第1話 漫画家の相談
路上にて喧嘩をしていた。
「痛っつ……テメェ……何しゃがんだ!ああ!?」
灰色のパーカーを着た女顔の少年が二人の学生に言う。
「こんな人通りの少ない所で年寄り相手に土下座させようとしたテメェら見てんとムカついてな。制服から見て……へぇー。名門高じゃん。何?受験のストレスを老人で発散してんの?」
「この野郎……」
「覚えてろよ!次は兄貴連れて来てやるからな!俺の兄貴は暴走族の総長だぞ!!」
「そう。なら俺の親父はヤクザだよ」
「信じてねぇな!!兄貴連れて探しだしてやるから覚悟しろよ!!」
二人組の学生はそのまま走り去り、少年は笑顔で年寄りに手を差し伸ばして立たせてあげると安否の確認をする。
「じいさん大丈夫?」
「ああ。ありがとう若いの……そっちは大丈夫かい?怪我はしとらんか?」
「アイツら案外弱かったから平気平気。でも夜に歩き回るのはやめようかな……品川区の暴走族と言ったら赫鷹団だからなぁ……意外とめんどくさいんだよアイツらは……って話してる場合じゃなかった。じゃあ俺試合があるから!!」
「ああ!まちんさい!お名前は!?」
「霧川!礼はいりませんよ!!」
そう言って走り去り向かった場所はパチンコ店であったが閉まっていた。
「クソォ……遅すぎた」やっぱりあの時じいさん無視しとけばよかった……いやでも見過ごすのもなんだかなぁ……仕方ない。帰るか……明日から高校生だし。はぁ……パチンコやってみたかったのになぁ。
翌朝 入学式を終えて、俺は1年2組の教室へ入り、指定された席へ着いた。待っていると見慣れた男3人組が近づてきた。
「山田、戸田、野田、どうした?」
「聞いたぞ?お前この前、松寺にフラれたそうだな」
「うっ……誰から?聞いた……」
「俺は彼女から彼女から松寺。アイツもう既に学校中に広めたそうだぞ?」
周りが小さく霧川に対して笑い。霧川はため息を吐いて考え込む。
しまったぁぁ…………そういやアイツ昔から口が驚くほどに軽かった……今思えばなんでアイツに告白したんだろうな……そうだった。約束したんだった。
「幼馴染みにフラれて可哀想に……」
「慰めてやろうか?ゲーマー」
「俺が引きずってるように見えるか?」たくそういやコイツらなんでこの学校に入れたんだ?才能でもあんのか?
この学校の名前は国立天神学園 全国の才能溢れる中学生をかき集めた高校だ。今年の入学者は38人と少ないが一人一人に才能があり、将来的に日本経済に利益を齎す者だけが入学できる。因みに俺の才能はゲーマーだ。ゲーマーと言ってもテレビゲームが得意ってわけじゃないけど。
「はは!まぁコイツに彼女ができたら俺はハーレムを築け……」
「ん?どうした?」
3人は頬を赤く染めてバカみたいに霧川の背後を見ていた。気になり振り返るとそこには高校生とは思えないほどの綺麗な女子生徒が小説を読んで霧川の後ろの席にいた。
ほお……そりゃ見惚れるわけだ。どこかで見たことあるような気もするが……まぁ、どうでもいいわ
担任の葛原良という男の先生が入ってきて言う。
「はい。皆さんお静かに。改めまして、私の名前は葛原良です。私もこの学校の卒業生で元々は学者の才能があったんだが教師になりたかったので大学へ進学しました」
「葛原ってあの?」
「物理学、数学とかいろいろ賞を取ったっていう?」
「そんな人が先生!?」
霧川は眼を細めると葛原は一人ずつ自己紹介するようにと言い一人ずつ名前と才能、経歴を言うと霧川の出番がやってきた。
「霧川勝利と申します。才能はゲーマーなのでよろしく」
と笑顔で言うがゲーマーであることをバカにするかのように話、それを無視して自分の経歴を言おうとすると野田に「もういいだろ」と言われ、ため息を吐いて座った。後ろの女子生徒はゆっくりと立ち上がり言う。
「初めまして恋宮梨絵です。才能は漫画家で週刊少女漫画 湯煙はいつも見たい物を遮るを描いておりました」
その作品のタイトルを聞き周りは言う。
「ユケミタの作者!?」
「恋宮梨絵って確かにあの漫画の作者!?」
「スゲェ本物だ!!」
