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コピー&ペースト

作者: 月島 真昼


 自転車でいけるだけいってみて気が付いたのだけど、どこまでいっても大通りの街並みは変わらない。中華料理屋があってガソリンスタンドがあってコンビニがあって本屋さんがあってファミリーレストランがあって車屋さんがあって電気屋さん(家電量販店の通称だ)があって焼き肉屋さんがあって、そしてまた中華料理屋さんがある。以下延々と同じような店の並びが繰り返す。私は幼い足で必死に自転車を漕いでなのか別のものを探し求めて走り続けたのだけれど、どこまでいっても中華料理屋さんがあってガソリンスタンドがあって(中略)が続いているだけだった。

 走り続ければ海とか山にぶちあたるんだと思っていた私はムキになって自転車を漕ぎ続けた。あたりが暗くなってきた。暗くなった。来た道を引き返せば帰れるはずだけれど月と街の灯りは私にとってあまりにも頼りなかった。振り返っても前と後ろで同じような道が続いていて私は気持ち悪くなった。

この街はコピー&ペーストされている。

最初は綿密に考えて作られた街だったのだけれど途中で作成が面倒になって同じ店をコピーして貼り付けたのだ。だからどこまでいっても街並みが変わらないのだ。

もしかしたらコピーされた私の家が近くにあるのではないかと思ったがあまりにも長い距離を漕ぎ続けた私の足はあんまりにも疲れていて、来た道を引き返す気にも進む気にもなれなかった。スマホの電池はとっくに切れていて、父母を呼んで助けを求めることもできなかった。そのうち私はぐずぐずと泣き出した。親切なおじさんが「どうしたんだい?」と声をかけてくれた。事情を話すと「そうかい、それは大変だったね。おうちの電話番号はわかるかな」と言ったけれど、番号はスマホの中に入っていてわからなかった。おじさんはちょっと困った顔をして110番して警察の人に電話口で「子供が泣いている。帰れないらしい」と説明して、警察がやってくるまで傍にいてくれた。

私は気づいた。おじさんは小学校の先生と同じ顔をしている。具体的な顔つきではなくて表情が同じだ。“親切にしなくてはいけない場面だから親切にしておこう”という風に見える、威圧感を与えないための愛想笑い。

やってきた警察官のおにいさんも同じ顔をしていた。私は事情を話すとパトカーに乗って交番に連れていってくれた。手続きがあり、住所から連絡先が調べられて父母に連絡がいき、母が迎えにきてくれることになったという。

「もう大丈夫だからね」

 警察官のお兄さんがやはり愛想笑いで言う。

 私は警戒心を強めた。

 もしかしたらこのコピーされた街にいる人間はコピーされた人たちなのではないだろうか? 想像が過る。コピーされた人間はオリジナルの私を捕まえて自分たちと同じようなコピーを作ろうとしているのではなかろうか。とにかく、待っていれば母が来る。

 しばらくして母がやってきた。「まったくもうこの子は」とか「すみません、大変ご迷惑をおかけしました」だのと言い、私の手を取ろうとする。私は気づく。この人は母じゃない。外見が母と同じだけだ。だって表情が先生やおじさんやお兄さんと寸分たがわず同じなのだ。母の顔はこんなじゃない。手を振り払う。交番を飛び出す。

「どうしたのよ?」

 母が追ってくる。警察官のお兄さんも追ってくる。私は逃げるが、子供で自転車を漕ぎ続けた疲れた足が縺れて転んでしまう。母が私を捕まえる。

「どうして気づくかなぁ」

 母の表情が消えた。

 警察官のお兄さんの表情が消えた。

 街の明かりが一斉に消え、そして最後にオリジナルの私が消えた。

 翌朝。

「おはよう」と微笑んだ母が言い、「おはよう」と母とよく似た微笑みで私が言った。


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 素直にゾッとさせられました。 [一言] ラストまで綺麗にまとまっていて、しかもちゃんと怖かったです。 面白いお話を読ませていただき、ありがとうございます。
[一言] コピーされてしまった……。
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