訳だ」
冷多はドアノブに手をかけて言う。
「おい。小娘……俺の右腕は5ヶ月前にある人を守ってな……義腕なんだ。最先端の義腕でな。前の腕よりも力強い。このドアを壊して中へ入ることなど造作もない」
「いやいや!待て待て!脅してどうすんだよ!?」
しかし霧川の言葉を無視してドアをこじ開けた。
「隠れても無駄だ。今すぐ出てこい。でないとお前の部屋が火の海へと化すぞ?」
「やめろって!」
と霧川は冷多が部屋の中へ入ろうとするのを止めた。
「なんだ?これが手っ取り早い」
「相手は母親を亡くしたばっかりだぞ!?それなのに無理矢理外へ出すつもりか!?」
すると1階からヤクザが多く現れた。
「会長!どうされましたか!?」
「お前ら!アイツをなんとかしろ!」
ヤクザ達は冷多に襲いかかるも冷多は所持していた警棒で全員軽々と薙ぎ倒した。
「警棒!?貴様警察か!?」
「警察よりもヤバいチームだ。まぁいい。白、衛宮、鉄熱。屋敷を調べろ。麻薬を見つけだせ」
「ああ。みんな行こう」
政宗と透が止めようとするがそのまま屋敷内を彷徨き始める。すると冷多は霧川に退くように指示する。
「ソフィア・レイジドレアは不法入国の疑いがある。そこのじいさんが何かしらの方法でこの国へ招き入れたに違いない」
「失礼な!ちゃんと正規な方法で入国させたわい!」
「ならなぜソフィア・レイジドレアの親権をなぜ貴様が持っていない?蜂山組は何かしら嘘をつく。貴様らは人身売買の疑いもあるのだぞ?」
「待て!何の話じゃ!麻薬といい不法入国といい!」
「とにかくソフィア・レイジドレアを確保してロシアへ強制送還させる」
しかし霧川が冷多の前から退こうとせずに言う。
「ソフィアの意志はどうする?もう家族が日本にしかいないんだぞ?」
「ジジイの種でできたガキの意志など知らん。俺は任務を優先する。前にも言ったが邪魔はするな。お前もそれを承諾しただろ?できればお前を病院送りにしたくない。あの家庭の中でまともなのはお前と親父くらいだからな。それだけは避けたい」
そう言ってソフィアの部屋に入ると霧川は言う。
「わかりました。つまり私と喧嘩して勝てる気がしないってことですよね?小学生の頃も腕相撲、指相撲、手押し相撲で冷多兄はボロ負けしてましたもんね。いい大人が子どもに負けるのが怖いなら仕方ないですね!」
「…………そういえば、俺まだお前と喧嘩したことなかったなぁ……お前は本当に負けたことがないのか?」
両手の指を鳴らして怖い笑顔で言う。
「今日はお前の記念日だな……初めて負けた日」
2人は喧嘩をする体勢を整える。