周りが驚いて言うが霧川だけが「俺それ知らない」と苦笑いで思い窓の外を見ていた。その後授業が終わり家へ帰ろうとするとあることを思い出していた。
そうだった……成果報告しないといけないんだった……。随時成果報告しないといけないのがスゲェめんどくせぇ。担任の葛原はどこにいるんだっけなぁ。確か生活指導室の先生でもあるんだよな。
そう考え生活指導室へと足を運ぼうとすると元気のない様子の恋宮と葛原が指導室から出てきた。
「今回は多めに見てあげよう。ただし明日も来なさい」
「……わかりました」
恋宮はそのまま指導室を後にし、霧川はそのまま葛原に報告書を渡した。
「はい。じゃあもう帰れ」
「報告書の確認は?」
「あとでするから帰れ」
「……」ついさっきまで敬語で話してたくせに……相手の才能で格差をつけやがって……まぁいいや。帰ろうっと。
翌日の放課後の帰りに指導室から出る恋宮を見かけるも興味がなく。そのまま帰る。そしてまた次の日もその次の日も恋宮が指導室から何度も出てくるのを見かけ、日に日に彼女の顔が疲れきっていた。さすがに気になり、指導室へ覗き見ることにした。
さて……何をしたらあんなにやつれた顔になるんだ?
指導室を覗くと葛原と恋宮は二人きりで葛原は恋宮に肩に触れたあとに顔を触って笑顔を見せた。そして振り向かせたあとに太もも触り始めさすがにマズイと思い指導室へノックなしで入った霧川。すると葛原は焦ったのかすぐに恋宮から離れた。
「……」
「な!なんだ……何しに来たんだ?」
「……恋宮に要がありまして。いやぁ…今度の漫画のモデルを俺にしてくれるって言うんで……」
「モデル?」
葛原は恋宮を見ると恋宮は頷いてそのまま霧川の元へと行くとそのまま手を掴んで指導室から出ようとするが葛原に止められる。
「恋宮さんは今指導中なんだぞ?」
「指導?だから何?俺には関係ない」
「あ!?お前俺にそんな舐めた口を聞いて!」
「俺に命令できるのは!!……この世で3人だけ。少なくともその3人にアンタが入っていることはまずない」
そう言い残して指導室を後にした。学校から出て恋宮に話しかける。
「俺がお前なら一目散に逃げるけどなぁ?」
「……うっ……ぅぅ」
恋宮は泣き出し蹲ると周りは霧川が泣かしたかの様に見えて霧川は焦って「お、落ち着ける場所に行こうか!」と言って向かったのは喫茶店であった。
「才能剥奪の延長条件?」
「はい……それで成果が出ない状況でして……」
「湯煙は何ちゃらだっけ?アレはどうした?」
「アレは連載終了しまして……新しい漫画を持ちかけたのですが……ボツになりまして……」
「どこの出版社だ?」
「湯煙ですよ?結婚社の週刊少女 リコンの作品です」
社名と雑誌名が矛盾してる。「湯煙ってどんな作品?」
「知りたいですか!?ならお教え致します!」
いきなり元気だな……。
数時間後
「湯煙は最後の最後まで梨花の見たい物男子を遮ってしまうのですが!梨花はこれから中身を見て男子と恋をするのです!」
「そ、それが最終回ね」結局結ばれないんだ。打ち切りだな。もう夜だ……。仕方ない家の近くまで送るか。
そしてその帰路で話は続いた。
「それで今は何を描いてあるんだ?」
「今は世界一のイケメンと世界一のブスを描いております」
「ふーん」
「話の内容は……」
主人公の女子高生は学校一のブスとして有名で、そしてその恋相手は学校一のイケメンとして有名で二人は廊下の曲がりでぶつかり女子高生は恋するけどイケメンは蔑んだ目をしてそのまま無視して立ち去る。しかし初恋相手であるイケメンを振り向かせようと奮闘する。ラブコメ作品漫画。
「どうかな!?」
「うーん……インパクトが足りなくね?」
「インパクト?ラブコメにインパクトなんて必要ですか?」
「湯煙は話の内容から十分インパクトがある。イケメン好きの主人公の梨花は突然男全員の顔に湯煙がかかってしまい。恋ができなくなってしまっただろ?その時点でインパクトがあるだろ?」
「あっ確かに……でも私の今の作品も十分に」
「いや足りなさ過ぎる。ぶつかって軽蔑なんて普通の反応だろ?」
「それは違う!運命を感じるはず!」
