泥団子というロマン
みなさまもぜひ!
こんにちは。聖属性エッセイスト、ひだまりのねこですよ。
先日、姪っ子へのプレゼントを探しにダンジョン(ドンキ)に潜ったのですが、最下層でとんでもないものを発見してしまいました。
『泥団子作成キット』
即決です。可愛いものがいいかな~なんて思っていましたけれど、もう私の目にはそれしか映っていませんでした。
***
私は、子どものころから身体が弱かったので、外で遊ぶのが苦手。走り回ったりする遊びは楽しい前に苦痛でしたから。
だから私が参加するのは、虫取りの時だけ。生き物限定参加。
そんな私にある日転機が訪れました。
ある時、砂場でお団子を作っていたのですが、すぐに崩れてしまってつまらない。
そこで、もっと丈夫で綺麗な団子が作りたくなって、公園のあちこちで違う土を試していたら、偶然粘土質の土だったのでしょう。
素晴らしく丈夫で、美しい団子が出来たのです。そうなると今度は、色が気に入らない。
幸いその公園には、綺麗なさらさらの白い粉土が豊富にありましたから、それを粉砂糖のようにかけて出来上がりです。美しく美味しそうなお団子に私、ご機嫌です。
ですが、周りのクソガキどもは、この美しさには興味がないようで、
「おい、どっちが強いか勝負しようぜ!!」
くっ、この野蛮人め。団子に強いも弱いもない。みんな違ってみんな良いんだよ!
ですが、私も自身の生み出した泥団子のポテンシャルが知りたくなってしまった。
「よろしい、ならば決闘だ!!」
そんな言い方はしなかったと思いますが、とにかく泥団子対決が始まったのです。
勝負の方法は簡単。
先攻後攻を決めて、地面に置かれた団子に上から団子を落とすだけ。どちらかが割れたら決着です。
まわりの単細胞どもは、大きければ強いと思ったのか、私の団子よりも大きいものばかり。
ふふふ、それでは私には勝てんよ?
結果、私の泥団子は連勝街道を突き進む。まさに無双状態。
そして、熱気は伝染するもの。いつの間にか泥団子勝負が流行りになって、公園では連日、泥団子フェスが開催されることに。
みんなが私の団子の強さの秘密を知りたがったが、教えてあげても誰一人同じようには作れなかった。土の配合、水分量の研究、そしてなにより、私は一つの泥団子を作るのに情熱を注いでいたのだ。即席の量産型雑魚に負ける道理などないのです。
どうしても勝てないことに怒った男の子に、団子を踏みつけられて泣いたこともあります。悔しかったのもありますが、その子の踏みつけを、何度も何度も耐えてみせた泥団子の死に様が、とても美しく悲しかったのです。
いつしか、流行も過ぎ去って、いつの間にか忘れてしまっていた懐かしい記憶。
***
喜んでくれるかな。私の足取りも軽い。自然と笑みが零れる。
私「はい、これ誕生日プレゼント!」
姉夫婦「……あ、ありがとう」
む、反応がいまいちだな。しかし、やはり子どもは泥団子大好きなはず。
姪っ子「うわあ……これ食べられるの? ねえ美味しい?」
キラキラした目で泥団子キットを食べる気満々の姪っ子。
くっ、しまった。やはり食育玩具にすべきだったか……。ごめんよ。それは食べられないんだ。
微妙な雰囲気に耐え切れず、私は早々に退散した。
そして私は、その夜、通販サイトで荒木田土なるものを発注した。
なんでも最高の泥団子が作れるらしいのだ。
作成キット? 舐めるな。そんなもの私には必要ない。
か、勘違いするなよ? 大の大人が公園で泥を集めていたら通報案件だ。そ、それに菜園用にも使えるらしいし、泥団子はあくまでついでだ、ついで。
PCが瀕死だというのに、土を発注する私は間違っているのだろうか?
いや、間違ってなどいない。だってこんなに胸がワクワクしているのだからね。