「じゃあ恋宮さんとブサイクな男と角でぶつかったとしよう。どう思う?」
「心配して大丈夫か聞きます」
「真面目に返答するな(バカめ)そうじゃなくてその人を見て好きって思うか?」
「ごめんなさい……私人を見かけで判断しないので……」
めんどくせぇ女だな!?「……じゃあクラスメイトで内川ってヤツいるだろ?才能がブリーダーだけど怠け者みたいな顔をしたヤツが」
「論外ですね」
「テメー今人を見かけで判断しないって言ったよな!?」
「いや!顔つきはせめてちゃんとしない……」
「内川に整形しろって言ってんのか?話を戻すぞ」
「話?……あっ!確かに角でぶつかってもなんとも思わないって可能性があるよね?」
「いや、何かしらの反応はするだろ?さっき心配するって言っただろ?男ならまず手を差し伸べるはず」
「そこを改善すればいいんですね。ではどんな風にインパクトのある角でぶつければ?」
「うーん……こんなのはどうだ?」
霧川の考え
「早くしないと次の授業に遅れちゃう!」
主人公のブスが曲がり角を曲がると人とぶつかり尻もちをつく。
「痛た。すみま……せん」
学校一のイケメンと目が合い思う。
学校一のイケメン。池面くんだ。本当にスゴいイケ……。
「ぶえぇぇぇぇ!!」
イケメンはブスの足元へ向かって吐き戻した。
「ゴホッ!ゴホッ!ぶえぇ!ごめん……ウッ大丈……ぶえぇ!!顔キモすぎ!!」
霧川は考えを伝える。
「どうだ?」
「ダメに決まってるでしょ!?第1話でモザイクだらけになります!!」
「何言ってんだよ。ギャグ漫画なんてピーやモザイクだらけだろ」
「みんなちゃんと自重してます!!というか吐くほどのブスってどんな顔ですか!?」
「そういや設定も変えないとな」
「設定から変えるの!?」
「うーん……こういうのはどうだ?不酢家は代々ブス専でブスであればあるほど魅力的に思ってしまう。ブスとブスが交わり続けて誕生したのがブスミだ」
「いやいや話を変えないでください!設定は変えませんよ!?」
「そもそもあらすじから古い」
「あらすじ?」
「単行本とかに話の内容を簡潔にネタバレしない程度に書いてあるだろ?その時点で面白いか新規読者は判断する」
「な、なるほど……あらすじはさっきも言ったけど学校一のブスとイケメンが」
「スケールが小さい。ブスだけ世界一ブスな女子高生にしろ」
「世界規模!?」
「クラスメイトに勝手に顔をSNSに投稿されて世界に衝撃を走らせたところから始まって、キネスに認定されるほどのブスという設定に」
「誹謗中傷の騒ぎじゃないじゃん!!そもそもキネスに認定ってどんな顔なの!?」
「さぁ。象の肛門みたいな顔でいいんじゃね?」
「だからどんな顔!?つーか連載されたとしても私絶対に辛口評価の餌食だよね!?」
「北極から南国へ行けるぞ?」
「南国じゃなくて南極行きよ!あっ……」
「どうした?」
「ツッコんでいたら家通り過ぎたぁぁぁ!!」
「あ〜あ。ドンマイ」
「いやアンタのせいだから!」
結局戻り家に着くとそこは定食屋だった。
「こんな住宅街に定食屋?」
「ここに来る人はみんな常連さんばかりだけどね。私もたまに手伝っているのです」
「恋宮って」
「?」
「……敬語使ったりタメ口だったりわからないヤツだな」
「だからアンタのせいでしょ!?」
すると店から若い男が出てきた。
「おお。梨絵、お前今日は遅かっ……なんでお前そんな疲れた顔してんだ?」
「この人のせいです……」
若い男は霧川を見て察し笑顔で店の中に入り言う。
「親父!赤飯炊いてやってくれ!梨絵が乙女から女へとなり変わったぞ!」
察し過ぎだし、違ぇし。
と霧川は頭の中でツッコむと中から包丁を持った店主が霧川の胸ぐらを掴んで鬼のような形相で言う。
「テメェコラァ!俺の梨絵に何してくれてんだぁ!?」
「ちょっ!お父さんやめて!」
「違うんですよ。俺はただ」
「言い訳なら三途の川で言ってろ!!」
包丁を振り翳すと霧川は包丁を持った手を平手で叩き包丁を落とさせた。恋宮の父は何が起きたか考える。
な、何しやがった?右手が……震えている?死んだ親父から定食屋を引き継いだ俺ならわかる!コイツは殺し屋だ!?
「恋宮の父親って異常者?いきなりナイフを振り下ろすなんて」
「すみません……ちょっとアレな人で」
定食屋に入りトンカツ定食を食べる霧川は2階への階段で覗き見ている小学生くらいの恋宮の妹二人と弟二人を見て言う。
「恋宮ん家って大家族だな。母親は?」
「お母さんはいないわ。ここにいる家族だけ」
「そう……か。大変だな」
「……霧川くんの家は?」
「両親とクソジジイ。兄が二人、姉が二人、妹が一人」
「霧川くんも大家族だね。どんな人達なの?」
「母親は目立ちたがり、父親は厳し過ぎる。長男はクズで次男は冷酷卑劣、長女はショタコンで次女はギャンブル依存症。妹はいつも怒ってばかり、クソジジイはエロジジイ」
「何その家族。まともな人いないじゃん」
「強いて言うなら親父と次男の冷多兄ぐらいだな」
恋宮の兄 継男は考える。
霧川……どっかで聞いた名前だが……確か下の名前は勝利……どこだ?どこで聞いた?
その後2階でトランプをしていた。
「上がり」
「嘘だろ!?」
「また!?」
「勝利兄ちゃん強すぎ!」
「運も実力のウチだ。将棋と同じだ」
「おっ!将棋できんのか?じゃあ俺とやろうぜ!」
恋宮の兄 継男と将棋をして見事に勝った。
「強え!お前やるなぁ!」
「継男さんもなかなか手強かったです」
「なかなかか!ソイツはぁ嬉しいね!もう一戦しない?」
「すみません。このあとは恋宮さんと漫画の制作に取り掛かる約束をしておりますので」
「ありがとうな。梨絵の手伝いしてくれて……漫画家になるのがアイツの夢だが……打ち切りにあっていろいろあってもアイツは夢をどうしても叶えたいらしいからな。無理だろうけど」
「……無理とわかる時は……本人が諦めた時だけですよ」
梨絵の部屋へ行き漫画の制作を手伝う。
「どう思います?」
「4ページのこのコマの絵。なんとかならないか?ブスの顔をもう少し濃くするとか?」
「うーん……やっぱりそこかぁ。ハードボイルド風の顔は?」
「いいじゃん。13のおっさん並のハードボイルドにしようぜ。あと隙間時間で象の肛門を画像検索したからこれを見て顔を描こう」
「顔が象の肛門みたいな顔……イメージが湧かない」
二人は楽しく漫画の制作をし、数時間後に就寝した。朝の5時に恋宮の父親の蓮司に叩き起こされて下の階へ下ろされた。
「どうされましたか?こんな朝早くに……」
「お前はこういう言葉を知っているか?男子厨房に入れと、料理と家庭と仕事の両立は男として当たり前だ」
「それを言うなら男子厨房に入らず、しかもあなたの場合は家庭と仕事でしょ?料理人なんですから」
「文句言わずに作れ、冷蔵庫のもんは好きに使え」
なんだよ。姑に無理やり花嫁修行させられてる気分だ。
そう考えるも霧川は黙って料理をしていた。
「和食でいいですよね?鮭も使わせていただきます」
「うむ」
すると霧川のスマホから着信が流れ、見るとすぐにマナーモードにしてポケットにしまった。蓮司は霧川に聞く。
「そういや、お前昨日泊まり込んでいたが……家のことは大丈夫なのか?」
「母は海外で仕事。親父は……たぶんキレてるでしょうね。由姉は俺が学校に行っていれば何も言いません」昨日電話したし。
料理を終えて蓮司は子どもを全員起こして朝食を食べると全員感激していた。
「うま!?」
「美味しい……」
「勝利兄ちゃん!ご飯美味しいよ!」
「ありがとう」
霧川が少し笑みを浮かべると恋宮は食べる速度を落とした。それを見た継男はニヤつくと蓮司は悔しそうに言う。
「う、美味い……クソ!」
美味しいのになんでクソなんだよ。
「……テメェに……親父の定食屋は継がせねえぞ」
「継ぎません。恋宮さん。ここからだと予鈴ギリギリだぞ」
「え?……ああ!そうだった!」
急いで支度をして二人は学校へ行く。蓮司は手を叩いて言う。
「お前らも時間だろ?とっとと食って学校行け」
「「「「はーい!」」」」
「あっ。思い出した」
「あ?何をだ?」
「霧川勝利だよ。確かアイツは…」
その頃 天神学園で校門へ行くと葛原が霧川と恋宮を睨みつけると恋宮は霧川の背後へ隠れるが霧川は目を細めたあとで笑みを浮かべ、そのまま学校へと二人は入って行く。すれ違いざまに葛原は言う。
「昨日の件を5月の会議で話してやる。そしたらお前ら二人は退学だな」
「偶然ですね。俺も昨日のことを姉ちゃんに話したところだ」
すると葛原は高笑いをして言う。
「姉に泣きつくなんて情けないな!」
「言ってろ……今から泣きつくのはアンタなんだからな」
「あ?」
そのまま教室へと向かう二人。放課後となり帰る支度をすると葛原が話しかけて来た。
「呑気な物だな。不安だって思わないのか?」
「なんでそんなことを思わないといけないんですか?そんなあとのことより今を考えないと。でないとあとあと面倒ごとになりますし」
「ふん。さっきから何を言って」
「理解できませんか?その様子だと俺のことも知らないようですし」
「たかがゲーマーのお前になんで調べないといけないんだ?」
「学者なら見聞は深めるのが当然のはず……ああわかった。学会から脱退して教師に転職したのは楽な道へ歩きたかったんだな?いやぁ学者様々ですね。あはははは!」
「楽な道……だと」
「はい。学者は教師とは違って頭を使いまくりますからね。教師ならある程度の知識しか教えませんし、何より自分好みの女生徒とお話ができるしなぁ。ロリコンとってはまたとないチャンスだ」
すると葛原は霧川の胸ぐらを掴み言う。
「言わせておけば!」
「知能は猿以下……15歳の俺に対してこんな浅い煽りに引っかかるなんて」
葛原はその言葉に対して周りを見ると他の生徒に見られていた。
図ったのか!?コイツ!ガキのくせに!つーかなんだ?コイツの勝ち誇った面は!?ムカつく!!「お前今から生活指導に!!」
ピンポンパンポーーン
すると放送がなり響き女性の声で言う。
《教員と生徒の呼び出しを致します。葛原先生、1年2組 霧川勝利くん。1年2組 恋宮梨絵さん。至急学園長室へお越しください》
「学園長?」
「やっとかよ……行くぞ恋宮さん」
「は、はい」
学園長室へ行くと窓から外の様子を見ているスーツ姿の女性が立っていた。彼女の名前は青空蒼。その近くには学園長の秘書、校長先生と教頭先生も隅っこにいた。すると葛原は言う
「学園長。何か彼らが問題を起こしたのですか?私を呼び出すということは」
「いや……その子たちに問題はない。問題なのはお前だ。葛原」
「え?」
「霧川勝利からお前のことは聞いた。そこの恋宮に対してわいせつ行為をしたそうだな?」
葛原は冷や汗をかいて霧川を見ると霧川は笑みを浮かべる。すると葛原は青空に対して言う。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!霧川の話を信じるのですか!?私の評判はご存知でしょ!?私はさまざまな賞を数多くとっているのですよ!?そんな私が恋宮に対してそんな淫らな」
「嘘はお辞めください。学園長の前で」
すると話し始めたのは秘書の男であった。
「私の才能はご存知でしょう?才能 メンタリストそしてカウンセラー。学園でも少ない。才能を二つ備えた私の前で嘘など」
葛原は唾を飲み込むとまだ反論する。
「で、では霧川は嘘をついていないと言うのですか!?たかがゲーマーですよ!?ゲームばっかりやってるヤツの言うことなんて!」
「ゲーム?……お前霧川の経歴を見てもいないな?お前は賞を取っていると言ったがお前よりも霧川の方が実績は上だ」
「は、はい?」
青空は机から資料を出し秘書に渡したあとその資料を葛原へ渡した。それを読み上げる葛原。
霧川勝利(15)1年2組 才能 ゲーマー
経歴
eスポーツ全国大会 2年連続1位
eスポーツ世界大会 5年連続1位
テニス世界ジュニア大会 1位
将棋全国大会 1位
ゴルフジュニア全国大会 1位
料理ジュニア全国大会 1位
美術大会 2年連続1位
歌うま選手権 1位
大食い大会 1位
ボクシングジュニア大会 1位
空手ジュニア大会 ベスト1
全国模試試験 全国1位
その場にいた全員が驚いていた。
「こ、これは……」
青空は眉間を寄せて言う。
「まだ先があるだろ?14歳で日本のベンチャー企業 天之川へ特例でインターンシップという形で参加させた結果。1ヶ月で成果を上げた。ある発明品の開発、プレゼンによって世界の常識を変え、たった1ヶ月でベンチャー企業から大手大企業の仲間入り、今じゃドミノ自動車やグレープなどの大手企業と肩を並べ三大企業の一つになっている」
青空は霧川の両肩に手を置いて言う。
「今じゃ世界中の人々が彼をスカウトしたがっている。その数100億社以上。日本経済の利益は1097億円にも上る。日本政府ですら一眼置く存在へとなっている。そんな彼が通っているだけでこの学校には利しか齎さない。お前なんかより価値ある人間なのだ」
「じゃ、じゃあなんで才能がゲーマーなんですか?」
「話を聞いていたか?テレビゲームはもちろん。試合もテストも今を生きている人生も……彼にとってはただのゲームでしかない。そしてどんなゲームにも絶対に勝つ。お前は彼を前にした時点でこのゲームに負けた」
「げ、ゲーム?」
「お前はコイツに喧嘩を売った時点で負けたんだよ。コイツの土俵に入った時点で」
すると霧川はあくびをして言う。
「あのぉ……もう帰っていい?話長くなりそうだし」
「相変わらずお前は人が話している時に……恋宮さん」
青空は恋宮の前に立ち深々と頭を下げて言う。
「この度はあなたに不快な想いをさせてしまったことを謝罪します。すまなかった」
「い、いえ!学園長が頭を下げるなんて!」
「この学校の者が支障を犯せば私の管理不足。厳粛な処罰を葛原に下そう」
「さすが才能 リーダーの持ち主ですね。蒼姉」
「学校では学園長と呼べと何度言えばわかる?」
「お姉さん!?」
「結婚して家名は変わったが私も霧川家長女の身でこの学校の元生徒会長だ」
青空蒼(23)才能 リーダー
経歴
クラス委員長
生徒会長
テニス部部長
ボランティア団体 会長
学園長
霧川は身体を伸ばして言う。
「じゃあ親父がたぶん家で首を長くしてると思うから俺帰るわ」
「そういえば昨日家に帰ってないって妹から電話が来たぞ。お前どこに行って」
「恋宮家で寝泊まりだ」
「何?」
「あー!!違います!いろいろあって!!」
「漫画の制作したから帰る。またね語義兄さん」家に帰ったら親父になんて言おう。
秘書の男に言うと秘書は笑顔で手を振った。
「気をつけて帰るんだよ」
霧川は学園長室から退出すると青空は葛原に言う。
「お前は今日限りでクビだ。ついでに警察に引き渡す。教員免許も剥奪だな」
「いや……証拠が」
「そういえば言ってなかったな。お前の嘘を見破った。秘書の青空語はたまに警察の捜査に協力しているのだよ。だから信用度で言うなら冷多と同じくらいある。旦那が頼もしいと妻の私は安心できる」
「あ……ああ……」
葛原は膝を着いて泣き始めるとその光景を見た恋宮は考える。
スゴい……霧川くんの家庭って凄すぎる。
1週間後
「霧川くん!霧川くん!私の漫画がゼウスで連載されたよ!」
「今度は月刊じゃん。少し余裕ができたからよかったな」
「霧川くんのアドバイスのおかげで好印象だったみたい!だから……またいつか相談に乗ってくれる?」
「いつでも」